よしなが

東京のスタートアップ企業でITエンジニアをしています。ここでは主に趣味で作ったものや考…

よしなが

東京のスタートアップ企業でITエンジニアをしています。ここでは主に趣味で作ったものや考えた雑多なことを書いていきます。 関心:情報技術、デザイン、人間工学、近代文学、言語学、園芸。

マガジン

  • 旧仮名キーボード開発記

    旧字旧仮名で日本語入力できるキーボードアプリ「旧仮名キーボード」の開発にまつわる雑記。

  • 工学入門

    エンジニアになりたい人のために、工学思想を説明します。

  • ジブリ新作『君たちはどう生きるか』を観ての感想

    ジブリ新作『君たちはどう生きるか』を観ての感想をオタク特有の長文早口で書いていたら2万字を超えてしまったので、記事を分割してマガジンにしたものである。 以下は各篇の内容の目安である。 1:今作の鑑賞方法についての抽象的な話 2:登場人物や具体的な場面に対する話 3:今作の質感によく似た作品についての話 4:前3篇をすべて読み終わったあとで読む話

最近の記事

旧仮名キーボード開発記#11|改善計画

去る1月22日、旧仮名キーボードの利用者数(ユニークユーザ数)が200人を突破しました。ありがとうございます。 *** 現在の開発内容現在、変換精度の根本的な改善のために、辞書データの構造を組み立て直す作業を進めています。 さまざまな機能要望が上がっていることは認識していますが、機能には本末があるため、根本にあたる機能を先に実装し、枝葉にあたる機能を後に実装する必要があります。 機能の本末の判断基準としては、利便性や重要度の順ではなく、因果関係の順を採用しています。本

    • エンジニアになるには【工学入門#1】

      筆者はITエンジニアである。 しかし、本稿はITに限定せず、工学という広い範囲の話を述べる。工学という大土台を学べば、情報技術だろうとデザインだろうと一度に見通せるようになるからである。 筆者は今まで「エンジニアリングを基礎から教えてほしい」といわれたことが何度かある。しかし、困ったことに、本当の意味での基礎を語ろうとしても見せるウェブページがないのである。たとえば大学1回生のときに「~概論」という名前の講義で習うような初歩的な内容であっても、ネット上で探そうと思うと非常

      • 旧仮名キーボード開発記#10|開発の変遷(後篇)

        前回の続きです。 前回: *** 令和5年春(開発再開)この時点ですでに名詞さえ整えばすぐにでもリリースできる状態だったのですが、あまりに作業が退屈なので何ヶ月も放置していました。 そこで、とりあえずアプリとしてまとめあげることを重視し、あえて開発期間に締切を設けることにしました。もともと個人企画なので締切を設ける必要はないのですが、名詞の数には限りがないことを考慮すると、完成し次第リリースするという計画よりも、締切までに一応形にするという計画のほうが現実的だと判断し

        • 旧仮名キーボード開発記#9|開発の変遷(前篇)

          ちょうど区切りとなったので、開発開始からリリースまでの変遷について一旦まとめようと思います。 また、note記事のカバー画像を作るのが面倒になったので、今後はずっと同じ画像を使います。 *** 令和3年5月〜(辞書作成&停滞期)ここから記事が途絶えていたと思うので、ここから書きます。 辞書作成計画 キーボードの基礎機能自体は比較的早くにできたのですが、辞書作りが大変でした。 以前にも書いたとおり、辞書はNAIST Japanese Dictionaryを下敷きにし

        旧仮名キーボード開発記#11|改善計画

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        • 旧仮名キーボード開発記
          13本
        • 工学入門
          1本
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          4本

