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くまモンに学ぶ仕事の流儀

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くまモンの快進撃を紐解いていくと、その誕生から今に至るまで、ありとあらゆるビジネスのヒントが隠されている。
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くまモン、キャラクターを超えて概念になる

かつて、勢いに任せて「くまモンに学ぶ仕事の流儀」を書き殴ってから早4年。 我ながらよくこんなに書いたものだと思うけど、あれからもくまモンへの愛は衰えていません。ただ、おかげさまで仕事が忙しくなったり、他にもハマるものができたりしているうちに、相対的にくまモンにかける時間は減っている気がします。振り返ると、どちらかというと自分が精神的に不安定な頃にくまモンへの偏愛(偏執)が高まる傾向にあるので、もしかすると近年は精神的に穏やかに過ごせているのかも。 前職の会社が、熊本市にホ

ゆるキャラの教科書(1)基本編

以前ほどのブームではなくなったとはいえ、2018年末のゆるキャラグランプリでは、ご当地部門だけでもエントリー数507体。平均すると、各都道府県10体以上がエントリーしていたことになります。くまモンがプロフェッショナルで特集されたり、「にゃんごすたー」や「ちぃたん☆」などが話題になるなど、まだまだゆるキャラに期待を寄せる人達は存在しているんじゃないかな、と感じます。 ただ、これまでにすでに数多くのゆるキャラがこの世に生み出され、時に税金の無駄使いと罵倒されたり、子供達に蹴

くまモンに学ぶ仕事の流儀  はじめに

昨日のNHKプロフェッショナル仕事の流儀は、なんと「地方公務員くまモン」。 人間以外が取り上げられるのははじめてだそうで NHKふざけてる?と思った人も多かったとおもいますが、そんな人も放送をみて納得したはず。 そう、くまモンは、間違いなくプロフィッショナルなのです。 私は、熊本県に縁もゆかりもないくせに、くまモンを追いかけ続けて7年。 毎日のようにYoutubeを見て、関連著書もだいたい読んだし、もちろん熊本にも行きました。 なぜそんなにハマったのか、はどうでもいい、とい

くまモンに学ぶ仕事の流儀(1)熊本県の危機感、それがすべて

第1章 誕生まで その1 熊本県の危機感 それがすべて くまモン誕生のきっかけは、2011年の九州新幹線の全線開業計画です。 福岡県の博多駅から熊本県の新八代駅間が開通することで、本州から鹿児島までを貫く九州新幹線が完成することになるのですが、 熊本県はこのことを「危機」と感じました。 九州の中でも人気の高い福岡と鹿児島が結ばれることで、間に挟まれた熊本県は「通過点」にされてしまうと考えたのです。 一般的に、自分の県の交通アクセスが良くなることは追い風です。 だからこそ

くまモンに学ぶ仕事の流儀(2)期待値を超えて本質を突く

第1章 誕生まで その2 水野学の仕事術〜くまモンは実はオマケだった 前回、熊本県が九州新幹線全線開通に危機を感じたことがすべての始まり...とは書いたのですが、これだけではまだくまモンは誕生しません。 熊本をPRしなければと考えた熊本県は、熊本出身の放送作家小山薫堂氏に相談。 小山薫堂のアドバイスによって、熊本の知られざるいいものやいい場所を発見し紹介していくキャンペーン「くまもとサプライズ」が企画されます。 そのロゴデザインを依頼されたのがクリエイティブディレクタ

くまモンに学ぶ仕事の流儀(3)魂は細部に宿る

第1章 誕生まで その3 デザインのチカラ 魂は細部に宿る ロゴのオマケで生まれたくまモン。 だからといって、けして雑に生み出されたわけではありません。 それどころか、キャラクターとしてのあらゆる要素において緻密にできています。 まず、デザイナーの水野学氏は、くまモンを制作した際、顔のどこかに赤い丸があるキャラクターが成功する(●ンパンマンしかり、●カチュウしかり)という方程式を意識した、とインタビューで語っています。 そして、おおよそのデザインを決定したところで、プロト

くまモンに学ぶ仕事の流儀(4)ターゲットを定める

第2章 拡散まで その1 大阪で活動すること〜狙いを定める そんなこんなで誕生したくまモンは、2010年に活動を開始します。 最初に活動のメインにしたのは大阪でした。 当時のくまモンの使命は、九州新幹線全線開業のPRだったので、(熊本県全体のPRキャラクターになったのは2011年)主な集客源となるのはたしかに大阪なのですが、とはいえ、活動の拠点を他の都道府県に置く例はあまりないのではないでしょうか。 たいていはPRキャラクターと言いながら地元のイベントに顔を出したり、パンフ

