バール

小説書きでミニチュアゲーマー。おもにSFを好み、三度の飯よりセンスオブワンダーが好き。…

バール

小説書きでミニチュアゲーマー。おもにSFを好み、三度の飯よりセンスオブワンダーが好き。小説が面白かったらフォローしておくれ。なにかあればツイッターアカウントのDMからどうぞ。https://twitter.com/shu64737980

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  • 逆噴射小説大賞参戦作品

    逆噴射小説大賞に撃ち放った弾丸たちです。

  • 雑文

    男もすなるよしなしごと。基本的にクソの役にも立たない内容。

  • 閉鎖戦術級魔導征圧者決定戦

  • 夜天を引き裂く

    ツァラトゥストラの咆哮は、闇の底に反響し、ヘプドマスへ至る道を啓く。

  • 絶罪殺機アンタゴニアス

    遠未来×中華拳法×巨大ロボ

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シロガネ⇔ストラグル 目次

ファンタジー×メタフィクション×コメディ 作:バール 絵:しんどい ★がついている章には本文中に挿絵が入ります。 かそけき彼の地のエリクシル #1 #2 #3 #4 #5 もひかん☆えくすぷろーど#1 #2 #3 #4 #5 シュジュギア -帝都神韻機鋼譚-#1 #2 #3 #4 #5 王国編三者三様異世界行脚 #1 三者三様異世界行脚 #2 三者三様異世界行脚 #3 ……そしてッッ! #1 ……そしてッッ! #2 ……そしてッッ! #3 ……そしてッッ! #4

    • 夏日陰の巣立ち #3

       前 目次  しばらくしてから、居間にもうひとりの人物が入ってきた。  大きな瞳を不安そうに揺らしながら、おどおどと。 「あ、あの、今、家の前で、タグっちが……」  セラキトハート。  ――いや、もはや鋼原射美と呼ぶべきか。  彼女のおかげで、この家は明るさを失わなかったものだが。  そう懐かしむ自分の気の早さに、ヴェステルダークは肩をすくめた。 「ほう、会ったのか。それで、襲われれもしたのかもな?」  ぶんぶんと、射美は大げさに首を振り、困惑まじりの笑みを浮かべた。 「な

      • 夏日陰の巣立ち #2

         前 目次  地方征圧軍十二傑の序列第三位であるところのヴェステルダークは、ボロ借家の居間で、ひとつの結論に到達していた。  皇停『禁龍峡』の位置に関する、重大なパラダイムシフト。 「……私は今までとんでもない勘違いをしていたらしいのかもな……」  眉間を軽く摘みながら、斬れ味鋭い笑みを浮かべるヴェステルダーク。  ここ朱鷺沢町近郊の〈BUS〉相が不安定に揺らいでいる理由。  どれだけ〈BUS〉の流れを辿ろうが、まったく《楔》に辿りつかなかった理由。  ようやくそれが、判然

        • 夏日陰の巣立ち #1

           前 目次  鋼原射美は、決断の岐路に立たされていた。  ボロ借家への道を、とぼとぼと歩きながら、眉尻は垂れ下がっていた。  もしもネコ耳が生えていたら、しゅんと力なく伏せられていることだろう。  ――射美もケモノ耳ほしかったなぁ~……  なんて。  思考を関係ない方向に遊ばせてみるけれど。 「ふみ……」  胸がひくついて、喉が熱くなって。  やっぱりこらえきれなくなって。 「ふみぃ……っ」  やっぱりすごくショックで。  普段あんなに優しかったのにって思うと、ひたすらに悲

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        シロガネ⇔ストラグル 目次

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        記事

          かいぶつのうまれたひ #31

           前 目次  篤のウサ耳やウサ脚やウサ眼が、一斉に変化したのだ。 「おおう……」  唐突に変異した脚の構造ゆえ、バランスを崩しかける篤。  藍浬に支えられながら、篤は自分の体を眺める。  五体全てが人間に戻っていた。  頭に手をやると、ウサ耳も消えていた。 「むむむ、消えてしまったか……」  同時に、全身の傷が、かすり傷程度にまで小さく浅くなっていた。  さすがに失った血までは元に戻らなかったせいか、頭はボ~っとするものの、さっきまで体を責め苛んでいた痛みは嘘のように鳴りを

