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「読んだ気にさせる」or「もっと読みたくなる」

先日お問い合わせをいただいた↓が気になっています。

カール・マルクス「資本論」の漫画版。以前からあったと記憶していますが表紙のデザインが異なる。復刊したみたいです。

岩波文庫版ではなんと全9巻。

恥を忍んで告白します。血気盛んな大学生の頃、1巻の最初の章を数ページ読んでやめました。ここまで早くギブアップしたのは後にも先にも「資本論」だけです。

私は「○○分でわかる××」みたいな書籍をあまり手に取りません。長くて難解なことには必然的な理由があり、端折っていいものなら最初からそうしているはずだと考えるからです(もちろん要約本に意義とニーズがあることも理解しています)。

もうひとつ。誰かが主観で削った名作のダイジェスト版に触れ、原本を読んだ気になるのは非常に危うい。省かれた箇所が己にとっても重要じゃないとは限りません。

たとえば、講談社から出ている瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」のエッセンシャル版は著者自身の監修です。しかし私はオリジナルの方をオススメします。文庫のエッセンシャル版から得られた「こういうことかな?」という漠然としたイメージが、単行本を読んだことで鮮明になったのです。初めて眼鏡をかけた後の視界のように。

とはいえ、これは難しそうと早々に遠ざけたり、どうせムリと挑む前から諦めたりした経験は誰しもあるはず。せっかく関心を抱いた名作との縁を手放すのはもったいない話です。

ゆえに「読んだ気にさせる」のではなく「もっと読みたくなる」ような、いわば「入り口」になってくれる何かを歓迎します。「資本論」でいうなら「NHK 100分de名著」のテキストが代表格だし、数年前に読了した↓もよかった。これのおかげでいまも興味が持続しているのです。

漫画版「資本論」ははたしてどちらか? 近々読みます。

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