くまモンに学ぶ仕事の流儀(5)東日本大震災

第2章 拡散まで その2 東日本大震災 今回は仕事の流儀という話題でもないのですが、 こんなこともあったんだよ、という話です。 くまモンの誕生日は3月12日と設定されています。(年は設定なし) なぜなら、九州新幹線全線開通が2011年3月12日だったからです。 2011年3月12日 ん?と思った人はいますか?そうあの東日本大震災の翌日なのです。 九州新幹線全線開通は、2011年3月12日に予定されていました。 その日は、関西や九州を中心に華々しいセレモニーが予定さ

くまモンに学ぶ仕事の流儀(6)勇気をもってアップデートする

第2章 拡散まで その3 勇気をもってアップデートする くまモンが好き、という人の中には、イラストのくまモンにはそれほど興味はないが着ぐるみになった姿が大好き、という人も多いと思います。 もふもふの感触や、絶妙なぽっちゃり体型、やんちゃな動きやキレのあるダンス、そして見る角度によって表情が違う(ように見える)立体的な顔など。 ただ、そんなくまモンには、実は、今の姿になるまでに2回のアップデートをした歴史があります。 デビュー時は、ファンの間では「黒歴史」と呼ばれるか

くまモンに学ぶ仕事の流儀(7)草の根もぬかりなく

第2章 拡散まで その4 草の根もぬかりなく〜twitter活用術 くまモンに限らず、いわゆる「ゆるキャラ」の活動の中でも重要なのがSNSです。 多くのキャラクターやその関係者がtwitter、insta、facebookと発信していますが そのなかで、くまモンほどぬかりなく活用しているキャラクターはいません。 くまモン関係のアカウントのうち、特に人気なのがくまモン自身が呟くtwitterで、現在フォロワーは80万超(2019年1月時点)。キャラクター自身が呟くアカ

くまモンに学ぶ仕事の流儀(8)足元のブランディング

第2章 拡散まで その5 足元のブランディング〜くまモン◯くまもん× twitterをバリバリ活用しているくまモンですが、高いクオリティを維持し続けている裏には、くまモンという存在をしっかりと確固たるものにしよう、言い換えれば、くまモンという商品をブランド化しよう、という意気込みを感じます。 それを象徴する行動をひとつご紹介。 くまモンはtwitterで頻繁に更新をするので、毎日のように一般のファンから応援コメントが届きます。その中には、くまモンを「くまもん」や「ク

くまモンに学ぶ仕事の流儀(9)コラボの裏にあるもの

第3章 快進撃 その1 コラボの背景に見える公務員の知性 地道な努力を重ねながら着々と認知度を拡大し続けるくまモン。 その快進撃を語る上で、必ず紹介されるのは数多くの有名企業とのコラボです。 国内は言うに及ばず、海外でも ・バカラ(フランス) ・ライカ(ドイツ) ・シュタイフ(ドイツ) ・MINI(ドイツ) ・DE ROSA(イタリア) ・ロクシタン(フランス) などなど、名だたるビッグネームとのコラボを実現させています。 国を代表する企業が、海外のいち都道府県(東京

くまモンに学ぶ仕事の流儀(10)ストーリー=物語をのせる

第3章 快進撃 その2 必ずストーリーをもたせる 第2章で紹介したtwitter活用術やブランディングに関しては、地道にコツコツと築き上げていった部分を紹介しましたが、くまモンの仕掛けのなかには、用意周到に準備をし、鮮やかに話題をさらったみせたものもあります。起点から着地まで、最も鮮やかだったものをご紹介します。 2013年10月末、熊本県知事が記者会見で「くまモンが赤いほっぺを無くしてしまった。皆さん探してください。」と呼びかけました。 実際に、その時から全国各地に

くまモンに学ぶ仕事の流儀(11)ストーリー=起承転結をのせる

第3章 快進撃 その3 ストーリーの話をもうひとつ 鮮やかに着地を決めたとご紹介した2013年の 『赤いけん!ウマいけん!くまもと』キャンペーンですが、 翌2014年の仕掛けも負けずに見事だったのでご紹介します。 この時は、「赤い食べ物」は健康にいい、という点を訴求するためにメタボ疑惑のあるくまモンのダイエット企画が行われました。 タニタ食堂とコラボして「くまもとの赤フェア」を実施したり Adidasに特注ジャージをつくってもらったり 雑誌「Tarzan」の表紙になっ