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私小説『現代史』

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コミュニティ・カレッジのこと

コミュニティ・カレッジのこと

なにげにつらつらとコミュニティ・カレッジのことを書いてツイートしたら、ポジティブな反響が多かったのでちょっと驚いた。誰もが指摘するように、日本は中身よりも極度にカタチに拘る社会なので、意外であった。

”Fラン大学”などという馬鹿げた言葉が恥ずかし気もなく通用する社会だ。たかが10代の頃のテストの点数で人間の能力を測ることのバカバカしさは、社会に出てみれば、役所にしろ会社にしろなんにしろ、誰もが直

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僕のお姉ちゃん

僕のお姉ちゃん

何かとても重大で深刻な知らせを聞いた時、即座に強い大きな感情が湧いてこない。映画の中のような劇的なシーンとはかけ離れたほぼ無反応な自分がいる。

約10年前父が亡くなった時も、約1年前母が亡くなった時も、そうだった。認識はしている、でも情緒が反応しない、とでもいうか。身体も心も活動が止まっている。

音が無い空間に一人でいるような感覚。耳が聞こえなくなったわけではない。ありとあらゆる生活音に満ちて

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私小説『現代史』 1.父の絵

私小説『現代史』 1.父の絵

まえがき覚えていることがどんどん減ってくる。日々起きていることは直ぐに忘れる。新しいことを覚えるのがもっと難しくなってきた。それに比べれば、遠い昔のことの方がまだましだ。妙に細部まで覚えていることがある。

と最近まで楽観していた。しかし、そんなこともどんどん忘れ始めていることに気が付き始めた。やがて、こうやってすべての記憶は白紙になり、一つの生命が永遠の時間の中に消えていくのだろうと思うと、特に

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