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【2023年7月〜9月】読んだ本感想

1-3月     4-6月

この3ヶ月は合計11冊読みました。
年初は鬱小説ばかり読んでいたものの、今は青春小説ばかり読んでいます。半年でこんなに好みが変わるのか…。
それもこれも『成瀬は天下を取りにいく』から始まり、『一瞬の風になれ』で完全に青春小説の魅力を感じ、虜になった気がします。
青春小説ってそこまで興味なかったものの、この2作でぐっと引き込まれました。特に後者の影響で、ランニングも始めました。最高。




『一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-』
『一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-』
『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』著:佐藤 多佳子

3冊まとめての感想、もう本当に素晴らしい青春小説だった。
サッカーの才能がずば抜けている兄を持つ主人公の神谷が、サッカーに挫折して陸上を始める話。そして友人の連はその名を知らない人がいないくらいの陸上の実力者だけど、途中で止めてしまって…。

そんな2人が同じ高校の同じ陸上部に入り、挫折や悔しさ、嬉しさや苦しさを感じながら陸上に打ち込む、高校3年間の話。
高校生の淡い恋愛、部活に打ち込む姿が美しすぎて。どうしても自分も学生時代、色々なことにあと一歩勇気が出なかったんだろうなあと後悔する悔しさが生まれるけど、でもそれはもう仕方ない。

やはりリレーのシーンが熱すぎる。4人の関係、信頼、そんなものが本番一発の全てにかかってくるプレッシャーとドキドキ感、読む手が止まらなかった。これがまた、1年生から3年生までの物語というのが、リレーに対する見方や先輩・後輩に対する見方が変わっていくので本当に面白い。
あとは、終わり方が本当に素晴らしい。「この先どうなるの? あの人との関係はどうなるの?」と思わず考えてしまうし、その先が知りたくなるけど、でもそのくらいの余韻が抜群に素晴らしい。この小説はここで終わってこそ最高の輝きを放っている。



『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上』『プロジェクト・ヘイル・メアリー 下』著:アンディ・ウィアー

アトロクでときどき絶賛されているのを聞いていたこの作品、気になっていたので読んでみたけど面白かった。
SFものはあまり読まないほうだけど、これは原文と翻訳がいいのか難しそうな理論もスッと入ってきてよかった。

ネタバレになるので何も言えないけど、物凄く壮大な問題を科学の力で1から紐解いていくロマンと、上巻中盤からのある展開、そしてそこからの喜怒哀楽紆余曲折が素晴らしい。
問題解決と問題発生が次々訪れて飽きないし、終盤になっても先が読めない感じは読み進める気持ちがどんどん増していく面白さ。

何より、最後のエピローグ的な部分の見事さ。こうまとめるかと唸ってしまう良さがあった。
全体を通して名作。面白かった。



『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』著:加藤 直樹

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』でRhymesterの宇多丸さんが話していて、非常に論理的で熱を感じたので、気になって購入。関東大震災後におきた朝鮮人虐殺に関する様々な証言や記録をもとにまとめられた本。

宇多丸さんは毎年9月初めにこのお話をされていて、「教科書にも載っていて……」と話されているんだけど、恥ずかしながら自分はほぼ知識が無く。
100年前にどれほど凄惨なことが行われていたのか、正直それは自分の想像力を超えたものだった。その事実は、この本を読みダイレクトに伝わった…というよりも、もはやあまりに恐ろしくフィクションのようにも感じられた。ただし、様々な記録で確かに虐殺がこの日本であったことを感じるとともに、確かに似たような、デマに煽られて誰かを叩くというのはこのネット社会で変わらず起こっていることから、少しこの社会が怖くなった。

少なくとも自分はデマや流言飛語に惑わされず、確かな情報で判断するとともに、確かな倫理観を常にアップデートして養い続けないといけないなと思った。



『この夏の星を見る』著:辻村 深月

夜空を見上げる学生達という表紙が目を引いて、本屋で購入。『傲慢と善良』を書かれた辻村深月さんの作品ということで、やはりとても読みやすい。茨城、東京、長崎の中高生が、コロナでろくに動けない葛藤の中、天文活動で繋がっていき、コンテストを開き…という物語。とにかく距離の描き方が上手い。というか、離れていても心の距離が近づいていく感じと、離れてもずっと繋がっているという感じが繊細に伝わった。特に、オンラインでの打ち合わせを駆使して心を通わせていく様は凄いリアル。

