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「いい写真」の在るところ
仕事柄、「カメラが欲しいんだけど、何を選べばいい?」とか、「写真の撮り方を教えて」といった声をかけられることが多い。僕は写真家ではないのだけれど、写真雑誌の編集をしたり、写真教室の運営、写真展の企画など、「写真」にまつわるありとあらゆる事業を展開している少し特殊な会社に、もうかれこれ10年ほど勤めている。
「写真を撮る」職業ではないので、細かな撮影技術を教えることはできない。ただ、露出やシャッタ
制御不能な僕たちの日常 | 金原ひとみ『アタラクシア』を読んで
コロナ禍になってから、コントロールできないことが次々と目の前に現れ、戸惑うことが多くなった。仕事は止まり、旅には行けず、人には会えない。多くの人が同じように感じていることだろう。自分より悲痛な思いをしている人がたくさんいることもわかっている。だが、どんなにささやかでも制御不能なことが身に降りかかる不安な日々を長く過ごしていると、平穏な暮らしからは遠ざかっていると感じざるを得ない。
とはいえこの状
余白の町で豊かさを考える
2020年10月上旬。半年ぶりの東京。渋谷駅に降り立ち、目の前に流れていく景色にひどく混乱していた。マスクをしながら無表情で行き交う人々、そこかしこに貼られた広告からこちらに向けられるタレントたちの笑顔、どこからともなく聞こえる流行曲。光、色、音、匂い。街の情報の多さに目が回る。目から、耳から、鼻から入り込んでくる情報たちに、自分の「時間」をジリジリと奪われる感覚にとらわれていた。半年前まで、僕は
もっとみる冬が好きなのかもしれない
身体中を凍えさせる冬が、あまり好きではない。涼しい秋が好きだし、暖かい春が好きだし、冬よりはまだ夏の方が好き。
と、思っていたのだけれど。
冬もあんがい、悪くないなと思うことが増えた。
あったかい布団に包まれて動かない休日の朝のが好きだし、晴れた日に肺に吸い込まれる冷たく透明な空気が好きだし、歩いていると少しずつ暖かくなる身体の感覚が好きだし、帰り道きりりとした夜の冷気がほほに触れる感じが好
「この場所」であること
2020年初めての展覧会鑑賞は、東京都現代美術館でした。
「ダムタイプ|アクション+リフレクション」
「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」
「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」
「MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ」
展示自体の感想を、常設展以外をひと言づつ。
ダムタイプは、彼らの活動やその時代背景、要するに「文脈」とい