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哲学

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記事一覧

国語「現代文」の解き方ならびに、「国語的読解」概念を取り巻く「文学」的諸状況について(幾つかの例題とともに)

はじめに 国語――つまり小学校~高校で習う国語の現代文を解くとはどういうことかをまず簡単に概説する。「国語のテストは何を解かせようとしているか」を示すと共に「国語のテストは何を解かせようとしていないか」もあわせて示す。「テストが出題し答えさせようとしていること」とそれに対応するための「国語的読解」の輪郭を明らかにすることは、単純に高校レベルまでの国語の現代文の点数を上げることに寄与するだろう。必要

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【分析哲学】「心の哲学」上の多義的なクオリア概念の入門的把握を明晰にするための提案:睡眠導入剤の法定添付文書上の副作用「異常な夢(魔夢)」を補助線にすることについて

はじめに 久しぶりに哲学の話をする。分析哲学における「心の哲学」の話だ。クオリアの話と言えばピンと来る人も多いかもしれない。リンゴを見たときの赤い感覚の「赤さ」などと語られるそれ、あるいは「哲学的ゾンビ」や「メアリーの部屋」という思考実験でその名を知る人もあるかもしれない。

 このnoteには「メンタルヘルス」や「不眠」といったタグも付されているので、そこから訪ねてきた方は面食らうかもしれない。

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人生哲学をいかに検討すべきか/トマス・ネーゲルの「The Absurd」をひいて

 「人生哲学」は哲学的問題としてさほど興味をそそられないと度々述べているが、今回は実務上の要請により概観することとした。私は物書き、特にカップリングという人間関係を取り扱う類を好む一次・二次創作者であるため、キャラクターの性格をとらえることをどうしても要請される。そこで、二次創作上のキャラクター把握や一次創作上のキャラクター設定の一助となればという道具としての要請から「人生哲学」を概観することとし

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進化論対インテリジェント・デザイン論の哲学的見地からの検討

はじめに 前回の記事で検討された問題のひとつである「生命の目的は種の繁栄か?」に引き続き、今回のnoteも生物に関する問題を扱うが、前回に比べ哲学色が強くなる。ただし、検討するのは進化論対ID論。生物学における殴っても殴っても死なない相手との戦いについてである。ID論については知らない人も多いだろうからきちんと解説する、今はわからなくても読み飛ばしてかまわない。

 なお、本論を理解する上で前回の

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生命の目的は種の繁栄か?/生物学的に考えて子を産むべきか?

はじめに 常々平易を心がけて哲学入門的な議論を行っているが、筆者の「クオリア」や「神の有無」や「反出生主義検討」といった議論は読み返したところそれでもなお議論や術語が多く文章量も膨大で、入門レベルとしては不適切かもしれないと考えた。そこで今回は、本当に簡単に追うことのできる議論を用意した。哲学的には一瞬で片付いてしまう問題を、あえて生物学の観点から概観する。よって、今まで行ってきた議論のような哲学

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反出生主義の功利主義的検討による正義・哲学入門

はじめに 反出生主義の名に馴染みがある者もあればない者もあろう。反出生主義とは端的に表現すれば「人間を新たに生み出すことを否定する思想」でありその最終的な目標として「人類絶滅」を掲げている。

 導出の理論的な根拠は功利主義である。より適切には功利計算の対象として選好ではなく快苦を採用した功利主義だ。快苦を対象とした功利主義においては、幸福の最大化と苦痛の最小化という観点から正義が構築されることと

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神と無神論の検討による哲学入門

はじめに 本noteでは表題のとおり主に神について概観することで、初学者的な哲学的検討について楽しんでいただくことを目的としている。ただし、ここで言う神とは一神教や多神教における神のみを想定するものではなく、「物理領域に影響をおよぼす神」「物理領域に影響をおよぼさない神」の2種にしぼり、前者の射程にはたとえば見えたり写真に写ったりするタイプの幽霊、後者の射程には理神論的な神、一部立場におけるクオリ

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心の哲学におけるクオリアに関する物理主義、随伴現象説、相互作用二元論の検討(メアリーの部屋、哲学的ゾンビ、現象判断のパラドックスを用いて)

要約心の哲学におけるクオリア問題について、私見を整理検討する。まず「心の哲学」と「クオリア」について簡単に述べるとともに、何が「問題」とされているのか確認する。次に、「問題」についての立場として「物理主義」「随伴現象説」「相互作用二元論」を挙げ、それぞれの内容を確認する。さらに、議論に用いられる「メアリーの部屋」「哲学的ゾンビ」「現象判断のパラドックス」についてその内容を確認し、各議論についての各

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