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三島由紀夫「憂国」以後の短編感想

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三島由紀夫「憂国」以後の短編の感想をまとめています。読むときの参考になれば幸いです。ただ悪口が多いです。
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「憂国」の不思議

「憂国」。三島由紀夫の短編の代表作として、人気の高い作品だ。 昭和36年、三島由紀夫36歳。…

三島由紀夫「真珠」

発表/刊行年は1963年。三島由紀夫38歳の作品。 娯楽的作品。一人の夫人が真珠をなくす。失く…

三島由紀夫「自動車」

三島の放心状態が伝わる作品。 九鬼という中年(だろう)男が教習所で一人の少女と会い……そ…

三島由紀夫「可哀さうなパパ」

谷崎潤一郎は現代語を嫌った。美しくないから。 しかし、晩年の(読みづらさに定評のある)カ…

三島由紀夫「切符」

三島由紀夫の怪談。それ以上でも以下でもない。1963年、三島38歳の作品。 作品は通俗性に流れ…

三島由紀夫「苺」

もうやめにしないか。そう言いたくなる作品がこの世にはいっぱいある。悲しいことに。 それで…

三島由紀夫「英霊の声」

信じられない駄作だった……。知っていたが。 川崎という盲目の青年が、神を憑依させる。彼らはそれぞれ二・二六事件の将校たちと、神風特攻隊の青年たちと名乗る。 その彼らが、戦後日本と昭和天皇への恨みを川崎の口を借りて列席者に語る……というのが作品のあらましだが、あまりにもひどい。 三島いわく、能の形式を借りたらしいが、そんなことはいい。 とにかく、何もかもがだらしない。 まず、作者が神風特攻隊の人々の「声」を奪っているのは問題だ。 二次大戦下、不条理な死を強制された人々の

三島由紀夫「魔法瓶」

またしても駄作だった。しょうがない。 一言で説明すると、W不倫の話。一応、作中に登場する…

三島由紀夫「帽子の花」

死に対して、特別な感度を持つ表現者が世にはいる。 たとえば塚本邦雄氏の短歌。 ここで詠ま…

三島由紀夫「時計」

1966年、三島由紀夫41歳の作品。 千栄と勉という恋人たちの小説だ。 ただ、筆者には初めよく…

三島由紀夫「剣」

驚くほど退屈な短編だ。 話としては、剣道部の群像劇。主要人物は、 国分次郎、壬生、賀川。 …

三島由紀夫「三熊野詣」(追記)

私の時間を返してほしい。 この小説の主題は、「美しい過去と退屈な現在」だ。三島本人の言葉…

三島由紀夫「月澹荘綺譚」

※性暴力の描写が出てきます。 星で表すなら3.2/5。 「三島文学」といえば、作者三島のガチ…

三島由紀夫「仲間」

父と子の物語。 この作品の特徴は、冒頭の文でよく分かるはず。 子どもの「僕」を使った一人称が、全体として柔らかい読後感をもたらす。 三島にしては珍しいタイプの小品。 「仲間」について。 まず、三島氏の小説は、よく「観念的」で「リアリティがない」と批難される。 しかし、たとえ「観念的」だろうと、三島の小説の舞台はあくまで現実の日本だし、扱うテーマでも、あくまで作者三島の抱えた現実のジレンマを書く―それが筆者が知る限りの三島の(優れた)作品だ。 それが、「仲間」は舞台は