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単発小説『贖罪コンビニエンス』
贖罪コンビニエンス
くたびれた眼差しをあげたその先に光っているのは、駅と家の間の道すがらにあるコンビニだった。もうすぐ十二時をまわる路上に人通りは少ないが、出入り口の脇には光に吸い寄せられているかのように二、三人、十九歳くらいの子達が何か食べたり飲んだり煙草を吸ったりしながら地べたに座り込んでいて、それはなんだか肩を寄せ合っているように見えた。そしてその光景を、五十歳くらいの会社員っぽい服装の
「エモい」は、
「えも言われぬ」い、んですか?
「エモーショナル」い、んですか?
Swinging Chandelier:12-孟買青玉
鍵を閉める。外の廊下を歩いて階段を降りる。駅まで十分と少し。肩にかけた鞄はうちの会社に登録してくれている革職人のセミオーダー品。オフィス用のモデルは軽めでパソコンも入るし、何よりデザインが可愛い。ハイウエストのワイドパンツに丈の短い上着を合わせて、ショートブーツのヒールが鳴る。
住宅街の庭からのぞく鉢植えのビオラを横目に歩き、繁華街を貫く大通りに出ると街路樹の花水木の葉がまばらに色づいていた。
感覚するということを認識するということ。自覚された身体、躯。
認識するということを認識し続けています。そこに終わりはなくそれはあらゆる方向にのびる血流です。