        記事

          旧仮名キーボード開発記#8.5|中序

          中序 舊󠄀假󠄀名󠄀キーボード公󠄁開󠄀ニ際󠄀シ今󠄀後󠄀ノ方󠄀針󠄀ヲ改󠄀メテ定󠄀ムベク茲󠄀ニ中󠄀序󠄀ヲ爲󠄀ス 曩󠄀ニ述󠄁ベタル如󠄀ク拙󠄀作󠄀ハ未󠄀ダ發󠄀展󠄀途󠄁上󠄀ノ者󠄀ナレバ改󠄀善󠄀スベキ點󠄀多󠄀ク就󠄀中󠄀變󠄀換󠄀精󠄀度󠄀ノ低󠄀キハ自󠄀ラ大󠄀ニ遺󠄁憾󠄀トスル所󠄁ナレドモ寧󠄀ロ低󠄀品󠄀質󠄀ノ謗󠄀ヲ怕レテ之󠄀ヲ久󠄀シク自󠄀家󠄀ニ藏󠄀セムヨリハ進󠄁ミテ世󠄀人ノ用󠄀ニ供󠄀シ社󠄀會󠄀ノ洗󠄀練󠄀ヲ受󠄀クルニ若󠄀カズ是󠄀ヲ以󠄀テ先󠄀週󠄁木󠄀曜󠄁竊󠄀ニ之󠄀ヲ公󠄁開󠄀スルニ至󠄀ル吾󠄀當󠄀初󠄀

          旧仮名キーボード開発記#8.5|中序

          旧仮名キーボード開発記#8|祝・公開!

          ついにApp Storeで「旧仮名キーボード」をリリースしました! 日本在住のiPhoneユーザならばどなたでも無料でダウンロード可能です。 *** できること旧仮名遣いで日本語入力ができます。 導入方法iPhoneのカスタムキーボードの導入はわかりづらいので、画像で説明します。この手順は旧仮名キーボード特有のものではなく、GboardやSimejiを導入するときと共通です。 (1)App Storeからアプリをダウンロードします。 (2)ダウンロードが完了したら

          旧仮名キーボード開発記#8|祝・公開!

          旧仮名キーボード開発記#7|アプリ審査

          旧仮名キーボードをリリースします。 11月15日午前2時半現在、Appleによる審査中ですので、もうしばらくお待ちください。まだ審査結果は返ってきていません。 今回は、リリース作業に関する話題を書こうと思います。 ※開発や辞書作成に関する話題は、書いても書ききれないほどあるので、また少しずつ書くことにします。 *** アプリを出すにはお金がかかるApp Storeでアプリを公開するには、Appleと開発者契約を結ばなくてはいけません。これを「Apple Develope

          旧仮名キーボード開発記#7|アプリ審査

          『お爺さんのこぼれ話』(超訳)

          『二宮翁夜話』という本がある。 超訳して『お爺さんのこぼれ話』と呼ぶことにする。 現代ではあまり知られていない本ではあるが、書庫の奥に埃をかぶせておくには惜しい偉大な本である。本稿は、話題に沿った内容を原典から部分的に選び出し、適宜組み合わせ、現代人でも理解しやすい言い方に吹き替えて翻訳したものである。 なお、この本に出てくる「お爺さん」は、江戸時代を生きた実在の人物(天明7年 - 安政3年)であり、自らの哲学の実践によって600以上の貧しい村々を救ったとされている。

          『お爺さんのこぼれ話』(超訳)

          日本語の単語に「性」という分類はあるか――ヒカル君、ヒカリちゃん――

          ラテン語には、名詞や形容詞に「性」という分類がある。 一般名詞に関しては「numerus(数)は男性だ」というように性別がないものに対して性別をこじつけているような例が多いが、人名に関しては実際の人間の性別と対応している。つまり、男には男性名詞の名前が与えられ、女には女性名詞の名前が与えられるのである。 たとえば「~~ウス」という名詞は男性名詞であるので、この名前の持ち主は男性であることが分かる。「~~ア」という名詞ならば、女性である。 さて、日本語にも、曖昧ながら似た

