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#論文レビュー

【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)

【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)

人が幸せを感じることと、ライフキャリアとはどのような関係があるのでしょうか?本論文では、さまざまな変数を用いて両者の関係性を具に分析してくれていて、ライフキャリアについて考察する上で一読の価値がある内容です。

男性より女性の方が幸福度が高いが。。。まず、日本人の男性と女性とを比較した場合、幸福度も人生満足度も女性が有意に高いという結果が出ています。まあ、そんなもんかなぁという気もします。(下表の

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【論文レビュー】組織への複雑な感情を明らかにする尺度について:Kreiner & Ashforth(2004)

【論文レビュー】組織への複雑な感情を明らかにする尺度について:Kreiner & Ashforth(2004)

組織アイデンティフィケーションにまつわる様々な概念はいかに測定することができるのでしょうか?いわば、組織への複雑な感情を測定する尺度について書かれた論文を読んでみました。

組織アイデンティフィケーションとは何か私が組織アイデンティフィケーションについて興味を持っているのは高尾先生の2012年の論文を改めて読んだからです。同論文の所感を書いた際に、組織アイデンティフィケーションとは何か、組織コミッ

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【論文レビュー】準備型のキャリア vs. 適応型のキャリア:松本(2015)

【論文レビュー】準備型のキャリア vs. 適応型のキャリア:松本(2015)

キャリアを捉える概念はあまりに多く、それぞれの関連性や相違点が今一つわかりません、少なくとも私には。そのため、それぞれの概念の布置連関を整理しようと試みてくれる本論文のような存在は大変ありがたいものです。ただ、「これが唯一無二の正しい分類だ!」というものは本論文も含めてありませんので、「こういう切り口もあるのだな」というように観点の面白さを味読いただくとよろしいかと思います。本論文では、準備型のキ

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【論文レビュー】キャリア自律を促す企業は何が違うのか?:藤本(2018)

【論文レビュー】キャリア自律を促す企業は何が違うのか?:藤本(2018)

現在、大企業をはじめとした日本企業では、キャリア自律を浸透しましょー、というメッセージが発せられるようになってきています。しかし、どの程度キャリア自律がすすんでいるかは企業によってマチマチです。本論文ではキャリア自律促進企業がそうでない企業とどのような相違があるのかを明らかにしています。

キャリア自律促進企業とはキャリア自律促進企業とは、労働政策研究・研修機構(JILPT)の2016年の調査に基

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【マネジメント】『職場』の見方を変える書籍!関わりあう職場のマネジメントを読んで(鈴木, 2013)

【マネジメント】『職場』の見方を変える書籍!関わりあう職場のマネジメントを読んで(鈴木, 2013)

「職場」のマネジメントにおいて必須の書、ともいえる、神戸大学・鈴木先生の書籍をようやく読了しました。この「関わり合う職場」という表現に、職場の持つさまざまな特徴が集約されており、学術書ながらとても実践的な書籍だと感じました!

どんな書籍?

本書は、相互に従業員が関わり合う組織や職場において、他者を助ける行動ややるべき事をきっちりこなす行動、そして仕事における積極的な創意工夫が行われる仕組みや、

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【論文レビュー】2020年代の日本企業の中途採用はどのようになっているのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

【論文レビュー】2020年代の日本企業の中途採用はどのようになっているのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

本論文では、かつては終身雇用とまで言われて称揚されていた(今も?)日本企業の長期勤続システムについて焦点が当たっています。中途採用が日本の雇用社会に定着しつつある中で、長期勤続システムにどのような影響があるのかについて考察されています。

ホワイトカラーの長期勤続効果という未踏の地長期的に雇用されることによる従業員の習熟については小池和男氏の一連の知的熟練に関する研究群が有名です。本論文では、製造

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【論文レビュー】「決める」キャリア論とは何か:下村(2008)

【論文レビュー】「決める」キャリア論とは何か:下村(2008)

スーパーのキャリア発達論は、見方によっては役割や段階によって「決まる」キャリア論でした。しかし、環境変化が激しい現代においては個人と社会との双方向的なダイナミクスによって「決める」キャリア論が求められる範囲が広がってきたと言えます。

D・スーパー以降のキャリア論の前提発達論型のキャリア論は、D・スーパーで一つの極致に至ったとされています。たとえば、彼のライフ・キャリア・レインボーが有名ですが、お

