マガジンのカバー画像

お届けポニー便

14
私のイラストやオブジェ達が、話しかけてきます。 そこでポニー便をお願いし、お届け先はポニーにおまかせすることにしました。 おしゃべりを聞いていただけたら嬉しいです。
運営しているクリエイター

記事一覧

小石の夢

小石の夢

おれは小石。昔は神社の上で、大きな木の根に抱え込まれた大きな岩の一部分だった。
 ある日のこと、ポロリとはがれ落ちて神社の端っこにいたけれど、大水の出た日に田んぼに流され、水の中で見る水面に心奪われていると、お百姓さんの手で土手に放られた。
 土手の小石はなんだか田んぼを守っているようで、いるかいがあるものだと思っていたら、子供のポケットに入れられ小学校の校庭に下ろされた。
 掃かれて隅に寄せら

もっとみる
やっかいと物好き

やっかいと物好き

 嵐の中、ポニー便のニポさんと鳥のリトさんが我が家に避難してきました。
ニポさんはたてがみから水をしたたらせ、リトさんは羽を勢いよくふるっています。
お届け物を積み込んだ荷車も、土間の中。
 落ち着いたところでお茶を飲んでいると、ニポさんがしきりと蹄を気にしています。
小さな石をとってあげ「あなたの悩み事を取り外してあげましたよ」
と言うと、フン!と鼻息笑いをもらしてからブヒヒン、たぶんお礼を言わ

もっとみる
数字花

数字花

 好きな数字はいくつ?
壁に掛けた天使の絵に聞いてみました。
コンコンコンコンコンコンコン
どうやら天使は7が好きらしい。
私は5
GOGOGO!
ポンポン振って応援してくれる。

カエルの恋する小さな雲

カエルの恋する小さな雲

いつの間にか始まっていた、庭の片隅の恋模様。
カエルは言います。
「こんな良い感じの雨を降らせてくれる雲、初めて」
雲は言います。
「こんなにぼくの降らせる雨を喜んでもらえたの、初めてだ」
庭の片隅だけやけに雨音が響きます。

先日のあなたの作品で私の好きな瞬間

先日のあなたの作品で私の好きな瞬間

拝啓
雲太郎殿。
 お手紙を頂き、とても嬉しく思っています。
いつも惜しみなく様々な作品を私達に見せて下さる事、本当に感謝しています。
 あなたの作品の中に自分の心を見ることもあれば、思いもかけない発見をすることもある。
そして、あなたの作品がひとかけらも無い、真っ青な空の時でさえ、無い、というシンとした時空を感じさせてくれる。
 とても複雑で、一時として同じ形は無く、ここで見上げるのと、山の上

もっとみる
雲太郎より

雲太郎より

 はじめまして。
突然心当たりの無い手紙を受け取り、戸惑っておられることと思います。
ぼくは雲太郎と申します。
 先日の雲が空に手を差し上げる作品、見ていただけましたか?
あれはあなたと文通をしたいという願いを込めて作りました。
どうして?と不思議に思われる事でしょう。
じつは、ぼくの趣味は地上眺めなのです。
地上のみんながしていることを自分なりに消化し、それを雲ごねに反映させ、新たな雲模様を作り

もっとみる
落とし穴コロン

落とし穴コロン

 またしても、同じ落とし穴に落ちました。
『些細なことから大喧嘩、この先進むと深い穴あり』
そう手前にあった看板を引っこ抜きズンズン突き進みました。
慣れたもので、きちんと受身を取り、穴の底に上手に着地出来たものの、動く気になれません。
さてどうしたものか、一度落ちると這い上がるのが大変なのが落とし穴の困ったところ。
それに、実はここからしか見ることの出来ない景色が、ちょっと面白かったりするのです

もっとみる
明日は何が届くかな

明日は何が届くかな

 夕暮れ時の散歩中、ふと目を上げると、雲が両手を空に差し上げていました。

隠れていく太陽を、もっと遊ぼうと引き留めている?
星をちょうだいとおねだり中?
今日の日に感謝を捧げているのかも。
そして、神様からの贈り物を受け止める準備はばんたん。

 もしかしたら空の上にも宅急便があって、雲で出来たポニーと荷車が荷物を届けにくるところかも。

雲をつないで

雲をつないで

 私は注意深く空気をたぐり寄せ、雲を繋いでそこにブランコをかけました。
空と雲をまぜながら、ブランコは揺れます。
青を吸い込み白を吐く。
やがて周りじゅうが雲になり、静かに地上に降ろされます。

 目が覚めると畳の上、飲みかけのアイスティーはすっかり氷が溶けてしまっています。
壁に掛けた天使の絵は今日はやけに無口で、じっと外を見つめるばかり。
縁側の向こうでは、シジミチョウが庭を横切り、椎の木の葉

もっとみる
のぼせた信号

のぼせた信号

 炎天下、先ほどから我が家の木陰にはポニー便の荷車が置かれています。
小包達は木漏れ日を浴びながら、配達されるのを静かに待ち、配達員のポニーのニポと鳥のリトは土間のヒンヤリした空気にホッと一息ついているようです。
 リトが自分の翼で顔をあおぎながら言います。
「ほんとにね、長い坂を下ってくるうち段々と暑くなってきて、荷物を届け終わる前に、ニポが倒れてしまうんじゃ無いかと気がきじゃなくて、もちろん私

もっとみる
天袋の天使

天袋の天使

 引っ越して来てからまだ一度も開けたことの無かった和室の天袋から、何やらゴソゴソと音がします。
 元々このお家にあった木製の踏み台に乗り、おそるおそる戸をあけてみました。
開くにつれて、暖かな光がもれてきます。
まぶしさの中に居たのは、どこか懐かしいシルエット。
そうだ、前に住んでいた家の壁に掛けていた天使の絵。
確かどこかにしまい込んで、それからどうしたんだっけ?
 「やっと、見つけましたよ、こ

もっとみる
カエル雨に大いにウケル

カエル雨に大いにウケル

雨です。
今日はポニー便もお休みらしく、庭の向こうの小道は静かにけぶっています。
聞こえてくるのは雨音と、カエルのケロケロなく声だけ。
ケラケラ、ケラケラ、ケラケラケラケラ…………
ケラケラ?
カエル?
窓を開け、下をのぞくと、カエルが壁に張り付き……
「笑ってる?」
「だって、雨が雨が」
そうね、カエルにとって雨は恵み。
「だって、ケラケラ、雨が、ケラケラ、ぴちょん、ぴちょんて、まじうける~!」

もっとみる
重いものと軽いもの

重いものと軽いもの

 今日もカポカポ、ポニー便。
どうやら家の生け垣の味がお気に召したようで、気の向く時に立ち寄ってくれるよう。
 扉を開けると、ポニーの頭に緑の鳥が乗っています。
「こんにちは、私はリト。ニポの友達です」
「初めまして、コバサです」
「サバコさん、海のかおりのお名前ですね」
「‥‥そう、ですか‥」
「で、今日はですね、ニポが伝えたいことがあるというので、ついてきました」
「え?なんでしょう」
「ニポ

もっとみる
お届けポニー便

お届けポニー便

 はじめまして、sae.rurunnです。
人はみな色んなことを想像したり、妄想したり、するものですよね。
私のそんな想像達は今、鳴門の渦潮のごとくグルグル渦を巻き続けたり、迷路のなかで、出口を見失ってしまったり、おばあちゃんのように揺り椅子で眠りこけています。
 そこでポニー便をお願いし、お届け先はポニーにおまかせすることにしました。
カポカポ道をやって来て、玄関先でブヒヒンといななきます。

もっとみる