          かいぶつのうまれたひ #31

          かいぶつのうまれたひ #30

           前 目次  それは、爆発ではなかった。  エネルギーのベクトルとしてはむしろ逆――収縮である。  周囲の地脈に内在する〈BUS〉が、着弾の瞬間、打撃点に向けて一斉に殺到。  そこで、物理的な熱量としての振る舞いをやめ、ちょうど特殊操作系能力のように、概念的な意味へと姿を変える。 「貴様の歪みし絆、断ち切らせてもらった」  その意味とは。 「あ……」  タグトゥマダークが、呆然と声を漏らす。  消えゆく己のバス停を前に、成すすべもなく声を漏らす。  『こぶた幼稚園前』は、黒

          かいぶつのうまれたひ #30

          かいぶつのうまれたひ #29

           前 目次  タグトゥマダークは、篤のあまりの愚かしさに憎悪を抱いていた。  ――真っ向勝負だと? 愚鈍がァ……  鼻面を中心に広がる憎悪の皺が、タグトゥマダークの麗貌を鬼神のごとく変容させる。  ――まだわからないのか、クズが。雑魚は雑魚らしく奇策で来いよ間抜け。  墓から手を伸ばす亡者のような手つきで、界面下のバス停を掴んだ。  全身に、憎悪が滾る。  憎悪を呼吸し、憎悪を代謝する。  憎悪で、思考する。  眼が眩むほどの甘い甘い憎悪を感じ、タグトゥマダークは一転、頬を

          かいぶつのうまれたひ #29

          かいぶつのうまれたひ #28

           前 目次 「う、うぅ……」  ――知己の仲であったか。  数奇な偶然である。いや、果たして本当に偶然であったか。 「どうして……こんな、どうして……」  一歩二歩と後退り、余裕のない顔で藍浬を見やる。  旧知と再会しただけにしては、いささか動揺しすぎである。 「キミは……そんな……キミがそうなのなら……僕は……」 「長いこと見ないうちに、ずいぶんカッコよくなったね」  藍浬はタグトゥマダークを追うように悠然と歩み出した。 「ふふ、あんなに泣き虫さんだったのに」 「……昔の

          かいぶつのうまれたひ #28

          かいぶつのうまれたひ #27

           前 目次  つまさき。  鳩尾にめり込むものの正体は、それだった。  篤は自らの体を見下ろし、血の混じった胃液をグラシャラボラス。  不意に手足が言うことを聞かなくなり、尻餅をつくように崩れ落ちた。  ……超反応クロスカウンター。  タグトゥマダークは、突進してくる篤の鳩尾へ、神速の前蹴りを叩き込んでいた。  バス停による斬撃ではないとはいえ、内力操作によって強化された脚力と、篤の踏み込みの勢いが合わされば、致命的な威力となる。  ――天才的。  篤の破城鎚じみた一撃もし

          かいぶつのうまれたひ #27

          かいぶつのうまれたひ #26

           前 目次  謎の曲線は、戦場の至るところで浮遊静止していた。その数は二十個を軽く超えている。  ――はは~ん? こいつは……  気配を察したのか、篤が視線だけをこっちに向け、 「ありのまま、今、起こったことをありのまま?」(意訳:何か気づいたのか?)  別にいきなりフランス人の騎士道精神にあふれたスタンド使いと化したわけではない。 「座ったまま! なっ! 座ったままの姿勢で!!」(意訳:なんだか知らねえが変なものが浮いてやがるぜ!)  半年ほど前、超高校生級武闘派不良集団

