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いつか届きますように。言葉の力を信じてます。 chikuwatokyo@gmail.com

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    高校生の頃に作ったものを手直ししています。あとは最近の作品です。

  • 「変身」アルマジロ、シッポクンにオカイコさま

    「変身」をテーマにした空想活劇です。笑いあり涙ありの不思議で不条理な世界をお楽しみください。

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    スキを70も頂いた人気記事のストックです。皆様、ありがとうございます。

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    キズを癒やせたら良いなと思い書いた作品です

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腰痛で病院に行ったら意外と不条理だった話

ここ最近腰痛がひどい。腰痛、というよりも背骨が痛い。きしむのだ。奥さんは年のせいだと笑ったが、実際笑い事では済まされない程の痛みだ。こういう痛みは他人には中々わかってもらえない。ボクは心まで痛くなりそうだ。 ため息をついて我慢するのも癪なので、しつこく痛い痛いと言い張ってみると、奥さんに病院でも行って来たら?と言われた。何でも最近夜中になるとボクの部屋からいびきのような、うめくような声が聞こえるらしい。 ボクの家では数年前より夜は別ベッドでの就寝と決まっている。酔いつぶれ

    • 世直しリョウ君 第一話:イタ過ぎたオトコ④

      その日僕は得意先の営業の帰りで、喫茶店でしばしの休憩をしていた。仕事中なので当然ヤツも一緒だった。お昼時で店内はやや混み合っていたが、僕はカウンターそばのテーブルに陣取ると、ヤツに席を勧めた。 「何だよオマエ。こんな店で休もうなんて、一人前に仕事に慣れたつもりかよ。」 相変わらず何も考えていない、ココロに浮かんだまま遠慮のない言葉だ。 「そうですね。偉そうかもしれませんね、スイマセン。」 僕は例の如く、コイツの話に合わせるようにして店員さんに無用な被害が及ばないように仕向けた

      • 世直しリョウ君 第一話:イタ過ぎたオトコ③

        ヒトを前にして、ヒトは様々な感情を抱く。それが嬉しいとか楽しいとかpositiveな要素なら正のエネルギーを感じ、逆に苦手意識や不安、怒りとかnegativeな要素なら負のエネルギーを感じる。正のエネルギーでは幸福感や満足感を得られる一方、負のエネルギーが強すぎると絶望感や激しいストレスを感じてしまうものだ。結果、ヒトはココロを痛め、傷つくこととなってしまう。原因は様々だが、僕の考える中ではヒトのパターン分類に従った対処方法が知られていないことが大きいように思う。 例えば反

        • 世直しリョウ君 第一話:イタ過ぎたオトコ②

          それから月が変わったある日の夕方、僕は仕事帰りに立ち寄った書店でヤツの奥さんに偶然会った。 「あの…さん、ですか?」 笑顔で軽く会釈した彼女だが、声の調子まで優しさと気品に満ちていた。彼女に会うのは結婚式の二次会以来でまだ二度目だが、僕にはすぐに彼女だと分かった。 「…コイツ、使えねぇ新人クンでさ、オレが面倒見てやってるんだ。」 式の二次会で僕が挨拶した時の、ヤツのコトバだ。酔って上機嫌だったが、隅々まで無礼とか不躾とかいう表現でしか言い表せないようなイタさが溢れていた。『

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        記事

          世直しリョウくん 第一話:イタ過ぎたオトコ①

          「いいかオマエ、結婚なんてそうそうするもんじゃないぞ。オレなんてもう何回後悔したか覚えてもないよ…」 「いくら美人って言ってもそのうち見飽きるし年も取る。それに毎日一緒にいりゃ目に入るのは何の化粧っ気もないすっぴん姿だしな。」 斜向かいに座った5歳先輩の男は、最近この手の愚痴が多くなった。正直面倒極まりないが、心理学部で人間心理やコミュニケーションの実技を学んだ僕にはこの手の『面倒なヤツ』の相手は苦手ではない。 「そうですか、大変そうですね。じゃあ、気を付けますね。」 冷た

