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小説「真夜中に目が覚めた」

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「真夜中に目が覚めた」で始まる、結婚とは、夫婦とは、家族とは、幸せとはを綴った短編連作。
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2018年11月の記事一覧

【第十三夜】気の利かない男

【第十三夜】気の利かない男

真夜中に目が覚めた。

昨日寝る前、かーちゃんが具合悪くて寝てるのをいいことに、内緒で冷蔵庫を開けてジュースを飲んだからだ。

暗い中、ちょっと怖いけどトイレに行く。おねしょしなくてよかった。明日、かーちゃんが元気になってますように。

「とーちゃん、ケーキ買いに行こうぜ」

かーちゃんの誕生日がやってきた。ちょうど日曜日だから、とーちゃんと3人でディズニーに行く約束をしてた。なのに、肝心のかーち

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【第十四夜】幸せの温度

【第十四夜】幸せの温度

真夜中に目が覚めた。

暗闇の中で、ママの手を探してぎゅってしたら、ママがぎゅって握り返してくれた。ママは体温が低い。いつも触られるとヒヤッとする。サチコは体温が高いから、冬はいつもママがサチコにくっついてあったまって、夏はサチコがママでひんやりする。サチコとママの手のひらの体温が一緒になる頃にはまた眠りについていた。

「いってきます!今日は絶対7時には帰るからね!」

ママはいつもお仕事が忙し

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【第十五夜】涙の理由

【第十五夜】涙の理由

真夜中に目が覚めた。

夢を見ていた。佐知子に振られて、開かないドアの前に立ち尽くす若い頃の自分。

一瞬、現実に意識が戻り、夢うつつを彷徨いながら、再び眠りに落ちると、今度は家路につく途中、美幸ちゃんとさっちゃんに会って、一緒にスーパーに買い物に行く年老いた今の自分がいた。

目が覚めたとき、また泣いていた。年をとると涙もろくなる。

昨日も勝手に涙が溢れてきた。4年ぶりに食べたマイキーのチーズ

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