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くちなし書房
2023年5月17日 23:36
*最近元気の在庫もない、製造ラインも止まってるなんて話をお友達としてた。自分じゃどうしようもない悩みが、忘れていただけでずっとあったこと。最近また思い出して、元々自分を許せたわけじゃないけど、やっぱり、自分のことをなんだか許せなくなった。「私ってなんなんだろうね。」ずっとそんな、すぐには答えが出ないような、出さなくてもいいようなことを考えてしまう。でも少しは、気分が良くなっ
2023年3月12日 14:03
もう届かないから、出せてない手紙がある。何時に書いたのかも覚えていない。どうせ届かないんだから、新しく書き換えた。**春になると、あなたを思い出して寂しくなります。桜が咲くから。チューリップが咲くから。暖かいから。あなたを思い出します。あなたと一緒に水族館へ行った帰り、バスを逃して歩いたことも。大きな公園の梅を見に行ったことも。会える日が少なくて寂しかったことも。春に
2023年1月17日 22:43
電車の電子表示が横に流れていくのを、ただ茫然と眺めていた。暗いと言うか、モヤのかかったような、なんともいえない気持ちの渦に飲み込まれていく感覚が、祭囃子の音に慣れていた耳に妙に纏わりつく。最寄駅まではあと8駅。いつもならすぐに着くはずなのに、今日は何故かすごく長く感じる。出所のわからない消失感を何度も噛みながら窓にもたれかかって外を見た。「私は、どこへ行きたかったんだろう。」
2023年1月15日 23:14
ほんの少しのことでも、ほんのわずかな違いでも、違和感を持てば気になって仕方がない。耳に纏わりつく音、花にこびり着く匂い、目に焼きつく目前の光景、砂を噛むような味、虫が歩くような感覚。全てがどこかおかしいのだ。この感覚が、本当に感覚器から伝わってきた信号なのかすらを疑う。偽造された信号が、何か空の方法を使って脳に送られている可能性だって必ずしもないとはいえなさそうじゃないか。聞こえた
2022年12月11日 19:59
*風が冷たい。太陽は暖かい。それでも、なぜか、何かが足りない。少しも違う事はないはずなのに。何かが足りない。風の匂いは懐かしい。一昨年の匂いがする。チョコと温かいコーヒーを思い出す。それに、誰かがいたようなにおいがする。あの時、一緒に居た人は誰なんだろうか。もう思い出すことはない。まだそこに、ずっと、一緒に居るような気がするのに。—コォォォォォォ—お湯を沸かす
2022年10月8日 17:18
ある冬の話。本当の話。私は、病みに病み、じわじわとこの身から精神が離れていくのを知覚しながら、なんでもない一日を、何日も何日も過ごしていた。きっかけは失恋だった。と言うか、失恋を理由にしているだけかもしれない。失恋よりも前に、もっと酷いことがあったのは事実だが、追い討ちを喰らった。私は、一人の人が離れていくだけで、こんなにもボロボロと醜態を晒すような奴であることは、自分でもわかっ
2022年7月18日 18:50
私の住むんでいるところは少し暗く、音もそこまで聞こえない。でも、私たちには言葉がある。とても高い声で、名前を呼び合う、簡単な会話もできる。私たちは息が40秒しか続かないので、時々浮上して呼吸をする。私たちは泳ぐのが得意だしみんなで泳ぐ。最近はふわふわと浮いている白いものを食べて死んでいく仲間が多くなってきた。生ぬるく、あたりが汚れていくのを見ているだけだった。助けを求めても、私たちの声はとどか
2022年7月2日 08:58
季節外れの暑さが続いた5月下旬。この頃の気温の変化に耐えきれず、ぐったりしている猫のいる部屋で、透明なソーダ水がグラスをはじく音がした。涼しげな音と香りが部屋中に漂うこの時間を、猫は幸せだと思うのだろう。いつもは外を眺めては独り言をこぼす猫も、窓際の陰で涼んでいる。窓から部屋に吹き込む風は心地いい。どこか夏のにおいを感じる風だ。まだ夏になってもいないのに、セミの鳴き声が聞こえてきそうな
2022年7月13日 16:21
実体験から書いた小言です。真相はわかりません。少し前に階段から落ちたことがある。連日の疲れや慣れない生活がために落ちてしまったのだと思う。けれど、どこか奇妙なのだ。宙を舞った記憶もなければ、痛みも特に感じていないのに疵(キズ)は残っている。単なる偶然や自分の不注意だろうと思い込んでみるのだが、自分が嫌になって意図的に身を投げたのか、あるいは見えない“何か”に背中を突きはねられたのか