夜明ユリ

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夜明ユリ

Xアカウント(@yorugaowaru1218)夜明ユリ Xアカウント(marble1218)ユリイカ のふたつです。

マガジン

  • 炭酸ソーダの水荘|交換日記

    • 22本

    世界の終りと平成ノート・ワンダーランド|平成最後の五月雨が降る日、僕らは遺書みたいに濡れて空を見る。これは、僕らが書く交換日記だ。|ツイッターの文章書き達がnoteで描く珠玉のエッセイ集|#交換エッセイ集

記事一覧

野良猫の足音

野良猫が走っていく足音は 宇宙のメロディとおんなじなんだ 月の匂いに誘われて走ってゆく とぐろをまいた雲がぐるぐる流れて 野良猫は澄んだ目でそれを見上げた 野良猫に…

夜明ユリ
8日前
12

キッチンと月夜

真夜中、家族が寝静まり返った頃。君と私は、遠くの月を違う場所から眺めていた。私はキッチンの窓から。君は忍び込んだ学校のジャングルジムのてっぺんから、同じ月を見上…

夜明ユリ
9日前
20

ぴかぴか新緑一年生

野生のスミレが居眠りしている ハ長調の陽気な曲に包まれて 学校はゴールデンウィークで休みだから 木洩れ日もうんと伸びやかにしている 無数のひかりの泡 キーンと透き通…

夜明ユリ
1か月前
14

てんとう虫と青いアネモネ

駅のホームでぽつん、と花が咲いている 母の姿は、青いアネモネ 澄みきったかなしみが身体中に染み込んでいる 帰郷した日にはいつもあたたかな炊き込みご飯 ずっと変わらな…

夜明ユリ
1か月前
26

よおく見てごらん

水平線をやさしく結って 国境を飛ぶ空色の手紙 みんな水飛沫みたいに 空中で遊んでいる 夕刻の浅い波間で 海を渡ろうやさしい歌で 海底の魚も踊るくらいにさ まあるいびー…

夜明ユリ
2か月前
21

swing fish

薄べったい風が吹いている汗っかきの五月 ジグザグ運転で転げ落ちた夢見がちな魔法使い アイボリーの雲も色褪せず祈っていた あの木陰のシロツメクサが待ちぼうけしている …

夜明ユリ
2か月前
33

見ず知らずの人に怒り散らすくらいの 傷口が痛みさらす人間のはけ口を 嘲笑する人間の目は虚空で空虚に飛ぶ鳥を 見逃して 鳥の羽ばたきに夢見がちな 少年の硝子玉みたいな…

夜明ユリ
2か月前
22

カエルのお留守番

時も忘れてしまいそうなくらい 長い長い雨が降り注いでいます 一匹のちいさなカエルは 睡蓮の葉っぱを雨傘にして お留守番をしていました 辺りは一面睡蓮の花々が しとや…

夜明ユリ
2か月前
14

糸雨とチェリー

静かな糸雨 雨音がとおく優しい真夜中へ ようこそいらっしゃい 頭のなかを冷静にさせてくれる ちいさくてやわな魔力に 思わず目をとじる 洗いざらしの夜の町が鈍く光ってい…

夜明ユリ
2か月前
14

クオンの実

白い墓の傍らでひっそり クオンの実を食べた 互いの心臓を明け渡すように ふたりきり分け合って食べた ヒカリの鳩たちが そぞろに誘われて飛んでやって来たので 星の破片ほ…

夜明ユリ
2か月前
20

草原

00:00 | 00:00

過去に書いた自作の詩を朗読しています。 よかったら聞いてください。

夜明ユリ
2か月前
14

WEEK END

00:00 | 00:00

自作の詩を朗読しました。 よかったら聞いてください。

夜明ユリ
2か月前
5

孤島のピアノ

孤島に忘れ去られたピアノがある 音色はバラ色で些かやわな棘があった 黒鍵に乗った鴎が一羽 羽のないおはなしをする やっと見つけてくれたから ピアノは嬉しがって鳴いた…

夜明ユリ
2か月前
6

One

夕暮れ近く 誰もいない遊園地 観覧車とメリーゴーランドだけ 廻っている ここに住もうよって 君は笑っている よろこんでと 手を握る アンティークローズの花束かざして 真…

夜明ユリ
2か月前
17

花が燃える頃

あの花が燃える頃 賛美歌は森へ帰ったよ あるのはセピア色の乾涸びた木洩れ日だけ 時間も溶けて消えていくのは何故かな ここは湿気った六月も終わりの長閑な町 プールみた…

