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『らじおと』は、30年前に抜擢されテレビで昼の帯番組の司会をまかされたが半年で打ち切りになった『素敵な気分De!』のリベンジだったんだろうか?

伊集院光のMCとしてのスキルはほんとにすごいと思う。ゲストの発言がちょっとでも行きすぎたりしたらすかさずバランスをとる頭の回転の速さとか。奇形的なくらい。それでもゴールデンタイムで冠番組を持つような、芸能界の真ん中にいる人気者にはなれなかった。そんな芸人はほんの一握りだとはいえ。芸能界で何十年も生き残れるだけでもすごいことだけど、ただ「生き残る」だけではない、もう一段上を目指そうとすると、そこには「ポップさ」の壁がある。皆を引き付けて中心になる明るさ、ポップさ。『水曜日のダウ

    • 『デカメロン』読書メモ 第10日目

      テーマは「寛大な心や気風の良さでもって恋であれ愛であれ何事かを成し遂げた人について」。各話の語り手たちが、自分の話の登場人物こそがいちばん寛大で豪儀だと競い合うようなかたちになっている。 第一話は、自分に対するの評価に不満がある騎士の話。自分を正当に評価しない王を、厩舎で脱糞せずに川で水を飲んでいるときに脱糞する驢馬にたとえる。王は、正当な評価ができなかったのは騎士に運がなかったから、というロジックで、片方には土が入っていてもう片方には宝物が入っている2つの箱のどちらかを選

      • 『デカメロン』読書メモ 第9日目

        第9日目はテーマなしで自由に語る。どこのテーマにも入らない話を寄せ集めたのかな? どれも短い話が多い。 第一話は、二人の男にしつこく言い寄られる女が、一人の男には埋葬された遺体と入れ替わって棺に入るように、もう一人の男にはその遺体を自分の家まで持ってくるように、実行できたら思いを遂げさせてやるという条件を出すんだけど、二人は完遂できない。難題婚の要素があったり、落語の「算段の平兵衛」みたいに死体が利用されたりという部分はおもしろいけど、あっさりと終わる。 第二話は、尼僧が

        • 『デカメロン』読書メモ 第8日目 第七話

          第七話は女(エーレナ)に残酷な仕打ちをされた男(リニエーリ)が常軌を逸した復讐鬼になる話。復讐の様がミソジニーの見本ってかんじで読んでて慄然とする。 私が仮に寛仁大度であろうとも、おまえという女にはその恩赦にあずかる資格はない。 『デカメロン 下』(河出文庫)p.105 私はおまえを人類最古の敵としてあらゆる憎悪をこめ全力をあげて弾劾追及する。それが私の覚悟だ。それは正確には復讐ではない、懲罰だ。 同p.105 おまえは私の命を一体どんな天秤にかけ

        『らじおと』は、30年前に抜擢されテレビで昼の帯番組の司会をまかされたが半年で打ち切りになった『素敵な気分De!』のリベンジだったんだろうか?

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          『デカメロン』読書メモ 第8日目

          第8日目のテーマは「女が男に悪さをした話」というか、男が女を騙す、あるいは女性が酷い目にあう話を集めたらしい。"男たちが信じている相手から愚弄されることは多々あることですが、同様に男とても自分を信用している女どもを愚弄することはあるのです"……皮肉な書き方をしてはいるけど、表面的にはミソジニーそのものな話が多くて読むのがなかなかつらかった。 第一話で騙される女性は、一応「性悪だから」という理由がついてるけど。お金を借りておいて、相手の弱みをついて借金を帳消しにさせる、という

          『デカメロン』読書メモ 第8日目

          『メメント』、『インターステラー』、『TENET』--クリストファー・ノーランの運命論

          夕方5時のチャイムが 今日はなんだか胸に響いて 「運命」なんて 便利なものでぼんやりさせて ――フジファブリック「若者のすべて」 自由意思は本当に存在しているのだろうか。物理法則を信じ、人間の体や脳も物理法則に従っていて、意識も意思決定も脳内現象の産物だと信じるなら、私が自由に選択を行っているというのは幻想ということになる。しかし、「1から10までのあいだで好きな数字を選んで」といわれたら、脅迫や強制されるような状況でなければ、私は"自由に"数字を選択できると感じるし、す

          『メメント』、『インターステラー』、『TENET』--クリストファー・ノーランの運命論

          『評伝ボッカッチョ』読書メモ

          アンリ・オヴェット『評伝ボッカッチョ』大久保昭男訳(新評論、1994年)。拾い読みしかできていないけど印象に残ったところをメモ。 河出文庫の『デカメロン』訳者解説でもいわれてるように、この評伝は1913年に書かれたもので、最新の研究結果を反映してなくて限界もあるんだろうけど、各話の分析はなるほどと思うところが多かった。 『デカメロン』が具体的にどういう人にどのように読まれたかというのを知りたかったが、その点の記述は見当たらなかった(拾い読みなので見落としてるかも)。当時の読者

          『評伝ボッカッチョ』読書メモ

          猫たち

          夜勤を終え、始発の電車に乗って家に帰る。駅からの帰り道、小さな公園を通ると、だいたいいつもベンチに野良猫がいる。今日は茶トラと白の2匹が並んで座っていた。猫は好きだけど気軽に飼うわけにはいかないので、野良猫を眺めるだけで我慢している。近づくと逃げられるので遠まきに見ながら通り過ぎる。公園を出ると道の真ん中に黒猫が寝そべっていた。車も通る道だけど、この時間は車も人も通らないので道の真ん中でもリラックスしている。路地に入ると塀の上にいるキジトラの猫と目が合った。今朝は猫がいっぱい