          世直しリョウくん 第一話:イタ過ぎたオトコ①

          ボクは、世捨て人になりたい

          古代インドの識者が進んだ人生のカタチ、それが「四住期」。話せば長く、みなさんきっと飽きちゃうので、めちゃ簡単に書きますね…そういや前にもこんなん書いたかも… 第一の「学生期」。これは若い頃に知識や経験を学び、教えを得ることで先の人生に役立つスキルを身につける時期です。 第二の「家住期」。これは社会人として、一家の長として家庭を成し仕事に励む時期です。 そして第三の「林住期」。古代インド社会では50歳を過ぎれば社会や家庭での役割を終え、修行や瞑想に励むことで自らと向き合い

          ボクは、世捨て人になりたい

          カオスな時代 ver.2~オタクの中心で愛を叫ぶ

          オトコ達は最初こそ戸惑っていたものの、今やノリノリになって舞いと雄叫びを繰り返し、一度は萎えかけたココロが次第に昂っていくのを感じていた。精神が高揚するとはこういうのを言うのだろう。死んだサカナの目はいつしか生き生きとした輝きを取り戻し、霊験あらたかな御神木を前にひたすらに舞と雄叫びを繰り返した。ボクはといえば、舞に集中しようにも前の女子から目が離せなくなっていた。いや、正直に言えば彼女の胸から目が離せなくなっていた。自由を求めて舞踊るその様は、『バインバイン』、『プルンプル

          カオスな時代 ver.2~オタクの中心で愛を叫ぶ

          カオスな時代 ver.1~運命の出会いと夢の先

          その夜、ボクは人気のない山間の集落にいた。というか、連れてこられた…。でも何者かに拉致された、というのは少し言い過ぎだ。「自ら好き好んでのこのこ付いていった」というのが正直な表現だろう。 どうも記憶が定かでない。クスリの類を盛られた訳ではないが、ひどい衝撃を受けたせいなのだろう。ただの自己嫌悪と現実逃避の結果、ただそれだけだが、辺りを見回せば死んだような眼をしたオトコ達の群れが力なく立ち尽くしていた。そしてボク同様に打ちひしがれている…コイツら同類か…。ボクはこの状況を前に

          カオスな時代 ver.1~運命の出会いと夢の先

          蠢く想い

          朧月夜に 絆されて  想い蠢く 掻き乱す 儚きものと 眺めせし間に 秘めし心ぞ 騒ぎ出す 蕾み膨らめば 麗しき 花散りゆけば 悼ましき  時の流れは 絶えずして もとの水には 在らざるを 幾度噛みしめ 呑み干せど 乾きし想い 遙か彼方へ 世に馴染まぬは 望みならずや 満ちた暮らしは 望み叶わん ひとり宴に 星はさざめく 揺蕩う空の 西へ東へ 一夜の想い 願わくば 在りや無しやと 何処にか在らん   イラストは、いつものふうちゃんさんです。 本当に、いつもあり

          蠢く想い

          "ムダ"の意味

          「皆さん、今を生き抜くには「効率化」の追求は避けて通ることのできない問題です。かつてこの世の中には様々な「ムダ」がはびこっていました。」 今ではすっかりお馴染みとなった、動画サイトでの通信販売番組。一昔前ならテレビショッピングを良く見かけたものだが、令和も頃合いとなった今ではこうした動画の報が一般的だし、人気もある。そもそも購買層のメインは20代後半から40代なのだし、視聴するだけの高齢者がテレビに集まっている現状では致し方のないことだろう。商品自体も「若者および主婦層」が