夜明ユリ
3か月前
16

BLUE GARDEN

夜の庭には 青い花が咲いている 凍える声が聞こえたら きっと雨のブルーガーデン 血脈の音が踊る 星屑が降れば青い花達は クジラになる夢を夢見たりするんだ 街灯紳士が紅…

夜明ユリ
4か月前
8
野良猫の足音

野良猫の足音

野良猫が走っていく足音は
宇宙のメロディとおんなじなんだ
月の匂いに誘われて走ってゆく
とぐろをまいた雲がぐるぐる流れて
野良猫は澄んだ目でそれを見上げた
野良猫には終わらない野心があって
白い牙と果てしない嗅覚で辿り着いた
銀色の森深くにある湖で水を飲むんだ
その先にある向日葵畑で眠る為に
虹色の光を帯びたコガネムシを食べて
毛並みに夜明けの風を染み込ませる
耳をよおく欹てて朝焼けの中
鳥の囀り

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キッチンと月夜

キッチンと月夜

真夜中、家族が寝静まり返った頃。君と私は、遠くの月を違う場所から眺めていた。私はキッチンの窓から。君は忍び込んだ学校のジャングルジムのてっぺんから、同じ月を見上げていた。無言のままなのは、月を見あげている証だった。
すると君はぽつり、と小さな声でこう言った。
「ムーンリバーって曲、好きなんだ。」私は聞き返した。
「オードリーヘップバーンが歌っていた曲?」
「そうさ。」とまた小さな声で君は言った。

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ぴかぴか新緑一年生

ぴかぴか新緑一年生

野生のスミレが居眠りしている
ハ長調の陽気な曲に包まれて
学校はゴールデンウィークで休みだから
木洩れ日もうんと伸びやかにしている
無数のひかりの泡
キーンと透き通るひかりの音が鳴り響く
ぴかぴかの新緑一年生
勉強も宿題も初めてなんだ
苦手な科目は嵐の日の過ごし方
強風から身を守る勉強かなぁ
4つ葉のクローバー‪になれなかったって
3つ葉のクローバーは悲しげにしている
モンシロチョウはそっと励ます

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てんとう虫と青いアネモネ

てんとう虫と青いアネモネ

駅のホームでぽつん、と花が咲いている
母の姿は、青いアネモネ
澄みきったかなしみが身体中に染み込んでいる
帰郷した日にはいつもあたたかな炊き込みご飯
ずっと変わらない味を噛みしめる
こころのぶらんこをやさしく揺すってくれる
お見送りをしてくれる青いアネモネの
ちいさな肩に風が吹いていた
わたしの目は視界が震えていて
またいつでも来なねと微笑む目尻の
皺は桜色をしていて
また春になったらねと精一杯微

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よおく見てごらん

よおく見てごらん

水平線をやさしく結って
国境を飛ぶ空色の手紙
みんな水飛沫みたいに
空中で遊んでいる
夕刻の浅い波間で

海を渡ろうやさしい歌で
海底の魚も踊るくらいにさ
まあるいびーどろ
そんな星に生まれたよ
よおく見てごらん

海の色は何色
お絵描きした指は何色
争いのなか手を洗う水は何色
握手した手は何色
今日の空は何色
道端の花は何色
食べた料理は何色
涙は何色
眠りにつく時の部屋は何色
夜明けの空は何色

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swing fish

swing fish

薄べったい風が吹いている汗っかきの五月
ジグザグ運転で転げ落ちた夢見がちな魔法使い
アイボリーの雲も色褪せず祈っていた
あの木陰のシロツメクサが待ちぼうけしている
はるか彼方の夢を編んだよ
固結びの悲しみも一緒にね
疲れ顔の君の泪のエンドロールを探していた
同じ名前が流れてきたらきっと叶うはず
届きそうで届かない引っかかった風船
よじ登って取ろうとしたら
飛んでいってしまうみたいに

何処までも

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春

見ず知らずの人に怒り散らすくらいの
傷口が痛みさらす人間のはけ口を
嘲笑する人間の目は虚空で空虚に飛ぶ鳥を
見逃して
鳥の羽ばたきに夢見がちな
少年の硝子玉みたいな眼差しは割れかかって
今にも羽根が生えそうで
ちいさな風でも吹っ飛ぶ種子のような春の息には
泪さえも零れないが
爆発ばかりが起こる世界の映像には
泪と赤い血液が流れている人間が
心を攫う春の夜風に追い越されて
桜吹雪の中を歩いて遠くに行