          『デカメロン』読書メモ 第7日目

          第6日目の話を読んで、『デカメロン』にはアンチ・キリストという隠しテーマがあるんじゃないかと思ってたら、7日目のまえがきにいきなり「悪魔大王(ルチーフェロ)と呼ばれる明けの明星」だけが空に輝いている描写があってどきりとする。 第7日目のテーマは「女たちが夫の留守にやらかした悪さの数々」。「悪さ」というのはつまりは不倫なんだけど、いままでも寝取られる話はいろいろあったけど、違うのは夫が徹底して酷い目にあうところ。嫉妬深くて妻を束縛する男もでてくるけど、そうじゃなくて何の非もない

          『デカメロン』読書メモ 第7日目

          水と柚子

          30年以上銭湯を営業していて、あれはなんだったんだろうと思うことが1つだけある。 いつもと同じように営業時間前に浴槽に水を半分ほど入れて、浴場の掃除の準備をしていた。ぼちゃんと音がして振り向くと湯舟に黄色くて丸いものが浮かんでいる。手に取ってみると柚子だった。思わず天井を見上げる。高いところに窓はあるが閉まっている。誰かが投げ入れたのかと脱衣場のほうを見てみても、従業員も誰もいなかった。手に持った柚子に鼻を近づけてみる。たしかに本物の柚子らしい。 なにかのお告げだろうかと思っ

          水と柚子

          向日葵と鳥

          向日葵なんてどこにでも生えているけど、よく観察するとまれに特別な向日葵がある。その向日葵は枯れても種ができない。種の代わりに、花の下に卵を抱えているのだ。光合成のためでなく卵を温めるために太陽を追いかける。夏の終わりに卵が孵化する。卵の殻を破る鳥の羽は、まるで燃える炎のようで、向日葵の花が燃えているように見える。全身を現した鳥の姿もやはり燃える炎のようだ。鳥は太陽に向かって一直線に飛び立つ。長い長い旅のあと、太陽の中で成鳥になるまで過ごす。そしてまた地球に戻り、何千億本もある

          向日葵と鳥

          放射能と夕暮れ

          あの戦争が終わったあと、放射線の影響で生態系は完全に変わってしまった。そして、夕焼けの赤い空は恐怖のサインでしかなくなってしまった。巨大化し凶暴化したネズミたち。とはいえただのネズミだ。装甲車や最新の装備があれば駆除できただろうけど、文明が崩壊しかけているいまでは、そんな余裕はなかった。生態系の頂点から転げ落ちた人類は、シェルターの中で震えていることしかできない。 長い長い夜がまた始まる。 ろきせの今日のお題は「放射能」「夕暮れ」 https://shindanmaker.

          放射能と夕暮れ

          祖母とチョコレート

          今日はおばあちゃんの72歳の誕生日だ。おばあちゃんは特別な真っ白な服を着ている。その家の一番若い男子(つまり僕)が、山の上にある村までおばあちゃんを連れていくというのが村のしきたりだ。 上の村までは、僕一人だったら昼過ぎには着いていただろうけど、おばあちゃんの歩くのにあわせていたので、上の村の門の前に着いた時には陽が傾いていた。 「元気でね」 おばあちゃんが僕をぎゅっと抱きしめ、門の向こうに歩いて行くのを見送る。村は崖と塀に囲まれていて、出入りできるのはこの門だけだ。 おばあ

          祖母とチョコレート

          苺と知り合い

          窓がびりびりと震えた。見ると、夜中なのに空が赤い光で明るくなって、そのあとドーンという音と震動が部屋全体も揺らした。きっと隕石だ。震動の大きさからして近くに落ちたに違いない。 落ちたのは裏山の方角だろうと懐中電灯を持って山道を登る。10分ほど登ったところで木が倒れてめちゃめちゃになっていた。あたりには生木が裂けた匂いと、火事のあとみたいな焦げ臭さと、なぜかカルメラのような甘い匂いが漂っている。人影が見えた。近所の人だ。道で会えば挨拶するくらいで、知り合いともいえないけど。木が

          苺と知り合い

          プリンと風

          プリンのプラスチックの容器をひっくり返して、底にある突起をぷちっと折った瞬間、突風が巻き起こった。キッチンの棚からなべやらフライパンが落ちる音が響く。全身をなぶる風がやんで、つぶっていた目を開けると目の前に得体のしれないものがいた。全身がクリーム色をしている、二足歩行で巨大な犬のような……生き物なのか? 「わたしはプリンの精霊です。あなたの願いを1つだけ叶えましょう。ただし、叶えられるのはお菓子に関する願いだけです」 いったいなんなんだ。幻覚を見てるのか、それとも夢か。 「プ

          プリンと風

          月と虹

          一晩中降り続いていた雨が止んだ。夜空を覆っていた雲が途切れ、満月が顔を出そうとしている。雲間から差しこむ月光は眩しいくらいに明るい。月光が照らす家々は、まるでみんな死んでしまったかのように、ひとつも明かりがない。 満月を背にすると、夜空に月の光で虹がかかっている。じっと虹を見つめていると、白い虹の中に巨大な蛇が体をくねらせているのが見えた。白い鱗が月光にきらめく。眠っている家々の上空を蛇が泳ぐ。赤い眼が地上を睨んでいる。流行り病はあの蛇のせいなのに、みんなまだ気づいていない。