- 運営しているクリエイター
#毎日note
【読書メモ】ドナルド・スーパーの入門書としても読める!?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)
一冊の書籍を読むだけで多くの心理学研究者のポイントをここまで理解できる書籍はなかなかありません。溝上先生の『自己形成の心理学』は心理学領域を学ぶ大学院生にとってありがたい書籍です。今回は、ドナルド・スーパーについて言及されている箇所をまとめてみました。
役割葛藤とアイデンティティ現代において私たちの社会は多様なものになっています。そのため、私たちが担う役割も多岐にわたります。こうした役割葛藤とア
【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)
人が幸せを感じることと、ライフキャリアとはどのような関係があるのでしょうか?本論文では、さまざまな変数を用いて両者の関係性を具に分析してくれていて、ライフキャリアについて考察する上で一読の価値がある内容です。
男性より女性の方が幸福度が高いが。。。まず、日本人の男性と女性とを比較した場合、幸福度も人生満足度も女性が有意に高いという結果が出ています。まあ、そんなもんかなぁという気もします。(下表の
【論文レビュー】組織への複雑な感情を明らかにする尺度について:Kreiner & Ashforth(2004)
組織アイデンティフィケーションにまつわる様々な概念はいかに測定することができるのでしょうか?いわば、組織への複雑な感情を測定する尺度について書かれた論文を読んでみました。
組織アイデンティフィケーションとは何か私が組織アイデンティフィケーションについて興味を持っているのは高尾先生の2012年の論文を改めて読んだからです。同論文の所感を書いた際に、組織アイデンティフィケーションとは何か、組織コミッ
【論文レビュー】準備型のキャリア vs. 適応型のキャリア:松本(2015)
キャリアを捉える概念はあまりに多く、それぞれの関連性や相違点が今一つわかりません、少なくとも私には。そのため、それぞれの概念の布置連関を整理しようと試みてくれる本論文のような存在は大変ありがたいものです。ただ、「これが唯一無二の正しい分類だ!」というものは本論文も含めてありませんので、「こういう切り口もあるのだな」というように観点の面白さを味読いただくとよろしいかと思います。本論文では、準備型のキ
もっとみる【読書メモ】『ふつうの相談』(東畑開人著)
著者の書籍のファンになり乱読状態なのですが、本書は、ウィットの効いた軽妙な語り口を想像して読み始めたらしっかりした内容かつ少々硬い文体で驚きました。『心はどこへ消えた?』から『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』へと読み進めた身としては少々面くらいましたが、エッセンスのなるほど感は著者の他の書籍と同様に高いです。
ふつうの相談とは何か私が読み飛ばしただけなのかもしれませんが、本書のタイトルにもな
【論文レビュー】2020年代の日本企業の中途採用はどのようになっているのか?:労働政策研究・研修機構(2022)
本論文では、かつては終身雇用とまで言われて称揚されていた(今も?)日本企業の長期勤続システムについて焦点が当たっています。中途採用が日本の雇用社会に定着しつつある中で、長期勤続システムにどのような影響があるのかについて考察されています。
ホワイトカラーの長期勤続効果という未踏の地長期的に雇用されることによる従業員の習熟については小池和男氏の一連の知的熟練に関する研究群が有名です。本論文では、製造
【論文レビュー】「決める」キャリア論とは何か:下村(2008)
スーパーのキャリア発達論は、見方によっては役割や段階によって「決まる」キャリア論でした。しかし、環境変化が激しい現代においては個人と社会との双方向的なダイナミクスによって「決める」キャリア論が求められる範囲が広がってきたと言えます。
D・スーパー以降のキャリア論の前提発達論型のキャリア論は、D・スーパーで一つの極致に至ったとされています。たとえば、彼のライフ・キャリア・レインボーが有名ですが、お
【論文レビュー】若年期の転職はその後の職業生活にどのような影響を与えるのか?:労働政策研究・研修機構(2022)
転職が増えつつも、まだ日本の雇用社会では浸透しきっていないと言われることがありますし、実際にそのような傾向があるとデータでは言われているようです。雇用に関するいくつかの報告書で言われていることを、転職に焦点を絞ってざっくりいえば、①全体として転職率は増えていない、他方で②若年層については転職率が増加傾向、というトレンドのようです。
若年期の転職は推奨できない!?詳細を知りたい方は、公開されている
【論文レビュー】人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の現状について:労働政策研究・研修機構(2020)
キャリアは個人が主体となって開発する、という考え方が日本企業でも一定の市民権を得てきたようです。では、それに合わせて、企業側の雇用管理はどのように変化してきているのでしょうか?
異動配置の現状まず注目したいのは、異動配置です。何らかの制約がないケースであれば、企業には従業員に対する異動配置の権限はあるものです。だからと言って、企業が無制限かつ自由に従業員の異動配置を行うことは稀でしょう。なぜなら
【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)
先日、ある勉強会に参加して対話する過程で、様々なキャリア理論を深掘りしたいなという意欲が高まりました。特定の概念の背景を知るためには理論の深い理解は必要ですし、キャリアって概念がたくさんあるのでそれぞれの関係性を考察するためにも必要かなという思いです。まずは日本語で見取り図を得ようとすると、やはり坂柳先生に辿り着くことになるわけです。
マッチング型・発達論型の見取り図本論文では、キャリア理論を内
【読書メモ】『問いのデザイン』(安斎勇樹・塩瀬隆之著)
2000年代前半に傾聴やコーチングといった言葉とともに質問力が流行った時期がありました。カウンセリングや臨床心理といった心理学(特に心理構成主義)の考え方に依拠しながらある程度は定着したように感じます。本書は、学習論をベースにして問いを扱い、質問や発問とは明確に分けて捉えています。社会構成主義に基づきながら、個人の変化や他者との関係性の変化を促し、個人として組織としての創造性の発揮に繋がる、という
もっとみる【論文レビュー】能力開発の主体は個人ではなく企業である!?:労働政策研究・研修機構(2023)
キャリア開発の主体は個人にあるとするキャリア自律が日本企業でもよく言われるようになってきました。では、能力開発についてはどうなのでしょうか?企業が開発主体なのか、個人が開発主体なのか、どのように企業では捉えられているのでしょう。労働政策研究・研修機構さんが調べてくれています。
能力開発の主体は企業まず結論から言うと、ほとんどの企業では、企業が能力開発の主体であると回答しています。
こちらの表を