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なんども読み返したいnote

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私が一方的にラヴなnoteたち。ぜひみんなにも読んで欲しい
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花束の中の針

 わたしには言葉くらいしかましなところが無いのに、それさえも対面コミュニケーションの下手さに相殺されていまだにわたしの、本当のきれいなものを本当にきれいだとそれだけをただ話したい心が浮かばれない。今日発売された雑誌さえいざ読むとほんとうにろくなことを言っていなくて、わたしこれチェックとかなんで通しちゃったの!?と一人で青ざめているけれど、思い返せば取材のときも原稿チェックのときも、「初対面の相手の方に通じるような言葉の選び方をしなければいけない」「ここに関わった誰の印象もなる

クチナシと水泳

(見出し画像:Pixabayから)  6月に入ると、そろそろクチナシが来る、という意識が頭の隅に現れる。外を歩くたびに鼻が落ち着かず、目が動いて白い花を探しはじめる。  クチナシの香りが苦手だ。嗅覚が敏感なのも原因だろうが、甘い香りは鼻腔から進入すれば鳩尾の辺りでとぐろを巻くようだし、香りのボリュームが大きいので遠くにいても鼻をかすめる。外を歩いている時、行く手に花が見えたら呼吸を少し控えめにしてしまう。ただ、萎れていく花の周囲にあの香りがただよっていると、花の茶色い傷か

気付くと僕は一人で肉を焼いていた。

昨日、大阪で新人王戦の対局があった。勝てばベスト4。気合が入っていた。 相手の池永さんが強い事は知っていたが、こちらも負ける訳には行かない。この前、関矢さんが勝てば自分も勝つ。みたいな事を書いた手前、ますます負けられなかった。 この日は三間飛車から穴熊に組んで、長く戦う姿勢だった。自分からは倒れない。粘り強く戦う事が最近のテーマだ。 専門的な感想としては、相手の端の拠点を少し甘く見たかも知れない。左辺で上手く捌いたように見えたが、全体的に苦しめな将棋だったようだ。 だ

けれちゃんの癇癪 その3

 靄がかかったように向こう側が見えない。私は立ち尽くす。  行き止まりを思考で越えられない。靄の向こうにはまだ続きの景色があるように思われてやまないのに、どうしてもそこに届かない。私のつたない知性はこの靄を突破する術を持たない。何かあるのに。見えない向こうに何かがあるとわかるのに、そこに到ることができない。  毎日、何かにつけてこの靄にさいなまれる。わからないことばかりだ。掻いても掻いても霧を払えない。この靄を突破するために書き続ける。わかっていることを書くのではない。書い

「シュガーラッシュ オンライン」の息苦しさ

 人間はハッピーエンドと同じくらい、その後日談が好きな生き物らしい。どんなに完璧な終わりを迎えた映画であっても、その続編は作られる。「ハッピーエンドの後も人生は続く」を合言葉にして。  「シュガーラッシュ」の続編である本作、「シュガーラッシュ オンライン」もそうした作品の一つだ。要するにこれは、「そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」というありきたりな結びの言葉の、その先の物語なのだ。  だから、本作でのラルフは前作の結末、そこで手に入れた世界に完璧に満足した保守的な

「ペンギン・ハイウェイ」。少年と死の物語。

 十歳の頃、僕は自分がいつか死ぬということに気が付いた。その考えはしばらくのあいだ僕に憑りついて離れず、夜になると一人布団のなかでそのことについて考えた(子供というのは誰でもそうだ)。僕がこの悩みを打ち明けた相手は祖母だけで、彼女はお前の言う通りだと笑ったものだが、その祖母も数年前に死んでしまった。人は誰でもいつか死ぬ。  「ペンギン・ハイウェイ」はそんな映画だ。主人公のアオヤマくんは十歳の男の子で、日々この世界の様々な事柄について学び、探求し、将来は偉大な大人になることを

私の彼氏には、好きな女が2人いる。

「友達と恋バナをしたんだけど、友達が『好きな人が二人いるのはおかしい!』って言うんだよ」 「好きな人って、私ともう一人誰かいるってこと?」 「そう。友達は、『彼女のことは大好きなのに他にも好きな人がいる、っていうのは聞いたことが無い』んだって」 「へー。それは、珍しいね。好きな人が何人もいるなんて、たぶん、けっこう普通なことなのにね」 恋人に、突然そんなことを言われて、相手は誰なんだろうと、胸がざわついた。普段の自分が「好きな人が何人もいることを否定する人は、不誠実だ

母の日に恋人を紹介したら 返ってきた言葉のこと

「生きていてくれたら、それでいいのよ」 今すぐにではなくていいから、わたしはオレンジ色が似合う人になりたい。「純粋な愛」「清らかな慕情」は、オレンジのカーネーションの花言葉。わたしが好きな言葉ばかり。そもそもわたしは言葉が好きだから、なんだっていい。けれど人に聞かれた時、答えられるようにしておかなければいけない。わたしの母ならきっとそう言うはずだ。 段々と今日が何曜日かわからなくなって、今日が何日かわからなくなる。そのままわたしは今日が何月かわからなくなるのに、大切な日の

案ずるより生むが易しは男が作ったことわざ

という話を妻としました。 案ずるほうが100倍楽だったね。 こんばんは、栗林です。 赤ちゃんが産まれて3週間が経ちました。 一言で言うと、かっわいいです。 ねこって結構可愛いと思うんですけど、その3倍くらいは可愛いです。 今のスキルとしては寝る、泣く、おっぱい飲む、排泄する、なんかただ目開けてるの5つくらいですけど、それなのに、それ故に可愛いです。 そこそこ物事を客観的に見れる方の人間だと思って生きてきたんですけど、インスタとかでほかの赤ちゃんの写真見てるとどう考えても

分かりやすいことを言うな

こんばんは、栗林です。 分かりやすいことを言うなっていう話をします。 なぜなら僕は人に分かりやすく伝えるということが全くできないからです。 だからもし僕のことを3くらい賢いなと思ってくれてたら、僕の脳内には1200の賢さが詰まってると思っていただいてかまわないです。 この記事もきっと1600伝えたいことのうち4くらいしか伝わらないと思うんですけど、それはぼくが4しか理解してないわけじゃなくて、いや、そうかもしれませんね。 まあなんかそんな話をします。 そもそも人間というの

南極行ったらさすがに旅に満足をした話

 2019年から期限のない早足の旅を続け、ついに2020年1月に南極を訪問し大満足し「これで旅の生活に区切りをつけられるぜ!ウェーイ!」ってなって旅に区切りをつけた話です。  南極からアルゼンチンに戻ってきたその日に、どうしても記録に残したく記憶を総動員して書いていたら約2万字という学部の卒論レベルの文字数に達しました。多くのどうでもいいことは自分のために書いていますので、写真を中心にご笑覧ください。 ◇ 「宇宙よりも遠い場所」は、果てしなく遠かった。 南極への道のり。

もう一度だけ泣き喚きたい。

感情がやけに落ち着いている。理由は明白だ。きっと何も波風を立てるような出来事がないからだ。誰とも会わず、何の冒険もせず、ただ日々の生活をこなし、暮らしている。 本当は日常なんてどこかに行ってしまっているはずなのに、不謹慎にも、なぜかいつもより心が安定している自分がいる。 とはいっても、自分でいうことではないが、僕は比較的普段から情緒が整っているほうの人間だと思う。あまり怒ったり泣いたりを頻繁にするタイプではないし、嫌なことがあっても結構シンとしている。それは、決して怒鳴った