ばーぼん

変化球を物理的に考えるのが好きです。@bourbon429

ばーぼん

変化球を物理的に考えるのが好きです。@bourbon429

マガジン

  • 魔球の科学

    ”魔球”と称される変化球について、投げるまでの背景から投げ方、なんであんな変化をするのか物理的な話まで書きます。ぼちぼち増やしていきます。

記事一覧

抜けカットはなぜ打ちにくいのか?

今回は「抜けカット」や「抜けスラ」と呼ばれる、抜けたカットボールやスライダーについて書いてみます。 元々抜けた変化球はミス球であり、ゾーンに甘く入って痛打される…

ばーぼん
3年前
60

好きな古畑任三郎をおすすめしてみる

いつもは野球について話してますが、たまにはこういうのもいいんじゃないかということで、自粛期間中にFODで見直した僕の好きな「古畑任三郎」について書いてみたいと思い…

ばーぼん
4年前
18

ジャイロボールの物理学 ~スラッターはなぜ急に曲がって見えるのか?~

ジャイロボールの概念は、野球界特にピッチャーの方々にとっては注目が集まっているものです。 松坂大輔投手が投げていることでも大きく話題になり、当時は魔球と呼ばれた…

ばーぼん
4年前
111

Spin efficiency ってなに?[基本編]

現在の野球、特にピッチングの世界においては様々な測定技術の発達によっていろいろな情報が可視化されるようになってきました。特に「ノビがある」や「キレがある」など曖…

ばーぼん
4年前
81

禁じられた変化球??

2019年5月8日のヤンキース戦で菊池雄星投手が2勝目を挙げた裏で、ちょっとした騒動がありました。 菊池投手の帽子のつばに茶色い物体が付着しており、SNSなどで松ヤニでは…

ばーぼん
4年前
11

アンダースローの投球の科学

今回はアンダースローの投手に注目してみたいと思います。 何回か前のnoteではアームアングルと投球についての関係を見ました。 変化球は回転数・回転軸・球速はもちろん…

ばーぼん
4年前
46

藤川球児の「火の玉ストレート」

ここ何年間の阪神ブルペン陣で最も活躍しているといっても過言ではないベテラン、間もなく39歳となる藤川球児投手。今期ここまでの活躍は全盛期をも彷彿とさせ、先日7年ぶ…

ばーぼん
4年前
21

Pierce Johnsonの「パワーカーブ」

2019年シーズンから阪神タイガースに加入し、オープン戦で登板した7試合すべて無失点に始まり、開幕戦から5月8日ヤクルト戦まで登板16試合連続無失点を記録しました。阪神…

ばーぼん
4年前
35

変化球とその最適アームアングル

1, はじめに今回は、投げるボールとその投げ方について考えてみたいと思います。 ピッチャーが投げるボールについて球筋を決める要素はいくつかあります。 主な要因は、 …

ばーぼん
5年前
85

山﨑康晃の「ツーシーム」

2015年DeNA入団1年目からクローザーを任されており、入団4年目の2018年には自己最多タイの37セーブを記録し、自身初タイトルとなる最多セーブ投手を獲得しました。佐々木主…

ばーぼん
5年前
26

千賀滉大の「フォーク」

ソフトバンクの千賀投手は、育成出身ながらも現在では侍ジャパンにも選出されるほどの投手で、SBのエースとして活躍しています。 2019年シーズン開幕戦において自己最速の…

ばーぼん
5年前
22

ノビ、キレ、重さの科学

1, 導入よくプロ野球の解説を聞いたりすると、 「ノビのあるストレート」「キレのある変化球」「重いストレート」 などという表現を耳にするかと思います。 もしくは野球ゲーム…

ばーぼん
5年前
102

非投球腕の使い方

導入非投球腕とは、投球する腕とは逆の腕。つまりは利き腕とは逆の腕のことです。グラブ側の手です。 投球する際、非投球腕の使い方は非常に重要です。 この記事では、 …

ばーぼん
5年前
18

ピッチャーとキャッチャーとバッターと

今回はこの記事からヒントを得てみました。 ここにはこう書かれていました。 そして今季の西武の「鍵」。当然の中軸と、1番打者の秋山だった。リーグ順位が決まると、コ…

ばーぼん
5年前
9

野球とテニスは似て非なる?

今日は野球の話とともに、僕がやってるテニスの話もします。 この2つの競技って結構似てる部分が多いんですよね。 どちらもボールを鈍器を使って打つ競技ですし、ス…

ばーぼん
5年前
9

ジャイロボールは魔球?

