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たったひとりの最終決戦

たったひとりの最終決戦

1990年10月17日。生き方を決定づけられた。12日後に7歳になる前、この日が人生を産まれ直したバースデーだった。

ドラゴンボールのTVスペシャル『たったひとりの最終決戦』

サラリーマンの悲哀と抵抗、男の死に様を描いたアメリカン・ニューシネマ的アニメ。そんなものを見せられたら6歳の生き方が変わってしまうのも無理ない。会社員になってから「社内不適合者」と呼ばれ続けたのも、たった独りの戦士に憧れ

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酔いどれランナーの孤独

酔いどれランナーの孤独

3年前の8月8日、閉会式の直後に本来のマラソンコース42.195キロを走った。たった独りの東京オリンピック。このとき宿題を作った。本来のマラソンコースは国立競技場をスタートし、国立競技場に凱旋する。これが真の東京オリンピック。国立競技場に入れるはずもなく千駄ヶ谷の駅からスタート。

昨年、復活した新宿マラソンで国立競技場を走るチャンスを得たが、ハーフと10キロはPCR検査が義務付けられた。まだ3年

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鬼

「鬼が子どもをさらっていくから夜は外に出たらアカンよ」

物心がつく頃から両親に吹き込まれ、奈良の幼少期は毎晩8時までに寝ていた。幼稚園では「鬼は外、福は内」と豆をまかされたが、夜ふかしが許され、外で自由に遊べる鬼が羨ましい。だから御伽話では鬼に勝って欲しかった。

令和二年1月10日、新宿から夜行バスに揺られて13時間。朝6時半の米子駅。すぐに大山寺行きの市バスに乗り換える。夜が明けてくる車窓の

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Now and Forever〜第57回スーパーボウル

Now and Forever〜第57回スーパーボウル

古今東西すべてのスポーツのgoat(史上最高のアスリート)であるトム・ブレイディが45歳で引退。ひとつの時代が終わり、紡いできたNFLの神話は二回り近く下の世代に受け継がれる。両チームのQBは24歳と27歳。合計すると史上最も若いQB同士の対決となった。ブレイディの次の時代を担うQBが27歳のパトリック・マホームズ。

Kansas City Chiefsをリーグ優勝に導き、プレーオフも勝ち抜いて

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雪

まっちゃんは雪が似合うね

福島の安達太良山に登ったとき、背中ごしに言ってくれた

ぼくが東北の母と呼んでいるひと。誰よりも雪と友だちになれる女性だからうれしかった

春の色といえば「黒」と答える。それが北国のひとたち。冬につもった雪がとけて、黒いアスファルトを見たとき春の訪れを感じるから。すごい世界に住んでるなあ。ちょっと羨ましい

ぼくが生まれ育った奈良の北部は年にいちど積もるかどうか。雪が降

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夢十一夜

夢十一夜

夢を録画できる装置があればいいのにと思う。続きを観たいわけではない。もう一度おなじシーンを観たい。

夏目漱石の小説に『夢十夜』があるように、初夢、正夢、郷夢、客夢、瑞夢。日本人は夢に数えきれない言魂を宿してきた。

夢の中は予想だにしない出来事や人物に出逢う。よくこんな脚本を書けるものだと感心するが、普段は使わない右脳で夢を描いているのだろう。夢は絵画、音楽、文学すべてに長けた映画監督。

こん

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自分を酔わせるもの

自分を酔わせるもの

高校時代、プロレスより凄いものは存在しないと信じていた。小遣いはすべて観戦チケットやグッズ、書籍に捧げ、大阪府立体育会館に毎月のように通った。3年生で進路を決めるときも、週刊プロレスの記者になるため立命館大学のマスコミ学科を志望。まともに勉強したのは入試前の3ヶ月間だけ。最後の追い込みでなんとか最終模試で合格まちがいなしのラインに来た。

いよいよ受験を明日に控えた前夜、事件は起こった。緊張で寝れ

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地上の神話 Super Bowlへ

地上の神話 Super Bowlへ

2月14日、前夜の大雪予想は外れて、新宿は小1時間ほど雪が降ったのみ。これだけテクノロジーが発達しても、人智を遥かに超えてくるのが天気とSuper Bowlだ。

1年に一度、アメリカの首都が変わる日。ゴジラが上陸して都市が壊滅してもSuper Bowlだけは開催される。神様が産み落とした地上の神話だ。

どんな試合結果になろうとも、必ず伝説が生まれる。理由は無数にあるので毎年、少しずつ因数分解し

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自分の名前

自分の名前

親には申し訳ないが、物心のついた頃から自分の名前が大嫌いだった。

「松田」は奈良の近所のおっちゃん、おばちゃんから「まった君」と呼ばれる。道を歩いていると「まったくん、おはよう」と挨拶されるのが恥ずかしい。響きが芋っぽいし、実際に田舎者だから余計に烙印を押されたようで下を向いてしまう。

「光正」の名前がなによりイヤだった。自己紹介すると「ミツマサ?武将みたいやな」と即座に返ってくる。それが条件

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好きな英語

好きな英語

観光スポットやグルメ、スポーツ観戦よりもワクワクすることがアメリカにはある。

Have a nice day。この言葉を早く聴きたくて、空港に着いたら真っ先にコーヒースタンドに行く。米ドルを渡し、店員さんがCoffeeと一緒にHave a nice dayをくれると、初めての街もきっと上手くいくと思える。

You're welcome

「よい一日を」は日本語でも様になるが、「どういたしまして

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流儀

流儀

自分の眼で見たもの、耳で聴いたものしか意見を言わない。

ノンフィクションの本やドキュメンタリーを見ても脳が「事実」と認識しない。歴史の授業は好きだったが、フィクションとして楽しんできた。

今、ロシアやウクライナで起きていることも現地に行かない限り「戦争反対」を叫ぶことはない。人命が失われることは痛ましい。だからこそ「情報」によって語りたくない。

生まれつき何かが欠如しているのだろう。了見が狭

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好きな季節

好きな季節

新宿のなか卯のお姉さんが「ひとの肌には季節があるよ」と教えてくれた。彼女の診断によると、ぼくの肌は『冬』らしい。

これまで友人からは「夏休みの少年みたいだね、年中」と言われることが多く、少し奥を覗いてくれた気がした。

「お兄さんはクリアで鮮やかな服が似合うよ。スカイブルーとかスノーホワイトとか。あとはピュアレッドもね」

冬がいちばん好きになったのは、雪山の魅惑にとり憑かれた8年前。仕事を手伝

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今年の目標

今年の目標

1月4日、会社の全体ミーティングで令和四年の目標を聞かれ、「フォレスト・ガンプより走る」と答えた。

友人に誘われ3月20日の千葉マラソンに向かうことになったものの、今は5キロが精いっぱい。『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロに負けないくらいパスタを食べすぎたせいで、半年間で10キロ太ってしまった。

ガンプがどれくらい走ったのか調べてみると、3年間で15,000マイル(約24,140キロ)

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都会の山

都会の山

早稲田からの自転車通勤の帰り、大久保通りの24時間営業のネパール料理屋を通過する。ダルバートの香ばしい誘惑を逃れ、神田川の手前のローソンを左に曲がると蜀江坂(しょっこうざか)に入る。北新宿はかつて山だった。

自分の影を見ながらゆっくり坂道を下ると、西新宿の高層ビルが顔を出す。航空障害灯の赤い点滅が「おかえり」のサイン。8年前、故郷の奈良から上京したときは、ずいぶん高く見えた。

週2回通うコイン

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