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【論文レビュー】若年期の転職はその後の職業生活にどのような影響を与えるのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

【論文レビュー】若年期の転職はその後の職業生活にどのような影響を与えるのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

転職が増えつつも、まだ日本の雇用社会では浸透しきっていないと言われることがありますし、実際にそのような傾向があるとデータでは言われているようです。雇用に関するいくつかの報告書で言われていることを、転職に焦点を絞ってざっくりいえば、①全体として転職率は増えていない、他方で②若年層については転職率が増加傾向、というトレンドのようです。

若年期の転職は推奨できない!?詳細を知りたい方は、公開されている

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【論文レビュー】リモートワーク時代における能力開発支援の重要性:荒木(2023)

【論文レビュー】リモートワーク時代における能力開発支援の重要性:荒木(2023)

本論文では、リモートワークの導入が進んだ現状において、従業員が自己学習するための環境や影響要因について研究しています。結論から言えば、企業の能力開発支援に対する従業員の知覚(Perceptions of Developmental HR Practices:以下PDHRP)がプロティアンキャリア志向を部分媒介して、リモートワーク下の従業員の自己学習にポジティヴに影響を与える、ことを明らかにしていま

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【論文レビュー】人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の現状について:労働政策研究・研修機構(2020)

【論文レビュー】人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の現状について:労働政策研究・研修機構(2020)

キャリアは個人が主体となって開発する、という考え方が日本企業でも一定の市民権を得てきたようです。では、それに合わせて、企業側の雇用管理はどのように変化してきているのでしょうか?

異動配置の現状まず注目したいのは、異動配置です。何らかの制約がないケースであれば、企業には従業員に対する異動配置の権限はあるものです。だからと言って、企業が無制限かつ自由に従業員の異動配置を行うことは稀でしょう。なぜなら

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【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)

【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)

先日、ある勉強会に参加して対話する過程で、様々なキャリア理論を深掘りしたいなという意欲が高まりました。特定の概念の背景を知るためには理論の深い理解は必要ですし、キャリアって概念がたくさんあるのでそれぞれの関係性を考察するためにも必要かなという思いです。まずは日本語で見取り図を得ようとすると、やはり坂柳先生に辿り着くことになるわけです。

マッチング型・発達論型の見取り図本論文では、キャリア理論を内

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【論文レビュー】能力開発の主体は個人ではなく企業である!?:労働政策研究・研修機構(2023)

【論文レビュー】能力開発の主体は個人ではなく企業である!?:労働政策研究・研修機構(2023)

キャリア開発の主体は個人にあるとするキャリア自律が日本企業でもよく言われるようになってきました。では、能力開発についてはどうなのでしょうか?企業が開発主体なのか、個人が開発主体なのか、どのように企業では捉えられているのでしょう。労働政策研究・研修機構さんが調べてくれています。

能力開発の主体は企業まず結論から言うと、ほとんどの企業では、企業が能力開発の主体であると回答しています。

こちらの表を

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【論文レビュー】キャリア自律から離職への影響を和らげる組織の役割とは?:黒沢・下村(2023)

【論文レビュー】キャリア自律から離職への影響を和らげる組織の役割とは?:黒沢・下村(2023)

本論文では、個人がキャリア自律しているという感覚が高まると離職意向も高まる傾向があり、特に若年労働者ほどその傾向が顕著であるとしています。その上で、キャリア自律自体は個人にとって必要不可欠であるとした上で、働いている職場が快適であるという感覚を持ちながら働けるように組織が支援・整備することで、キャリア自律から離職意向への影響を緩和できるとしています。

自律的キャリア観まず、本書では自律的キャリア

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【論文レビュー】組織社会化とキャリア・アダプタビリティ:Cai et al.(2023)

【論文レビュー】組織社会化とキャリア・アダプタビリティ:Cai et al.(2023)

中途入社社員や新卒入社社員が新しく組織にエントリーし、組織になじんでいくことを組織社会化と言います。組織社会化を促すものには、①組織が行う組織社会化戦術と、②個人が行うプロアクティブ行動の二つがあります。本論文では前者の組織社会化戦術が扱われていて、ジョブ・エンべディッドネス(Job Embeddedness)を媒介してキャリア・アダプタビリティに影響する、ことを明らかにしています。

組織社会化

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