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小鬼と駆ける者

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村を襲うゴブリンとそれを狩る男の戦い。強き者、力を持った者、それぞれの覚悟の話。【完結済】
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#ダークファンタジー

小鬼と駆ける者【縦書き版】

小鬼と駆ける者【縦書き版】

こんにちはギーの代筆者ナマケモノです。

さっそくですが、かねてよりベラゴアルドクロニクルの「縦書き版」を制作していまして、今後は整い次第、各物語をリリースしていきたいとおもいます。

とはいえ、縦書きをnoteさんで公開するのは不可能みたいなので、ファイルのアップロードという形になります。こちらとしても、はたしてちゃんとアップできているのだろうかという不安もありますし、ダウンロードという敷居の高

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小鬼と駆ける者 −その5

小鬼と駆ける者 −その5

 森の入り口でソレルは脇道に逸れ、ひときわ大きな古木の元で腰を落とす。三人が不思議そうに見ていると、彼は枯葉の中から、布に包まれた長細い物を取り出す。

「ダンナ、そいつは?」 髭づらの男が訊ねてくる。ソレルと同じくらい背の高い男だ。この男はゴゴルと名乗った。

 包んでいたボロ切れを解く。使い込んだ革の鞘に収められた長剣が現れる。抜いてみせると一同は感嘆の声をあげる。銀色に輝く両刃の剣。よく見る

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小鬼と駆ける者 −その6

小鬼と駆ける者 −その6

「どうするんです。おれたちゃどうなるんです」マスケスが取り乱す。

「警戒は怠るな。やつら今は目くらましを使って気配を消しているが、まだすぐそこにいる」ソレルは緩んだ弓弦を張り直す。

「でも、ここにいて、夜になっちまったら」ゴゴルも冷静さを失っている。

 まずいことはまずいぞ。ソレルは考える。皆すっかり怖じけずいている。小鬼どもめ。そういう意味ではあの雄叫びは充分に効果があったといえる。

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小鬼と駆ける者 −その7

小鬼と駆ける者 −その7

 三人がお互いの背後を守り合うという陣形は、小鬼対策、いや、戦いにおいては非常に有効な基本中の基本の手段であった。小鬼の最も恐ろしいところは、その小さな身体を活かして、集団で死角から襲いかかることだ。広い場所で、背後を気にせずに戦うとなれば、そう恐れる魔物でもない。よほど統制の取れている集団でも一度に襲いかかってくるのは三匹程度で、知能は子どもよりも弱く、眼に付いた者に向かい、短絡的に襲ってくるの

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小鬼と駆ける者 −その8

小鬼と駆ける者 −その8

 ウォー・オルグが継ぎはぎの玉座から立ち上がる。片手には丸太の先を尖らせた太い槍を持っている。腰にも二振りの手斧が見える。そいつが短い雄叫びを上げると、両脇に隠れていた手下どもが現れる。

 ゴブリンどもが手に持った武器を投げつけてくる。手斧、鋤、ナタ、割れたビンに投石。あらゆる物をソレルはかわす。

 「これでも戦術、というところか」彼は低く構え直す。

 が、姿勢を整える前にウォー・オルグの投

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小鬼と駆ける者 −その9

小鬼と駆ける者 −その9

 若者たちがゴブリンたちの大量の足跡を追うと、森は途切れ、薄暗い洞窟が姿を現した。しかし、そこに入る度胸は彼らにはなかった。洞窟からは、不気味な声が響いていた。

 若者たちが遠巻きに眺めていると、不意に何かが飛び出してくる。

 彼らはのけぞりさらに距離を開けるが、その現れた影が人間だということに気がつくと、ほっとして、その男に近づいていく。

「なんだ、マスケスのおっさんじゃねえか」

「ひと

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