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木の話草の話

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ドクダミ

6月の雨
薄暗い昼間
世界の底に咲く
ドクダミを見つけた

花の白さと
葉の緑さが
雨に濡れて
美しかった

今ここに
咲いているドクダミを
知っているのが
自分だけだと思うと
うれしかった

耳をすませれば
雨の音

ドクダミも吾も水無月雨の底

栗の花

横断歩道を渡ったとこで
栗の花の香りがした
夜の家路

あたりを見回したけど
夜のせいもあって
香りの出所まではわからない

風に運ばれてきた香りで
花の存在を知る
そういうのも
アリだと思う

栗の花の香りは
男性の性液の
匂いに似ている
と言うけれど
変に意識したことはない

栗の花の香りが
カレンダーの向こう側に
行ってしまえば
季節は梅雨の頃

ジャスミンとヘビ道

ハゴロモジャスミンの
妖しくも甘い香りが
夜の通りに
わだかまっている

商店と住宅が
混じりはじめる
ヘビ道に
ハゴロモジャスミンの垣根のある
一戸建てがあって

その花の香りは
昼となく夜となく
この通りに
漂っている

特に夜は
香りが
強く感じるように思う

多分
夜道は
視覚が制限される分
嗅覚が
敏感になるんだと思う

ヘビ道とは
小川や用水路を
暗渠にして作った道

くねくねと
曲が

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藤の花

藤の花は
意外と早く
しおれてしまう

咲きそろって
すぐに
上端から
しおれてくる

儚い

儚い夢のように
色あせゆく
藤の花を
見ていると

春がゆくのを感じる

パパイヤは雑草

街路樹にヤシの木
生け垣にハイビスカス
庭木にバナナ
雑草のようにパパイヤが茂る

そんな島に
住んでいたことがある

パパイヤが
そこらじゅうに生えてるのを
最初に見たときは
正直ビックリした

子供の時に読んだ童話では

庭には果物の実る木が
たくさん植えてあり
毎朝いろいろなフルーツが
食卓にならぶのでした

なんてのがあったけど
まさか現実に
そんな島があるなんて!

引っ越した初日に

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待ってよ、春

頼んでもいないのに春が来る
気がつくとそこにいて
さも当然なような顔をしている
憎たらしい


出会いと別れの同居する
何とも落ち着かない季節
嫌いだ

通学路の途中の垣根に
白いマンサクの花が咲き始めると
春がやってきたんだと
あきらめる

別れがあるから
新しい出会いがあるんだよ
なんて
無責任に言わないでほしい
別れのない
新しい出会いだってあるハズ

立ち止まっていたい私と
立ち止まって

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マンサク咲けば

垣根に植えてある
マンサクが
花を咲かせた

女子高生が
お喋りするみたいに
一斉に白い花が咲くので
心がウキウキしだす

マンサクが咲けば
ソメイヨシノも
咲き始める

レンギョウ
ハコベ
タンポポ
カラスノエンドウ

花が
競うように
陽の光を浴びて
春を味わっている

ツクシ
菜の花
ノビル

春を味わうのは
花だけではない

食卓には
春の味が
並びだす

タケノコ
ワカメ
春子鯛

春の

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桜、満開、肩車

桜の花が年々色あせていく

と母は言った

桜も歳を取るのかね?

母は
満開の桜を見上げ
小さく笑った

母の付添の病院帰り
川沿いの桜並木

母は背中も丸まって
小さくなってしまった

二人で見る桜も
両手で数えるほどの年になった

小さい頃、父さんがあんたを肩車してね…

桜を見るたびに
母はその話をする

父も母もまだ若く
私も幼く
桜の花も鮮やかだった

その桜の木の下で
父は私を肩車し

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銀杏が金に光る頃

夜の銀杏
木の向こう側に
ちょうど良い感じに
街灯があって
ここからみると
金色に
光り輝いて見える

そんな夜の冬

風は骨身にしみるほど冷たい

銀杏を見る

暗い夜の風に
金色の葉が
揺れている

揺れているのは
銀杏の葉なのか
風なのか
心なのか

すでに散り落ちた葉が
足元で
遊ぶ

銀の花

昨日と今日の間の夜
風が北風に変わった
街は一気に冷え
その空気の中で
銀色の花が咲いた

地面に落ち葉が増えた
今年も街に冬が来た
桜の木も
銀杏の木も
冬を感じている

枇杷の木は
冬になると
花を咲かせる

銀色の花

小さな花に
気づく人は少ない

そんな花が好き

誰かに知られることもなく
冬にひっそりと咲く
小さな銀の花

赤い葉

満天星と書くらしい

庭木などで植えられている
ドウダンツツジのことだ

灯台躑躅ツツジという漢字がおどろおどろしい

もう真っ赤に色付いている
小さな葉の集合体

毎年見ているのだが
その葉の赤さに

はっと気付かされる冬

秋深く

いつの間にか
ハナミズキの葉も
赤く色づき
季節は刻一刻と
冬に近づく
ついこの前まで
夏だと思っていたのに
晩秋

体も気づいているらしく
ご飯が美味しい
きっと細胞ひとつひとつが
脂肪を欲しがって
いるのだろう

天高く我肥ゆる秋昼はそれほどでもないが
日が暮れると
気温はぐんと低くなり
見上げる月の光も
心なしか冷たい
夏の月も
秋の月も
同じ光な筈だけれど

寒くなったからなのか
月の光に

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オースカシーバーの午後

12号棟の公園の
植え込みのアベリアには
オースカシーバーが
二三羽飛んでいて
ホバリングをしながら
花の蜜を吸っていた

子供の頃
公園のブランコで遊んだり
オースカシーバーを
虫採り網で捕まえたりした

オースカシーバーという名前が
トランシーバーと響きが似ていて
カッコイイな
と子供心に感じていた

その虫が
オオスカシバ(大透翅)という名で
スズメガの仲間だと
知ったのは
もっとずっと後に

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雨の金木犀

雨が降っている
冷たい冷たい雨
雨の中
金木犀の花が散る垣根
オレンジ色の絨毯
その香りで
世界を包み込むこともなく
散っていった数多の命
その絨毯の上を歩く
足裏に感じる軽い罪悪感

秋の冷たい雨に散る
金木犀の花
去年も一昨年も
同じような
景色を見た気がする

散るために咲く花
花だって
香ることなく
散るとは
露ほどにも思わず
咲いてきたのだろう

風は北寄り
雨は明日も振り続ける

金木

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