然有琉 湊(さあり みなと)

君と同じように人生に震える僕の心臓を証明できる言葉がここにありますように。 2人なら怖…

然有琉 湊(さあり みなと)

君と同じように人生に震える僕の心臓を証明できる言葉がここにありますように。 2人なら怖くないでしょ?

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春水

チッ、チッ、チッ、 錆びた自転車をひくと、 点きかけのコンロの音がする。 それはいつもの君との帰り道 Y字路に着くまで続いてく。 「また明日」の一言で コンロに火が…

落ちた勇者。

シンクへ落ちたスプーンは ちゃぽんと音を立てて底へ消えていった。 油の浮いた水面は少し鈍い音だった。 1度落ちたスプーンは もはや何かを掬うものではなくて 誰かに掬…

君と付き合いたいがために。

君と付き合いたいがために 生まれた嘘1つ。 僕はすごいんだぞって嘘。 1人、2人、3人 その嘘を信じてる人が増えていって とても1つの嘘のもつ重みじゃなくなった。 …

明かりはつけないで、

照らせば分かることばかりじゃなくて 暗闇で光るものだってあるのに 照らしたらむしろ消えてしまうのに なんで全部明るみにさらそうとするの? 然有琉 湊(さあり みなと…

七日間戦争

蝉時雨の切れ端は幾重にも重なって ひとつの線を描いて ひと夏の思い出に命の重みをのせた。 坊主たちの戦いのサイレンも 心臓の計りの悲痛な音も それを真似た。 ある夏…

たまらなく不安なんだ。

「頑張れよ」って意味の大好きな作品の名言が怠惰な僕を突き上げる。 ”痛いよ。” ”その名言。” ”なんだよ。好きなのに僕を不安にさせるのか。” ”まあいいよ。” …

ミ・ソ・ソ・レ

ミ・ソ・ソ・レ 聞こえる? 雪とも違う 雨とも違う まばらなのにどこか規則的で 明るさのもとでは優しくて 暗がりだともっと優しい。 しとっつ。でも ふぁさっ。でもない…

【メンバーシップ限定記事】今日何ができたんだ。

夜20時45分。 いつも僕はこの時間にPCを立ち上げる。 いつも通りの配信告知といつも通りのマイクテスト。

芸術家になりたいすべての人へ。

あなたが何かを考えて答えを出そうとしている時点で芸術家であるように思う。 まだ、作品を作ったことがない人は、単に慎重に作品の構想を練っているだけだと思う。 逆に、…

世界の中心だと思ってた。

夏休み。 蝉がうるさいなんて情緒は捨てて 今日も遊んでる。 あぢーー 暑すぎね? アイスの棒を加えて君が言う。 それなーー 夏は涼しかったら最高なのによ。 アイスス…

宝石[意思]

輝く人は宝石を持っている。 それは、原石を磨けば、みんな宝石みたいに輝けるというような気休めではなくて、 宝石がもつ、鋭さと丸みが見えるという意味。 ダイヤモン…

24日 p.m.8:17

横断歩道を自転車が横切る。 吐く息で冬の寒さを口に纏って 赤いアウターの人が横切る。 買い出しだろうか。 荷物かごから 牛乳パックの頭やら野菜の葉っぱがはみ出して…

黄色い線上を渡り歩く。

その映画の主人公は 愛ゆえに愛する者と引き換えに世界を犠牲にした。 そんな映画を見ている僕らも犠牲にしたんだろうか。 じゃあ この世界を作った何者かは 愛する者がい…

耳に揺れる雪の晶

君に雪の結晶のイアリングをあげた。 春が来る前にそれは溶けた。 然有琉 湊(さあり みなと)

後の祭りすら来ない。

雨を受け流して自転車を曳いた。 境内をひたすらに、 階段の下に自転車は置き去って 何度も繰り返した妄想を何度もかみながら 階段を鳴らした。 ここで告白するつもりだ…

終わった次の日。

今日は向こう側までよく見える。 電車の最後尾、車掌室前。 誰もいないから、先頭の窓の向こうまでよく見える。 昨日までの満員が嘘みたいだ。 車掌は襟を正して頭を下…

春水

チッ、チッ、チッ、
錆びた自転車をひくと、
点きかけのコンロの音がする。

それはいつもの君との帰り道
Y字路に着くまで続いてく。

「また明日」の一言で
コンロに火がついて
蒸気機関のように回りだす。

ああ、今日も言えなかったって
明日は言おうって
デートに誘おうって
君を好きだって
そんな言葉で加速する。

少し背伸びしないと言えない気がして
立ち漕ぎで帰り道を通り抜けた。

然有琉 湊(さ

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落ちた勇者。

シンクへ落ちたスプーンは
ちゃぽんと音を立てて底へ消えていった。
油の浮いた水面は少し鈍い音だった。
1度落ちたスプーンは
もはや何かを掬うものではなくて
誰かに掬われるのを待つものだった。
水と油に守られて
波立つ流れに揺られても
錆びることはなくあの時のままで
ずっとずっとあのままで
いつか錆びて消えることだけを怯えて眠っている。

然有琉 湊(さあり みなと)

君と付き合いたいがために。

君と付き合いたいがために
生まれた嘘1つ。

僕はすごいんだぞって嘘。

1人、2人、3人
その嘘を信じてる人が増えていって
とても1つの嘘のもつ重みじゃなくなった。

君と付き合いたいがために使った眠りの魔法1つ。

本当の僕を起こしてくれる誰かを待ってる。

然有琉 湊(さあり みなと)

明かりはつけないで、

照らせば分かることばかりじゃなくて
暗闇で光るものだってあるのに
照らしたらむしろ消えてしまうのに
なんで全部明るみにさらそうとするの?