          かいぶつのうまれたひ #26

          かいぶつのうまれたひ #25

           前 目次  攻牙は眼の前の闘いを見る。  蒼い稲妻を体中に纏わりつかせる篤と、冥い紫の妖炎を立ち上らせるタグトゥマダーク。  二人は対峙しながら、ゆっくりと間合いを詰めていた。  ――なんかすごく宿命っぽいぞ! 絵面的に!  この闘いに、立ち入ってもいいものなのか!? 少年漫画的ケレン味は、攻牙の行動原理の根幹を成すファクターであるからして、「認めた宿敵には自分以外の誰にも倒されてほしくない」という戦士のわがままに対しては物凄く理解がある。つもりだ。  このまま手出しは控

          かいぶつのうまれたひ #25

          かいぶつのうまれたひ #24

           前 目次 「……不愉快だニャン」  タグトゥマダークは眉間に皺を寄せた。 「下位者の裏切りを処断するのになんでキミごときの了解を得なけりゃならないんだニャン? 弁えろよ学生クン」 「よくわかったぴょん」 「へえ、そりゃ何よりだニャン」 「……貴様が恐るに足らん匹夫であるということがな」  二人は険悪などというレベルを超えた視線を交し合う。 「あんまりナメた口聞いてると楽に死ねないニャン?」 「問題ないぴょん」  篤はバス停を構えた。 「部下の諫言を裏切りとしか認識できない

          かいぶつのうまれたひ #24

          かいぶつのうまれたひ #23

           前 目次  攻牙はこういう時、脳内に第二第三の自分を作り、一瞬でそいつらと相談するという癖があった。  ――脳内有象無象ども! てめーらの意見を聞こう!  即座に脳のあちこちから意見が上げられた。「受け入れろ。ここはそういう世界だ」と大脳辺縁系在住の脳内暗殺者が吐き捨て、「死とは一種の相転移に過ぎない。恐れるなかれ」などと海馬在住の脳内武術家が嘯き、「君の死は作戦の範疇だ」と脳幹における本能のうねりを監視していた脳内陸軍士官は冷徹に丸眼鏡をクイッとやり、「お前の死を乗り越

          かいぶつのうまれたひ #23

          かいぶつのうまれたひ #22

           前 目次  屋上に足を踏み入れたその瞬間に、攻牙は状況を看破した。  血まみれの篤。なぜか膝立ちで天を見上げている。その頭から生えるウサ耳は、片方が折れて顔面に垂れ下がっていた。白毛の中から、おびただしい内出血の様子が透けて見えた。  タグトゥマダークは笑っている。嘲っている。  要するに、頭に何らかの攻撃を受けて大切なウサ耳が折れちゃった、の図らしい。 「左耳……左耳よ……! あぁ――なぜ! なぜお前がかくも無残な仕打ちを受けなければならないぴょん! こんな俺ごときに気

          かいぶつのうまれたひ #22

          かいぶつのうまれたひ #21

           前 目次  わかったことがある。  第一に、タグトゥマダークはやはりバス停を使って攻撃してきているということ。どういう仕組みなのかはわからないが、普段は素手だというのに、攻撃の瞬間だけバス停の刃が出現するのだ。  第二に、タグトゥマダークの攻撃には、殺意があるものとないものの二種類あるということ。  殺意があるほうの斬撃は、スピード、精度ともに凄まじく、敵の圧倒的実力を感じさせるものだった。殺意があるおかげで先読みの防御がどうにか間に合うのだが、連続で来られると恐らく防ぎ

          かいぶつのうまれたひ #21

          かいぶつのうまれたひ #20

           前 目次  ――いかん。  胸を走る、重い痺れ。触れてみると、赤くて熱い液体がべっとりと掌を汚した。  横一文字に、掻っ捌かれている。  すぐに後ろを向き、敵を視界に収めた。 「さて……」  タグトゥマダークの踵は、アウトボクサーのようにゆるやかなステップを踏み始める。その手には、バス停などない。完全に手ぶらだ。  バス停もなしにどうやってこの傷をつけたのか。どうやって背後に回ったのか。  いや――  そんなことはどうでもよい。  今の攻撃に、殺気どころか攻撃の意志すら感

          かいぶつのうまれたひ #20