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カエルのお留守番

カエルのお留守番

時も忘れてしまいそうなくらい
長い長い雨が降り注いでいます
一匹のちいさなカエルは
睡蓮の葉っぱを雨傘にして
お留守番をしていました

辺りは一面睡蓮の花々が
しとやかに咲いていて
仄甘い香りがカエルの鼻先に
ほんわり漂いました

おなかのすいたちいさなカエルは
ぐうぐう鳴るおなかの音が恥ずかしくて
ケロケロと鳴いて
おなかの音をごまかしたりしました

とおくへご飯を探しに行った
父さんカエルと母

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糸雨とチェリー

糸雨とチェリー

静かな糸雨
雨音がとおく優しい真夜中へ
ようこそいらっしゃい
頭のなかを冷静にさせてくれる
ちいさくてやわな魔力に
思わず目をとじる
洗いざらしの夜の町が鈍く光っている
息を潜めて雨音を鼓膜に焼きつける者の
冷めやらぬ深く青い熱情が降っている

首すじから垂れ流れるちいさな海
かなしくってくるしくって
チェリー色の目でとおくとおくを見ていた
あたしの夢路の果て

静かな糸雨
ささやかな約束は待ちぼ

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クオンの実

クオンの実

白い墓の傍らでひっそり
クオンの実を食べた
互いの心臓を明け渡すように
ふたりきり分け合って食べた
ヒカリの鳩たちが
そぞろに誘われて飛んでやって来たので
星の破片ほどの
クオンの実をあげた
ヒカリの鳩たちは
羽根を脱ぎ捨てて
人の形になったり
鱗が生えて魚になったりした

ふたりは長い長い間冷えきった唇を重ね合った
ずっとずっとはなればなれだったから
しだいにふたりのからだは
ひとつの木となり

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草原

夜明けごとに透明になる

00:00 | 00:00


過去に書いた自作の詩を朗読しています。
よかったら聞いてください。

WEEK END

夜明けごとに透明になる

00:00 | 00:00

自作の詩を朗読しました。
よかったら聞いてください。

孤島のピアノ

孤島のピアノ

孤島に忘れ去られたピアノがある
音色はバラ色で些かやわな棘があった
黒鍵に乗った鴎が一羽
羽のないおはなしをする

やっと見つけてくれたから
ピアノは嬉しがって鳴いた
悲しいことにわたしは
ピアノがうまく弾けない

ただ指を静かに置いて
ひとつひとつの鍵盤を順番に奏でた
ピアノはずっとわたしの指を見ていた
ピアノはからだで感じていたのだ
わたしの指の感触を

息をしている
ピアノもわたしも

それ

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One

One

夕暮れ近く
誰もいない遊園地
観覧車とメリーゴーランドだけ
廻っている
ここに住もうよって
君は笑っている
よろこんでと
手を握る

アンティークローズの花束かざして
真夜中の彗星の尾っぽ追いかけた
ラム酒のチョコレート食べたあと
キスをした夜明けの雷音
アロワナ雲泳いでいた

渇いた喉で何処まで走ろう
からっ風に吹かれながら
絡まない赤い毛糸転がしながら

クモの巣が踊っている嵐の日に
ブレーカ

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花が燃える頃

花が燃える頃

あの花が燃える頃
賛美歌は森へ帰ったよ
あるのはセピア色の乾涸びた木洩れ日だけ
時間も溶けて消えていくのは何故かな
ここは湿気った六月も終わりの長閑な町
プールみたいなアスファルトを泳ぐ
錆びたローカル線が雨を食べて
のらりくらり余所見している
夜のシャボン玉が賑やかなのは知っている
ちいさな町にもお祭り騒ぎはある
金魚になった夜もあったっけ
あの花が燃える頃
わたしの言葉はどんどん衰えて
必ずち

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BLUE GARDEN

BLUE GARDEN

夜の庭には
青い花が咲いている
凍える声が聞こえたら
きっと雨のブルーガーデン
血脈の音が踊る
星屑が降れば青い花達は
クジラになる夢を夢見たりするんだ

街灯紳士が紅いバラを
差し出したくてうずうずしている
しびれを切らした三日月が
灯りにキスをした

かなしみは賛美歌へ
海が夕陽に照らされて泣きたくなった
もう居なくなってしまった君の歌は
水底のオルゴールになってる
だから魚達は毎日大暴れ

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