【生物基礎】高校生物で活かせる「消化」と「栄養素」【授業実践備忘録】

高校で生物の授業を務めて10数年。
ヒトのからだについて扱う単元「体内環境と恒常性」においてずっと引っかかっていたことがある。
血液循環、呼吸、排出は中学校より引き継がれているものの、消化の単元に触れられていない
消化といえば小中学校の理科の単元ではおなじみ。
まあ、高校で生物基礎を学ぶ際は、小中学校で消化のことは完璧に理解していることを前提にしているのだろう。
実際、ヒトの消化は中学2年の理科で扱っているので、仮に高校1年で生物基礎を学ぶにしても、知識は抜けてしまっていることが多いのが現実。
しかし、消化については生物の多くの単元に絡んでいるので、触れておかねばならないのでは?
ということで、私が高校の生物基礎の授業で消化についてどのように扱っているかをダラダラとご紹介。


栄養素

理科だけでなく家庭科でも、栄養素については中学校の段階で学んでいる。
とりあえず三大栄養素の消化と役割はこんな感じで学んでいるのではないだろうか。

  1. 炭水化物
    消化するとブドウ糖(グルコース)になり、エネルギー源となる。

  2. 脂質
    消化すると脂肪酸とモノグリセリドとなり、エネルギー源&からだをつくる材料となる。

  3. タンパク質
    消化するとアミノ酸となり、エネルギー源&からだをつくる材料となる。

代謝とエネルギー

高校生物では、グルコースの代謝により細胞でATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーの塊をつくる過程が扱われている。
ただ、細胞に吸収されるグルコースは、食物に含まれている炭水化物の消化産物である。
ということで、炭水化物がエネルギー源となることと繋がってくる。

タンパク質合成

タンパク質の合成は、遺伝情報が発現して生じる具体的な"成果物"といってもよいだろう。
恥ずかしながら私自身、教員になってから、遺伝情報とタンパク質の合成を学ぶ意義がようやく理解できるようになった。
こういったこともあってか、高校生にとっては生物基礎の中でも一番理解しづらいと思う単元だと思う。

それでも「食物からタンパク質を摂取し、どうやって自分のからだをつくっているか?」という言葉を生徒に投げかけると、とっつきやすく思えたようで。
(特に筋肉やプロテイン摂取を気にする運動部の生徒の反応が意外と良かった)
吸収されたアミノ酸が結びついてタンパク質をつくるときにはDNAが司令塔となる。
それで筋肉、血液、髪の毛、酵素など、自分のからだをつくっているのである。
家庭科ではタンパク質=「血や肉になる」と学んできているようだけど、こういう繋がりを意識するととっつきやすい。

生態系

生物基礎では生態系の単元の中で、食物連鎖や炭素と窒素の循環が扱われる。
食物連鎖の中で、捕食者にとって被食者は「生物」であると同時に「栄養分の塊」といってもよい。
その「栄養分の塊」というのが炭水化物・脂質・タンパク質といった栄養素である。
これら全ての栄養素には炭素が含まれ、しかもタンパク質には窒素が含まれている。
ということは、生態系の単元でも消化の概念が関わっているということになる。

とりあえず一息

とまあ、こんな感じで綴ってみたけれども、生物基礎の学習において、消化や栄養素の概念を活用することは、授業内容が生徒にとって身近なものにできる。
突き詰めればきりがないけど、生物にとって一番身近な"食べる"ことを他の単元でも結びつければ、興味づけと深い学びが同時に成り立つのではないか。
とりあえず皆様に私の授業実践の一例のご紹介まで。

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