壱橋零菜

*連載小説「春に成る」、毎週土曜日更新予定* 物語、詩などの創作を掲載したり、ハーバリ…

壱橋零菜

*連載小説「春に成る」、毎週土曜日更新予定* 物語、詩などの創作を掲載したり、ハーバリウムやアート作品などのハンドメイド商品を展示・販売をしています。 つくり出すものは、周りの方々から教えていただいたこと、支えてもらった言葉、感謝の気持ちなどを含めて表現しています。

マガジン

  • 【小説】春に成る

    * 毎週土曜更新予定 * 絵・詩で表現した物語の小説版です。どれかだけでも、全部繋げて見ていただいても構いませんので、楽しんでいただけたら幸いです。

  • 作品展示

    ハーバリウムやアート作品など、つくったものを掲載していきます。【作品販売】と記載しているものは、販売中のものになります。(申し訳ありませんが、購入のタイミングによって、販売が終了してしまっている場合もあります)

  • ***precious to me***

    かけがえのない経験・体験、大切な繋がりなど、私にとっての宝物置き場です。

  • 絵で読む物語

    絵と詩で物語を表現しています。 そこからイメージした見てくださった貴方だけの物語。 文章での物語も別で掲載していきますが、それぞれ楽しんでいただけたら幸いです。

  • 【ご案内】

    ようこそ、お立ち寄りくださいました! こちらのnoteの説明などをさせていただきます。

最近の記事

【連載小説⑪‐2】 春に成る/サンドイッチ

※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ サンドイッチ(2) 「姉ちゃん、今日も休んだの?」 「そうなの、ご飯もほとんど食べないし。ほんと、どうしちゃったのかしら。那津、アンタ何か知ってる?」 「いや……」 あれから、どのくらい時間が経ったのか、そんなことはどうでも良かった。どうしてマスターが? 代われるものなら代わりたい。マスターがいなくなる? 嫌、嫌、嫌、そんなの無理。いなくなってしまうなら、もう私は踏ん張れない。私も消えてなくなりたい。 浮かぶのは、悲しそうな

    • 【連載小説⑪‐1】 春に成る/サンドイッチ

      ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ サンドイッチ(1) 「なんかね、今日、敬が変なんだよね」 こっそり話し掛けると流果も小声で返す。 「変? 何かあった?」 「何してても上の空っていうか……さり気なく聞いてみたんだけど、話してもらえなかったんだよね。だから、流果になら話してくれるかなって」 「うーん、分からないけど、僕からも聞いてみるね」 店内には、まだお客さんは流果だけ。空気を変えるように、パチンと手を叩いた。 「敬、流果、前に言ってた軽食の試作品、作っ

      • 【作品展示・詩】 優しい夜

        今回ご紹介させていただくのも、前回のように感謝の気持ちを形にして、知り合いの方へプレゼントしたものです。 作品に詩を添えて、ご紹介させていただきます。 お時間ある時に、見ていただけたら幸いです(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 【優しい夜】 夜が来る 疲れた、寂しい、怖い 後ろ向きに進む 夜が来た 温か、穏やか、緩む 見上げて立ち止まる 朝が来る 眠たい、始まる、待って くるまって、抵抗 朝が来た 新たに、始まる、今日 止まれたから、前へ 始まる前の不安に寄り添う 始まってから

        • 【連載小説⑩‐4】 春に成る/ビーフシチュー

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ ビーフシチュー(4) いつもは、様子を窺っている音楽が、今日は主役であるかのように流れていた。隣でずっと黙ったままの流果を、気にしながらも、結局何もできなかった私が、なんて言って良いか分からず、むしろ女の私が入って来て嫌だったかもと思いながら、この状況でさっきの質問をする勇気もなく、敬が手当てしてくれた手の包帯を見つめていた。 「何もできねぇくせに間に入るな! ああいう時は人を呼べ!」 怒りながら、手当てする手は優しい。この言葉

        【連載小説⑪‐2】 春に成る/サンドイッチ

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        • 【小説】春に成る
          30本
        • 作品展示
          4本
        • ***precious to me***
          2本
        • 絵で読む物語
          22本
        • 【ご案内】
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        記事