そして中盤で感じるのは、「どんなことでもやっていい」ということ。コロナの時期に天体観測なんてやってもいいのか、という疑問に対して、意味のあることをやるだけが全てではない、正解ではない、意味があるかはわからなくても、やりたいことに熱中してもいいということを実感させてくれる。

後半に行くほど盛り上がる物語には泣きそうになった。星や星座には全然興味なかったけど、そこへのロマンも感じられる名作。素晴らしい青春小説。



『風が強く吹いている』著:三浦しをん

大学の駅伝を舞台とした青春小説。
メンバー集めからレースまで、話は熱いんだけど、いかんせん登場人物が多くてついていくのが少し大変だった。しかしまあやっぱりレース場面はどうしても熱くなっちゃう。最後は泣ける。

正月の駅伝はこの本を読むまで微塵も興味が無かったし、今までテレビで放映されていてもすぐにチャンネルを変えていたけど、この本を読んで、駅伝の何がどう面白いのか、どんな苦労を選手の方々はしているのかが理解できた。次の駅伝は注意して見てみたい。



『あと少し、もう少し』著:瀬尾まいこ

中学駅伝をテーマとした小説。大学駅伝より短距離・少人数なのでわかりやすかった。これは確かに陸上ものであるんだけど、それ以上に中学生の気持ちの描写が素晴らしくて、小学生でも高校生以上でもこういった思考と行動は起こさないなという絶妙な表現が好きだった。年齢を重ねて段々標準化していく子供たちの、成長途中の物語が、個性豊かに描かれていて良かった。

当然レースも描写されるんだけど、構成として一番最後にまとめてレースではなくて、章ごとに分かれた登場人物それぞれの物語の最後に、区間ごとのレース描写があるという形になっている。これが、物語と同時にタスキが渡っていくような感覚になり、次の話がどんどん読みたくなっていったし、それぞれの人物の背景や経緯がわかってレース描写だから、グッとくるものがった。



『かがみの孤城』著:辻村 深月

『傲慢と善良』『この夏の星を見る』を読み、すっかり辻村深月さんのファンになったので、ベストセラー作品を購入。
不登校の主人公・こころが鏡の中の世界にある城に入れるようになり、その城のどこかにある鍵を見つけるとなんでも願いを叶えてもらえることを知り、出会った同年代の学生達と交流していき…という話。

やはり辻村深月さん、非常に読みやすい。物語としてドラマチックな紆余曲折が次々起こるというわけではないけど、地味な心理描写が的確で「あーこういう気持ち、風潮、行動、学生のときにあったなあ」と思い起こされた。
物語の仕掛けは気づけたけど、ただ最後の演出は唸ったなあ。そこまでは予想できなかった。
アニメ映画化もされて見てみたけど、やっぱり小説のほうが好きかなー!



『怖い患者』:久坂部 羊

勧められて読んだ本。医療・福祉の世界を舞台に、怖い患者、怖い医者などの物語で形成される短編集。怖いというのは怒るとかそういうことではなくて、思考が常人のそれとは違いぶっ飛んでしまっているもの。5編の短編全て、それぞれの主人公の一人称で物語が進むというのが良く、読みやすいうえに思考がダイレクトに伝わるので物語に引き込まれる。特に、不安な気持ちやその気持ちが膨らみ爆発するような流れが読んでいて苦しい。オチは強いような弱いようなと思える感じだし、決して後味は良くないし、ご飯を食べながら読んだら味がわからなくなるような気持ちになるものの、ついつい読み進めてしまうなんとも不思議な魅力の本だった。



終わりに

特に、これから発売されるあの本が楽しみ! というように調べたりすることは無いんだけど、さすがに『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬さんの新作『歌われなかった海賊へ』は楽しみすぎる。
10月下旬発売ということで、もう間もなく。これは絶対買う。

年末にかけてゲームも忙しくなるからどのくらい読めるかわからないけど、月2冊くらいは読んでいきたいなと思う。

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