今回のノートは、変化球の変化について書こうと思います。といっても、いろんなところから持ってきた情報をまとめて、自分なりにわかりやすく書いたつもりなので特に新しい…

ばーぼん
5年前
44
抜けカットはなぜ打ちにくいのか?

抜けカットはなぜ打ちにくいのか?

今回は「抜けカット」や「抜けスラ」と呼ばれる、抜けたカットボールやスライダーについて書いてみます。
元々抜けた変化球はミス球であり、ゾーンに甘く入って痛打されるというイメージは強いと思います。しかしスライダーやカットボールといった球種では、抜けても打たれづらいという特徴があります。
スライダーやカットボールは抜けると変化が小さくなり、打者に「思ったより変化しない」と思わせることができ、打者の予想出

もっとみる
好きな古畑任三郎をおすすめしてみる

好きな古畑任三郎をおすすめしてみる

いつもは野球について話してますが、たまにはこういうのもいいんじゃないかということで、自粛期間中にFODで見直した僕の好きな「古畑任三郎」について書いてみたいと思います。

古畑任三郎はかつてフジテレビで放送されていたドラマのシリーズで、1994年ぐらいから3シーズンかけて放送されていた刑事ドラマです。1stシーズンだけ「警部補 古畑任三郎」とタイトルに警部補がついているのですが、これは時代劇と間違

もっとみる
ジャイロボールの物理学 ~スラッターはなぜ急に曲がって見えるのか?~

ジャイロボールの物理学 ~スラッターはなぜ急に曲がって見えるのか?~

ジャイロボールの概念は、野球界特にピッチャーの方々にとっては注目が集まっているものです。
松坂大輔投手が投げていることでも大きく話題になり、当時は魔球と呼ばれたりしていました。

現在では投球のデータを様々な方法で取ることが可能になっており、変化球の中にはジャイロ回転するものも多いということがわかるようになってきました。その中でも様々な研究が進んでおり、いろんなことがわかるようになってきました。

もっとみる
Spin efficiency ってなに?[基本編]

Spin efficiency ってなに?[基本編]

現在の野球、特にピッチングの世界においては様々な測定技術の発達によっていろいろな情報が可視化されるようになってきました。特に「ノビがある」や「キレがある」など曖昧だった投球に対する評価が、数値などのデータとして見ることができるようになってきています。

2007年頃からpitchf/xと呼ばれるビデオカメラの画像処理によってボールの軌道を算出するシステムが運用され始めました。
現在ではMLBのすべ

もっとみる
禁じられた変化球??

禁じられた変化球??

2019年5月8日のヤンキース戦で菊池雄星投手が2勝目を挙げた裏で、ちょっとした騒動がありました。
菊池投手の帽子のつばに茶色い物体が付着しており、SNSなどで松ヤニではないかと物議を醸しました。
あの後結局は対戦相手のヤンキースも大リーグ機構もこの話題は不問としました。

あの行為なんらかの反則というか罰則みたいなものないの?と気になった方も多いんじゃないでしょうか(実際僕も調べるまで知りません

もっとみる
アンダースローの投球の科学

アンダースローの投球の科学

今回はアンダースローの投手に注目してみたいと思います。
何回か前のnoteではアームアングルと投球についての関係を見ました。

変化球は回転数・回転軸・球速はもちろん大事ですが、投げるときの腕の角度や投げるコースも重要で、それらによって投げやすい・投げにくいが出てきたり、変化が変わってきたりするということでした。

しかしながらアームアングルの中でも「アンダースロー」というものは特に異質で、あの時

もっとみる
藤川球児の「火の玉ストレート」

藤川球児の「火の玉ストレート」

ここ何年間の阪神ブルペン陣で最も活躍しているといっても過言ではないベテラン、間もなく39歳となる藤川球児投手。今期ここまでの活躍は全盛期をも彷彿とさせ、先日7年ぶりにオールスターに選出されました。

2012年まで阪神で活躍、その後メジャー挑戦から四国アイランドリーグplusを経て2016年に再び古巣へ戻ってきました。
防御率は2016年から昨季までは順に4.60、2.22、2.32、今季はここま

もっとみる
Pierce Johnsonの「パワーカーブ」

Pierce Johnsonの「パワーカーブ」

2019年シーズンから阪神タイガースに加入し、オープン戦で登板した7試合すべて無失点に始まり、開幕戦から5月8日ヤクルト戦まで登板16試合連続無失点を記録しました。阪神の勝利の方程式として8回のセットアッパーを担っており、防御率1.38、奪三振率13.96の驚異的な数字を残し抜群の安定感を誇りました。
その”PJ”ことジョンソン投手の大きな武器は、急速に曲がりながら落ちる「パワーカーブ」です。この