          日本語の単語に「性」という分類はあるか――ヒカル君、ヒカリちゃん――

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #4

          この記事は全4篇のうちの#4(最終回)である。 いままで渾沌に目鼻をあけるような話を展開してきたが、今回は目鼻というより毛穴をあけるような話が多い。前3篇が未読の人は、そちらを先に読んでいただきたい。 「今作の鑑賞方法についての抽象的な話」が読みたければ#1 「登場人物や具体的な場面に対する話」が読みたければ#2 「今作の質感によく似た別についての話」が読みたければ#3 前3篇をすべて読み終わった場合は#4(本記事) 以上を目安に読んでいただくことをお勧めする。

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #4

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #3

          今作と似ていると思った既存の作品について述べていく。 『不思議の国のアリス』『草枕』『MOTHER2』を挙げる。 この記事は全4篇のうちの#3である。 前回までの記事は以下のとおり。 似た作品についての連想今作はさまざまな作品に似ていると感じたが、ここでは特に3作だけ挙げてみる。 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』 まず、これである。 おなじ感想を持った人も多いのではないだろうか。 全体的な展開や構成に注目すれば、今作は『不思議の国のアリス』の翻案であると言っ

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #3

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #2

          登場人物・場面についての解釈や連想したことを書いていく。 この記事は全4篇のうちの#2である。 前回の記事は以下のとおり。 登場人物・場面についての連想篇さて、いよいよ渾沌に目鼻をつけて遊んでみようと思う。 また、何度も同じようなことを強調するが、本記事で述べているすべての認識は、あくまで群盲の一評にすぎない。断定調で述べている部分も、すべて筆者の解釈にすぎない。客観的にみえる書き方をしていても、すべて主観である。ここに関しては、読み手の読み方にたのむところ大であるの

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #2

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #1

          実は初日の深夜に見たのだが、思ったことを全部書こうと思っていたら2万字を超え、いつのまにか1週間が経ってしまった。 それでもまだ次から次へと書きたいことが出てきてキリがないので、一旦ここまでで切り上げ、4つに分割して公開することにする。 タイトルに「オタク」とあるが、筆者は熱心なジブリオタクでも宮﨑駿オタクでもない。普段アニメをまったく見ないのに、たまたま今作を映画館で観て話したいことが大量に出てきてしまい、狭い領域についてひたすら長文早口を恣にするその姿がオタクに似てい

          『君たちはどう生きるか』の感想をオタク特有の長文早口で述べる #1

          着物男子、はじめました。

          私服として着るために着物を買いました。 浴衣ではなく、いわゆる普通の着物です。 なにか特別な目的があるわけではなく、ただオシャレ用の私服としてほしいと思い立ったので、上野のメンズ着物の専門店に行って既製品の長着や羽織を買いました。 なぜ着物がほしくなったか大きなきっかけがあるわけではないのですが、小さな影響はいろいろな方面から受けた気がします。 そもそも、高校時代に弓道をやっていたり、母が着物屋の店員をしていたり、うっすら周りに着物の気配自体はあったのですが、今までは

          着物男子、はじめました。

          セマンティックnote

          noteのテキスト装飾方法の1つに「引用」という機能があって、テキストに「引用」を適用すると、以下のように綺麗な背景がつく。 これは引用です。 「引用」というからには、誰かの言葉や書籍中の文を引用するために使うのが本来の使い方であろう。逆に、この見た目を利用したいというだけの理由によってこの機能を濫用するのは、セマンティックであるとはいえない。しかし、ほとんどの人は一向構わぬという見えで、ほしいままに引用機能を使いたおす。 もしnoteに「表」という機能があったとしたら

          セマンティックnote

          赤は目立つ? UIデザインにおける誘目性

          たとえば、以下のような問いがあったとします。 【問】下図から、最も誘目性の高い要素を1つだけ指摘せよ。また、その主たる理由を述べよ。 まず、最も誘目性の高い要素は、上から2つ目、右から2つ目にある要素です。これに異論はないでしょう。 しかし、その主たる理由を聞かれたとき、考えられる答案としては以下のようなものがあります。 ① 赤は目立つ色だから ② 他の要素と色が異なるから 「①赤は目立つ色だから」と答える人も多いでしょうが、今回の問いに対する答えとしては「②他の要

          赤は目立つ? UIデザインにおける誘目性