          "ムダ"の意味

          ニートな気分 ver.3

          僕が外界と交わる唯一の手段、それがSNSだ。僕の生きる聖域は狭い六畳間の部屋だけで、外部との通信は中古のPC機に頼っている。毎日夕方に目覚め、ニュース記事を眺め世間の情報を集めたら、後は動画を眺め、アダルトサイトを徘徊し、深夜になると同じような連中が集うSNSに辿り着く。いつもの連中、冷やかし目的の新規の奴もぞろぞろと入ってくるのがいつもの光景だ。 『乙ですw』 『www草生えたwww』 いつもの当たり障りのない書き込みが続くのだが、まるで互いに生存確認しているかのように

          ニートな気分 ver.3

          ニートな気分 ver.2

          「あのねえ、来月から入所施設のお世話になることにしたよ…いよいよムリも効かなくなってきたようだしね…昨日ケアマネの佐々木さんと相談して、そうして決めたんだ。アンタも良い歳なんだから、いい加減キチンとしなきゃダメだよ。いつまでもそうやってゴロゴロして。本当お天道様に申し訳ないよ…」 そう寂しそうに呟いた、皺だらけの老婆の顔はひどく疲れていた。もう何年も僕の目を見て話す事はなく、視線の先は遠くの景色か記憶の中にでもあるようだ。積年の苦労の記憶が僕に言い聞かせることを諦めさせたの

          ニートな気分 ver.2

          ニートな気分 ver.1

          「躺平主義」、これは現代中国の行き詰まった若者世代の声を代弁しつつも、深刻な社会問題を痛烈に皮肉った表現だ。日本語に訳したら「寝そべり主義」だが、かつてのバブル期以降の日本社会と同様の圧倒的な不況不景気の波に襲われた中国社会の現状を反映している。苦労して大学を卒業した挙げ句、新規の就職先もないまま路頭に迷う若者世代の苦悩と嘆きの産物である。そして「未来を諦め、体制に反発することもなく、ただ日々を寝て過ごす」ことで閉塞感漂う現代中国に抗いつつ生き抜く意思を表している。一党独裁か

          ニートな気分 ver.1

          逢えないヒトに

          逢えない女に 想い寄せれば かつての想い 心震わす なけなしの恋 儚き想い 愚かな我が身 焦がれ焦がした 秋の夜更けに 春思う日に 我が世我が世と 自惚れ報う 想いは続く 身の尽きるまで 燃えて盛るぞ もどかしき いっそ燃えよと 枯れてしまえと まだ会えぬのか もう会えぬのかと 過ぎ去る日々ぞ 時を織りなす 抗え足掻けど 容赦なき 身勝手我が儘 責めて願えど せめて笑えよ 月に祈れど 春待つ夜に 星ぞ瞬く 宵の暮れゆく いつ果てるまで イラスト 「ふうちゃん」

          逢えないヒトに

          言の葉の行方ver.4

          目の前のベッドに横たわった男の頬はこけ痩せ細り、生気を失いつつも眼光だけが鋭く光っていた。その視線が僕を射貫くと、僕の足は震えが止まらなかった。『帰りたい。』そう思いつつ、でも帰ってどうするんだ。僕はこのままじゃ何もない、これからも何もないだけの存在だ。だからここまで来たんだ。『力を、ください。』思わずそう思った僕は、一体誰に何を祈っているのだろう。心の中は激しく乱れ思考はまとまらないまま、僕は何度も同じ思考を螺旋を描くように繰り返していた。 「…どなた、ですかな?」 男の

          言の葉の行方ver.4

          言の葉の行方ver.3

          気づけば僕は、涙が止まらなくなっていた。そこには何の悪意もなく、ただただ悲しい事実とその結果の悲しい現実があるだけだった。幸せだった家族の形がその男の義憤に駆られた行動によって全てが壊れていく様は、読むのが正直辛かった。もう会えない娘にもう一度会いたい、自分が生きた証を伝えたい。妻が、娘の母親が亡くなったことを人づてに聞き、自らの死期も悟った男は必死の思いでこの手紙を書いたのであろう。文字遣いの丁寧さにも、手書きの文字の書体にも、この男の几帳面さと娘への思いが溢れていた。文字

          言の葉の行方ver.3