もっとみる
変化球とその最適アームアングル

変化球とその最適アームアングル

1, はじめに今回は、投げるボールとその投げ方について考えてみたいと思います。

ピッチャーが投げるボールについて球筋を決める要素はいくつかあります。
主な要因は、
リリースポイント、投射角(投げ込む角度)、スピード(球速)、回転量(スピン)、回転軸、シーム(縫い目)
の6つです。もちろんそのほかにも風や空気圧など小さい要因はたくさん考えられます。

回転数がどれくらいかやどんな回転をしているかな

もっとみる
山﨑康晃の「ツーシーム」

山﨑康晃の「ツーシーム」

2015年DeNA入団1年目からクローザーを任されており、入団4年目の2018年には自己最多タイの37セーブを記録し、自身初タイトルとなる最多セーブ投手を獲得しました。佐々木主浩の愛称であった大魔神にちなんで「小さな大魔神」と呼ばれています。
クロスステップするオーバースローから繰り出すストレートに加え、フォークの様に鋭く落ちる”本人曰く”「ツーシーム」を武器としています。

2018年シーズンで

もっとみる
千賀滉大の「フォーク」

千賀滉大の「フォーク」

ソフトバンクの千賀投手は、育成出身ながらも現在では侍ジャパンにも選出されるほどの投手で、SBのエースとして活躍しています。
2019年シーズン開幕戦において自己最速の最速161 km/hを記録したことも記憶に新しいですが、千賀投手の代名詞と言えばなんといっても「お化けフォーク」と評される落差の大きいフォークだと思います。
2018年シーズンにおいては空振りストライク率は32.3%を記録しており、フ

もっとみる
ノビ、キレ、重さの科学

ノビ、キレ、重さの科学

1, 導入よくプロ野球の解説を聞いたりすると、
「ノビのあるストレート」「キレのある変化球」「重いストレート」
などという表現を耳にするかと思います。

もしくは野球ゲームなどで、例えばパワプロ(パワフルプロ野球)では、
「ノビ〇」「キレ〇」「重い球」「軽い球」
というような特殊能力があることでも知られています。

このような表現は主に「球質」を表しているものです。どれだけそのボール、ストレートだ

もっとみる
非投球腕の使い方

非投球腕の使い方

導入非投球腕とは、投球する腕とは逆の腕。つまりは利き腕とは逆の腕のことです。グラブ側の手です。
投球する際、非投球腕の使い方は非常に重要です。

この記事では、

日本では「グラブ側の手を強く引くと、ボールを持った方の右肩が勢いよく前に出てくるから右腕もより強く振られる。」 と指導されることが多く、野球の教則本にも「グラブを持った方の手を勢いよく後方に引くように使おう」と記されていることが珍

もっとみる
ピッチャーとキャッチャーとバッターと

ピッチャーとキャッチャーとバッターと

今回はこの記事からヒントを得てみました。
ここにはこう書かれていました。

そして今季の西武の「鍵」。当然の中軸と、1番打者の秋山だった。リーグ順位が決まると、コーチ陣に資料の洗い直しを指示。データ班が用意した200ページものPDFファイルも踏まえ、対策をすり合わせた。
西武のみやざきフェニックス・リーグでの調整もスコアラーが撮影。秋山が特定のコースで示す反応を把握し、攻めを徹底した。データ班は不

もっとみる
野球とテニスは似て非なる?

野球とテニスは似て非なる?

今日は野球の話とともに、僕がやってるテニスの話もします。



この2つの競技って結構似てる部分が多いんですよね。

どちらもボールを鈍器を使って打つ競技ですし、スポーツなんで当たり前かもしれないですけど、メカニクス的な部分で特に多く共通点があると感じます。

例えば”サービス”なんてもろピッチャーの投球ですし、ストローク(まあよく見るテニスのラリーをするときの打つ動作のことです)も打撃フォーム

もっとみる
ジャイロボールは魔球?

ジャイロボールは魔球?

今回のノートは、変化球の変化について書こうと思います。といっても、いろんなところから持ってきた情報をまとめて、自分なりにわかりやすく書いたつもりなので特に新しい見解はありません。知らない人向けに書くので、知ってる人は知ってることしかないと思いますが。

変化球の変化について、ボールの軌道は主に、回転軸の向きと回転数、それに速度という三つの要素で決まります。ここでは回転軸の向きに重きを置いて話します

もっとみる