          【作品展示・詩】試練

          以前、ハーバリウムを販売させて頂き、素敵な繋がりから、たくさん学ばせていただきました。 今も販売準備中ですが、今回ご紹介させていただくのは、感謝の気持ちを形にして、知り合いの方へプレゼントしたものです。 作品に詩を添えて、ご紹介させていただきます。今後も販売したものも、贈ったものも、noteに残していこうと思います。 お時間ある時に、見ていただけたら幸いです(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 【試練】 それは必然 重なった時、聞いた音、見えたもの そんな偶然 重なった時、思い

          【作品展示・詩】試練

          【連載小説⑩‐3】 春に成る/ビーフシチュー

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ ビーフシチュー(3) 「何だと? いい気になりやがって!」 「流果!」 慌てて間に入って、男性を少し離す。 「あの……」 「うるせぇ!」 いとも簡単に振り払われて、コンクリートの上に転がった。どうしよう、どうしよう、咄嗟についた手が熱を持ち、心臓の音が頭に響く。力じゃ敵わない、怖い! 記憶の中の流果が笑顔で『ハル』と呼ぶ。 ダメ、このままじゃ流果が! 慌てて起き上がると、驚いたような表情で私を見ている流果と、流果を今に

          【連載小説⑩‐3】 春に成る/ビーフシチュー

          【作品公開】はじめました。

          いつもと変わらない日々なのに、だいぶ桜の木が柔らかい色に染まって、なんだかワクワクしてきます。 そんな気分に後押しされて、XとInstagramで今まで作成したものも含め作品公開専用のアカウントを作成しました。 それぞれのコンセプトがありますので、お時間ある方は読んでいただき、もしよろしければ覗きに来ていただけたら幸いです。 【X】…気軽に見れる作品倉庫と情報提供 noteほど詳細ではないけれど、早く気軽な気持ちで見ていただけるように。長文を読むのが苦手な方もいらっし

          【作品公開】はじめました。

          【連載小説⑩‐2】 春に成る/ビーフシチュー

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ ビーフシチュー(2) 「流果、大丈夫かな。ごめん、何もできなくて……」 敬は野菜を切りながら、淡々と答える。 「ああいうのは女が出てくと、余計面倒臭くなるだろ」 「でも、流果まで追い出す方法しかなかったのかなって……」 「……アイツ、いつもなんだよ」 「え? いつも追い出されてるの?」 「ちげぇよ、追い出した事はない……聞いてるかもしんねぇけど、流果の親、早くに離婚して、情緒不安定な母親と暮らして……散々酷い扱い受けて、

          【連載小説⑩‐2】 春に成る/ビーフシチュー

          【連載小説⑩‐1】 春に成る/ビーフシチュー

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ ビーフシチュー(1) 「見過ぎだろ」 「だって、私達が考えたものが、実際商品になってるんだよ。何度も見るでしょ」 レジ横に、ちょこんと並んでいる、切手型のドリップ珈琲。流果の手によって、あの時想像したものより、何百倍も素敵になった。 「昨日だっけ? それに気づいたバーのお客さんに、めっちゃ宣伝して、買ってもらってたよね?」 コロコロと笑うのは、いつもの流果。あの雨の日、敬と一緒にどこかへ行ってしまったけど、次にあった時は、何

          【連載小説⑩‐1】 春に成る/ビーフシチュー

          まだ見切り発車状態ですが、ハーバリウムなどの作品掲載アカウントをつくりました。noteにも作品は載せていく予定です。よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” X⬇️ https://x.com/onart01info/status/1768617485094568055?s=46&t=R1g20k73qgszPaJ9fJF8Tg Instagram⬇️ https://www.instagram.com/on_art01?igsh=MTJwanZqYzgxZDdsaA%3D%3D&utm_source=qr

          まだ見切り発車状態ですが、ハーバリウムなどの作品掲載アカウントをつくりました。noteにも作品は載せていく予定です。よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” X⬇️ https://x.com/onart01info/status/1768617485094568055?s=46&t=R1g20k73qgszPaJ9fJF8Tg Instagram⬇️ https://www.instagram.com/on_art01?igsh=MTJwanZqYzgxZDdsaA%3D%3D&utm_source=qr