然有琉 湊(さあり みなと)

七日間戦争

蝉時雨の切れ端は幾重にも重なって
ひとつの線を描いて
ひと夏の思い出に命の重みをのせた。

坊主たちの戦いのサイレンも
心臓の計りの悲痛な音も
それを真似た。

ある夏の日のことだった。
君と僕の話もそうだった。

然有琉 湊(さあり みなと)

<あととがきー<
忘れられないあの日は夏らしい日だった。

たまらなく不安なんだ。

「頑張れよ」って意味の大好きな作品の名言が怠惰な僕を突き上げる。

”痛いよ。”
”その名言。”
”なんだよ。好きなのに僕を不安にさせるのか。”

”まあいいよ。”
”逃げた先で刺されるとは思わなかったけど、”
”まあいいよ。”

どうでもよくなって
横になった。

時計の針とともに
心に空気が入った。

膨れ上がって出来た空白を埋めるように
甘いものを頬張った。

”痛いなあ”
”こんなことして

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ミ・ソ・ソ・レ

ミ・ソ・ソ・レ

聞こえる?
雪とも違う
雨とも違う
まばらなのにどこか規則的で
明るさのもとでは優しくて
暗がりだともっと優しい。

しとっつ。でも
ふぁさっ。でもない。

ミソ、、レ。ミソ、、レ。

優しい音色。だけど冷たい音色。

然有琉 湊(さあり みなと)

<あととがきー<
Q. ミソソレってなあーんだ。

こたえ↓

ミソ〃レ
ミゾレ
A. 霙
(読み返してみて)

【メンバーシップ限定記事】今日何ができたんだ。

夜20時45分。
いつも僕はこの時間にPCを立ち上げる。
いつも通りの配信告知といつも通りのマイクテスト。

芸術家になりたいすべての人へ。

あなたが何かを考えて答えを出そうとしている時点で芸術家であるように思う。
まだ、作品を作ったことがない人は、単に慎重に作品の構想を練っているだけだと思う。
逆に、作品を作り続けている人は、思考の過程に創作があったり、答えをだしたと思う頻度が多いだけだと思う。

答えを出そうとするその「時点」で芸術家であると思う。

私というパラレルワールドでは、あなたは芸術家であると思う。

御あいにくなことで、

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世界の中心だと思ってた。

夏休み。
蝉がうるさいなんて情緒は捨てて
今日も遊んでる。

あぢーー
暑すぎね?

アイスの棒を加えて君が言う。

それなーー
夏は涼しかったら最高なのによ。

アイススプーンで僕は言う。

だったらよ。涼しくしようぜ。

え?

夜あそべば涼しいじゃんか。

え、お前天才?!
ありーーーー!

って言っても何するの?

そりゃ、夏の夜は花火だろ。

天才のダチいて幸せだわ。

夏の夜の花火。集

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宝石[意思]

輝く人は宝石を持っている。

それは、原石を磨けば、みんな宝石みたいに輝けるというような気休めではなくて、

宝石がもつ、鋭さと丸みが見えるという意味。

ダイヤモンドは、
形がギラついて
中の光は丸いまま

オパールは、
形は丸いけど
中の光がギラついてる

エゴを通して
出る杭になればいい。
荒波にもまれて
角が取れてもいい。

大事なのは、
あなたの輝き方だから。

そんな緩急付きの輝きを持

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24日 p.m.8:17

横断歩道を自転車が横切る。

吐く息で冬の寒さを口に纏って
赤いアウターの人が横切る。

買い出しだろうか。

荷物かごから
牛乳パックの頭やら野菜の葉っぱがはみ出している。

通してくれてありがとうって
片手で合図をくれた。

24日 p.m.8:18

然有琉 みなと(さあり みなと)

<あととがきー<
ソリとトナカイは自転車で代用できる。
だれへのプレゼントだろ。

黄色い線上を渡り歩く。

その映画の主人公は
愛ゆえに愛する者と引き換えに世界を犠牲にした。
そんな映画を見ている僕らも犠牲にしたんだろうか。

じゃあ
この世界を作った何者かは
愛する者がいたのかな。

孤独な心を癒してくれる誰かがいたのかな。
生きる理由があったのかな。

愛ゆえにこの世界に終わりがあるならまあいいか。

映画の帰り道
3番線の黄色い線の外側で
僕はまばゆい光を見て考える。

あと少し愛が見たいからと

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後の祭りすら来ない。

雨を受け流して自転車を曳いた。
境内をひたすらに、

階段の下に自転車は置き去って

何度も繰り返した妄想を何度もかみながら
階段を鳴らした。

ここで告白するつもりだったんだよななんて考えながら
社を見渡して
今更雨を避けるように屋根下に入った。

さっきおじさんにもらったカステラを食べながら少し考えて
腕をまくって階段を駆け下りた。
「おじさん、手伝うことある?」

カスタードの黄色い甘さが青

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終わった次の日。

今日は向こう側までよく見える。

電車の最後尾、車掌室前。

誰もいないから、先頭の窓の向こうまでよく見える。

昨日までの満員が嘘みたいだ。

車掌は襟を正して頭を下げた。
そしていつも通り、最後尾から先頭まで不正乗車を見て回った。

まだこっちに来ちゃいけないって伝えるために、

日付:1945年8月16日

然有琉 湊(さあり みなと)