光田健輔論(39) 牢獄か楽園か(3)
光田健輔は『愛生園日記』に、「戦争末期の激しい空襲と戦いながら、食べられもしないイモヅルの配給をうけていた一般社会に比べたら、わずかながら耕作地をもち、海水で塩も作ることができる島の生活は、まだましであったかもしれない。」と書いている。この一文を読んだ人たちは何を思うだろうか。戦争の悲惨さや戦時下の暮しの苛酷さを読んだり聞いたりしている人びとは、多分そのままに「まだましであった」と理解するだろう。しかし実態はまったく違っていることを人びとは知らない。栄養失調と患者作業によって