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    読んだ本の感想をすこしずつ書いていきます

最近の記事

読書感想『突然ノックの音が』(新潮クレスト・ブックス)

『突然ノックの音が(新潮クレスト・ブックス)』エトガル ケレット (著), 母袋 夏生 (翻訳) 13冊/106冊 イスラエル出身の作家による小説。イスラエルの小説なんて、今まで読んだことがあっただろうか。イスラエルの人たちがいま何をしてるのか、どんな音楽を聴いているのか、夜ごはんを食べたあとどんなふうに時間を過ごすのか、私は何も知らない。 この短編集は、ごくごく短い物語が38篇と詰まっていて、書評曰く「スナップショットのように」いろんな人の人生を切り取っていく。そこでは

    • 読書感想『もう一度 』(新潮クレスト・ブックス)

      『もう一度 (新潮クレスト・ブックス)』トム マッカーシー (著), 栩木 玲子 (翻訳) 12冊/106冊 何らかの事故によって記憶を失った主人公。その事故について一切口外しないことを条件に、一生遊んで暮らせるような多額の賠償金を受け取る。これまでの記憶を喪失した主人公は、記憶以上に何かを失なったように、喪失感を抱きながら暮らしているけれど、あるときお風呂場のひび割れた壁を見て過去の人生がよみがえる。 それは情報としての記憶というより、日々を生きている実感のようなもので

      • 読書感想『イラクサ』(新潮クレスト・ブックス)

        『イラクサ (新潮クレスト・ブックス)』 アリス・マンロー (著), 小竹 由美子 (翻訳) 11冊/106冊 ノーベル文学賞作家アリス・マンローによる九つの短編集。 ほとんどが女性が主人公で、淡々と日々を繰り返している。みな客観的に見たらそこそこ幸せな生活を送っている人たちだけど、そこはかとなく漂う息詰まり感がよく分かって苦しい。 まいにちを繰り返し生きることが不幸に感じるのは何故なのか。登場人物たちの場合は、夫から少しだけないがしろにされていたり、意思を尊重されなかっ

        • 読書感想『ウィンドアイ』(新潮クレスト・ブックス)

          『ウインドアイ (新潮クレスト・ブックス) 』ブライアン エヴンソン (著), 柴田 元幸 (翻訳) 10冊/106冊 アメリカ出身の作家による25篇の短編集。すべて、異様な雰囲気に包まれて、謎や恐怖が解明されないまま、この本に巻き込まれていく本だった。要約はできそうにない。分からないけど恐ろしい。分からないことが恐ろしいのかもしれない。 自分と他者の境目、自分と物との境目、自分の身体と自分の境目、無意識の線引きがわからなくなる。自分の手が自分の意思と関係なく動き出した

        読書感想『突然ノックの音が』(新潮クレスト・ブックス)

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          7本

        記事

          読書感想『最初の悪い男』(新潮クレスト・ブックス)

          『最初の悪い男』ミランダ ジュライ (著), 岸本 佐知子 (翻訳) 9冊/106冊 主人公のシェリルは40代独身女性で一人暮らし。仕事と自分の生活を大切にしている。モテない。職場の上司に不器用な片思いをしている。 そんな女性の自宅に知人の娘が転がり込んでくる物語。20歳のクリーは不衛生で足が臭く、そこら中をゴミだらけにするだらしなさ、そして暴力的と、シェリルの生活をめちゃくちゃにしてしまう。 シェリルは孤独だけど、孤高ではない。客観的には自由で自立した女性だけど、内実は

          読書感想『最初の悪い男』(新潮クレスト・ブックス)

          読書感想『ミッテランの帽子』(新潮クレスト・ブックス)

          『ミッテランの帽子』アントワーヌ ローラン (著)、吉田 洋之 (翻訳) 86年〜88年のフランス、社会党のフランソワ・ミッテラン元大統領が選挙で大敗し、右派政権にとってかわられていた2年の間の出来事。知人とブラッスリーで牡蠣を食べた大統領が席に忘れてしまった「帽子」をめぐる物語。帽子は、うだつのあがらないサラリーマンや、断ち切れない不倫に苦しむ女性や、落ちぶれた調香師など行き先を転々としながら、持ち主に人生の転機をもたらしていく。 レモンを搾った生牡蠣、濃いコーヒー、電車

          読書感想『ミッテランの帽子』(新潮クレスト・ブックス)

          2020年目標/『西への出口』(新潮クレスト・ブックス)

          2020年になりました。 今年は、海外文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」を読破することを目標に、1年間を過ごしていきたいと思います。 「新潮クレスト・ブックス」は、小説を中心にエッセイや自伝など、海外文学の名著を翻訳するシリーズで、装丁も美しく「良い作品」を生み出すという想いが溢れる、素晴らしいシリーズなのです。 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/crest/ 目標達成にむけて下記の条件もあわせて定めました。 (1)2019年12月

          2020年目標/『西への出口』(新潮クレスト・ブックス)

          2018年読んだ本リスト

          2018年に読んだ本は再読除いて72冊でした。 2019年はもっと読みたい。 ■小説・・・34冊 『存在の耐えられない軽さ』/ミラン・クンデラ/★5 『朗読者』 /ベルンハルト シュリンク/★5 『太陽の棘』/原田 マハ/★5 『怒り(上) 』/吉田 修一/★5 『怒り(下)』/吉田 修一/★5 『オールド・テロリスト』/村上 龍/★5 『コリーニ事件』 /フェルディナント・フォン・シーラッハ/★5 『キオスク』/ローベルト ゼーターラー/★4 『侍女の物語』/マーガレット

          2018年読んだ本リスト

          読書感想 小説『コリーニ事件』

          フェルディナント・フォン・シーラッハ著の小説『コリーニ事件』を読みました。ドイツで出版された本書は、ドイツで実際に施行されている刑法をとりあげて、ひとりとその周囲の人間の物語を紡ぎ出した小説です。 当該の刑法は、それによって裁判に大きな影響を与えたものだけど、あまり審議をされないままに法案は通過し、特に注目を浴びずにきたようです。 ネタバレになるから内容への言及は避けますが、この小説は私にとって衝撃的な読書体験でした。もちろんそこに書いてある事実に対する驚きも、小説としての

          読書感想 小説『コリーニ事件』

          KYOTO GRAPHIE 京都新聞社地下印刷所跡地

          連休を利用して、KYOTO GRAPHIEをまわってきました。日差しが眩しいと思えば、すぐに雨が降り出し、そして止むのを繰り返す、不思議な天気の京都でした。 まずは京都新聞社地下にある印刷所跡地で展示されていた、ローレン・グリーンフィールドのGeneration Wealth(富の世代)シリーズ。ここはチケットの必要がなく、誰でも見られます。 アメリカの大豪邸、セレブな著名人、高級ブランドを身につける人々、物質主義者たちの写真が並び、言葉通り、富に溺れる人々のくらしが描写さ

          KYOTO GRAPHIE 京都新聞社地下印刷所跡地

          物書きさんのための素材 モノクロ版 1

          noteで使えそうな素材を配布します。(投げ銭制) noteやブログで長文を読んでいて、内容が変わるときなどは区切りがあると読みやすいのではないかな~と思ったので、区切り素材を作ってみました。 ↑こんな感じで使えます。 透過処理を行っていない横800pixelのjpegです。白背景に適しています。数字素材は縦80pixelのjpegです。解像度が小さいので印刷には適さないと思います。 note以外でもよろしければお使いください。もちろん物書きさん以外でもお使いください

          有料
          100

          物書きさんのための素材 モノクロ版 1