          【連載小説⑨‐6】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ オムライス(6) ベンチに座ってから、ずっと黙ったまま、どこか悲しく、苦しそうに、降りしきる雨を眺めている流果。 思わず、背中に手を当てて、さする。 「……何?」 冷たく、温度のない目と音は、流果じゃないみたいで、慌てて手を離す。いきなり触って嫌な気持ちにさせたのかもしれない。 「あ……ごめん。なんか、ちょっと苦しそうに見えて……。あの、小さい頃におじいちゃんが入院しててね、お見舞いに行っても、何もできなくて悲しいって思って

          【連載小説⑨‐6】 春に成る/オムライス

          【連載小説⑨‐5】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ オムライス(5) 「え、何? 切手?」 「そう、ドリップ珈琲買う人って、美味しい珈琲を、家族に、友達に、自分に届けたいんだと思うの! 贈りたくて、送りたいから切手。レトロな感じもするし……」 「うん、うん、ハル、一回珈琲飲もっか」 促されて、珈琲で気持ちを落ち着かせる。硬くなっていた体が、緩む。 「ごめんね、なんか、すごい勢いで話しちゃって。ちょっと落ち着いた。珈琲って、本当にリラックス効果あるって改めて実感した。ワインとか

          【連載小説⑨‐5】 春に成る/オムライス

          【連載小説⑨‐4】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ オムライス(4) 「お待たせしました、敬の美味しいオムライスを食べたことのある遥さんに食べてもらうのは、緊張してしまいますね」 イタズラっぽくマスターが笑うと、またベルが鳴り、大学生くらいの真面目そうな男性が来店した。私とは真逆の一番奥のカウンター席に座り、マスターに注文すると、鞄からノートを取り出して勉強モードに突入した。マスターの笑顔みたいに、ホワホワしたタマゴを運ぶと、じわっと、体が温かくなる。 「ん、美味しい……!」

          【連載小説⑨‐4】 春に成る/オムライス

          【連載小説⑨‐3】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ オムライス(3) ノンアルのキールがお店で提供されることが決まり、メニュー用の撮影をした日、流果からドリップ珈琲のパッケージ案の資料をもらった。想像以上に仕上げてもらったことが嬉しくて、敬に自慢するように見せた。 「……これ、親父の店に置くんだよな。店に来る客層と合ってんの? このデザイン」 「え、でも、『ベル』を知らない人にも、知ってもらいたいって想いもあるんだよ。『ベル』には若い女性はあんまりいないから、そういうお客さんも増

          【連載小説⑨‐3】 春に成る/オムライス

          【連載小説⑨‐2】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ オムライス(2) 「け……いらっしゃいませ!」 敬と話しを続けたかったけど、いつものベルの音に遮られた。 「あっれ〜? バイト入れたの?」 雰囲気と同じような、緩やかなパーマがかかったツーブロックヘアの男性が、ゆるゆると入って来た。 「まあな……何する?」 「ん〜、ギムレットかなぁ」 一瞬、敬の時間が止まった気がしたけど、すぐにライムを音も無く綺麗にカットし、優しく絞り始めた。 「あ、俺、瑛二。敬の親友で、店の常連だか

          【連載小説⑨‐2】 春に成る/オムライス

          【連載小説⑨‐1】 春に成る/オムライス

          ※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ 第三章  軽食オムライス(1) 「職場、副業平気か?」 敬から電話が入り、こちらの状況を伺うこともなく、開口一番に淡々と尋ねられる。あれから何度か三人で集まって話し合ったけど、電話がかかってくるのは初めてだ。 「え? 副業? 確か禁止だけど……」 「……禁止か」 瞼が落ちるように、トーンが落ちた。 「お店、忙しいの? お金はもらえないけど時々で良ければ、全然手伝うよ」 少し呆れたような溜息が返ってくる。 「……作ったド

          【連載小説⑨‐1】 春に成る/オムライス