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しほちゃんは、ういている#雨、逃げ出した後
きょうは朝から冬の雨が陰鬱に降っていて、何処にも行きたくない。
しかし、年末のテレビは、毎日何かしらお祭りのように特番がやっている。そのため、家から出なくても退屈しないで過ごせる。
しほちゃんはテレビを見るのがすきだ。
彼女の部屋はとても垢抜けていて、テレビを見るための最適な環境がつくられていた。白い壁紙の部屋には、シンプルな布張りのソファーが置かれていた。
しほちゃんは、一旦ソファ
しほちゃんは、ういている#人の造りしもの
駅前に大きなクリスマスツリーが飾られている。居酒屋の呼び込みの店員さんは、真っ赤なサンタ帽をかぶって寒そうに立っている。今年もクリスマスがやってきた。
しほちゃんはクリスマスが好きだ。
彼女は駅前のクリスマスツリーを眺めて、iPhoneでパシャパシャと写真を撮っている。インスタのアプリで好きな色調にすると、お腹が空いてきたので近くのファミリーマートに入った。
クリスマスソングが右耳から左
しほちゃんは、ういている#鳴らない電話
世界的な通信障害でスマホがつかえなくなった。
Twitterもみれない。LINEもだめ。電話もメール、地図もつかえない。大切な連絡がこない。やばい、パニックになりそう。
この日は、しほちゃんと一緒に新宿で映画を見る予定だった。しかし、約束の待ち合わせ時間になっても彼女はこない。
しほちゃんは無事なのだろうか。
このままでは、どこにもいけない。一体何が起きているのだろう。駅のホームの公衆
しほちゃんは、ういている#平成最後の冬
私のクラスメイトのしほちゃんはスタバが好きだ。
彼女は新作のメニューが発表される度に、店舗に通っている。しかし、しほちゃんはスタバのメニューを注文するのが苦手だ。新作の「ピスタチオ クリスマス ツリー フラペチーノ」を注文した時も、メニューの名前を噛んでしまった。
彼女はメニューを注文する時に、極度に緊張してしまう癖がある。店員さんをみると、明らかに笑いを堪えている。その眼差しに耐えられな
しほちゃんは、ういている#18
空模様が怪しくなってきた。むんむんと湿った空気が充満している。ゲリラ豪雨が振りそうだ。しほちゃんはメルカリを眺めている。
スマホを使って簡単に何でも売り買いができるこのフリマアプリ「メルカリ」では何でも売っている。夏の甲子園では秋田県の高校が100年ぶりに決勝に進出して話題となった。その後日、メルカリを覗くと「甲子園の砂」とついた名前の商品が売られていた。油性マジックで大きく甲子園の砂とラベ
しほちゃんは、ういている#17
アスファルトは熱気を帯び、地面には蝉の死体が転がっている。残暑が思いの外に厳しい。最近、しほちゃんのお気に入りの野良猫のゆうさくを見かけない。夏の猫たちは涼しそうな場所を見つけて、潜んでる。駐車場の車の下や、電車の高架下や公園の茂みの中でじっとしている。彼女はそんな猫たちを愛している。普段なら人間が一定の距離に近づくと逃げ出す猫たちも、この暑さでぐったりとしている。動きにキレがない。彼女はゆうさ
もっとみるしほちゃんは、ういている#15
真夏の日差しを浴びた、サンタンカのあかい花は優しさに満ちてた。
「TK」としほちゃんは寄り添いながら熱帯植物館を散策した。目にうつる全てが二人を祝福するかのように煌めいてた。きょうは園内にほかの客は見られない。まるで地上最後の楽園のようだった。その考えは彼女を愉快にさせた。たのしそうな、しほちゃんを見て「TK」もわらっている。
彼の携帯が鳴った。電話の相手は社長だった。
「そろそろ帰るか」
しほちゃんは、ういている#13
しほちゃんは堕落していた。「TK」はいろんな遊びに連れてくれて、美味しものをご馳走してくれる。彼女は受け身の居心地のよさに溺れていた。昭和の文豪は堕落した姿が人間のあるべき姿なのだと語っていた。
彼が死体を見せてくれると言ったあの日から、しほちゃんの中で何かが決定的に変わった。彼女の中にあった、どす黒い得体の知れないなにかは消えてしまった。「TK」の話によると近所で熱中症で、倒れた一人暮ら
しほちゃんは、ういている#12
しほちゃんが茶髪になった。
いわゆる俗的なことを避けていた彼女は、ふつうの高校生が遊ぶような場所に行くようになった。
この間、浴衣を着て「TK」とならんで歩くしほちゃんの姿をみた。商店街の夏祭りでイカ焼きを美味しそうに食べていた。とても綺麗だけど、なんか無理だった。彼女をすごく遠くに感じてしまう。しほちゃんは、浴衣を着て男と花火にいくような人間とはちがうと思っていた。彼女は世界と戦う、高潔
しほちゃんは、ういている#総集編
400字原稿用紙換算で「枚数35枚と7行」です
(1day)
2018年平成最期の夏がはじまる。
中間テストがおわった教室ではクラスメイト同士で、テストの答え合わせをする声が聞こえる。
「現国どうだった?」
「自己採点で60点」
ゆっくりと窓側の席をみると、透き通るような薄茶色い長い髪を気だるそうに触っている女の子がいる。
しほちゃんだ。
彼女はトイレもお弁当も移動教室も、いつも一