よひとよ(夜一夜)

時代を問わない短編(七千~八千字)が主です。以前別名で投稿していましたが、長編に手を出…

よひとよ(夜一夜)

時代を問わない短編(七千~八千字)が主です。以前別名で投稿していましたが、長編に手を出して途中でへばった前歴持ち。反省かたがた再挑戦です(短編に別けた長編も予定)。読んで頂ければ励みになります。無料ですが、一部(政治・社会(注)右に振れてます)に有料あります(返金可能)。

最近の記事

 赤い龍虎 - Short Story - 2ー2   (前週の続き・最終回)

いよいよ始まる座頭同士の真剣試合。 使うはともに得意の居合抜き。 互いに恨みは無いけれど、目先の銭に目がくらみ・・・ 注・(現用されていない””言葉があります) 釜太郎と前河が土俵のそばに立っている。 義兵が釜太郎に尋ねた。 「あの二人、本当に居合が出来るのか。これだけの騒ぎになってウソでしたではお前も一家も無事ではすまんぞ」 「もう遅うございます。なにせ賭け話しが先走りして一気に盛り上がり、見たことも無いほどの銭が一度にどっと入ってきましたもんで、止めるに止められず」

    •   赤い龍虎 - Short Story - 2ー1

      史上初めての二人の座頭(盲人)同士の決闘、ともに居合抜きの達人(らしい)、どんな勝負になるのか、ならないのか ・・・・・・  連載2の1 - 約6700文字・   赤い月が山の上に浮かんでいる。 空も赤みを帯び、流れる雲も赤く染まり、その中を何かが悠々と泳いでいる。 龍のようにも見えるが、泳ぎながら雲とともに流れていく。 すると次には虎のような獣が出てきてやはり泳いでいる。 やがて雲も去り、赤い月だけが照るただの宵の空になった。 空を見上げながら宿場の者はおどろき、囁き合

      • ----- サムライドドンパ ----- ----------- Short Story ----------

         信長が桶狭間で今川義元を討ち取った。 ただの若造だった信長が、駿河・遠江の守護代今川義元の首を取った。 「窮鼠猫を嚙む」というがまさにそのまんまだった。 「織田信長か、ようもやり遂げたものよ。度胸だけではない、運も味方にしておったのであろうの」 桶狭間の知らせを持ってきた薬売りに答えたのは、ここ立野の地を治めている立野学堂(以下学堂)だ。 「まさに仰せのごとく、戦は運否天賦にございます。強い、度胸、だけでは勝てませぬ。運も味方にせねば戦には勝てませぬ」 薬売りは学

        • 「魔界のメッセンジャー」 ---- Short Story ----        

                 買わされた奇怪な本は本ではなかった。          最近見かける黒く奇妙な鳥。          奇怪な本に始まる短い物語。   おかしな箱 電子も印刷も扱うネット出版社の編集部で働いている藤巻新伍(以下新伍)は24歳。  残業で今日も真夜中の帰宅になった。 都心も近いので人も車も多いが、新伍は歩きながらちょっと振り返った。 電車を降りたときから見知らぬ男につけられているのだ。 コートを着た大きな男で帽子をかぶり、手には大きなカバンを提げている。 新伍

         赤い龍虎 - Short Story - 2ー2   (前週の続き・最終回)

              タワマンブルース            -------- Short Story ---------

          近未来、超高層のタワーマンションに起きた信じられない欠陥の数々。 建て替えの莫大な費用、出て行く住民、出るに出られぬ住民、そしてアイツがやってきた。 夕暮れの赤い空に60階建て高さ300メートルのタワーマンション(以下タワマン)がそびえている。 都内のその場所にそびえ立ったのはおよそ4年前だ 12階の高さ45メートルまでは横幅150メートルのビジネス棟が拡がり、その上に高さ260メートルの住居棟が直立している。 住居棟とビジネス棟の全部屋は完成前にはすでに完売となり、全戸

              タワマンブルース            -------- Short Story ---------

               「わらび餅」              -- Short Story 2-2 --

          いよいよ工事が始まった。 庭に小西と杉尾がユリコを挟んで立っている。 ヘラヘラしながら杉尾がユリコに言う。 「工事日和のいい天気になりましたね」 沈黙・・・ ユリコは杉尾の誘いに乗らない。 そもそも杉尾が嫌いなのだ。 他社のことやお客についてもしばしば悪口と批判に明け暮れる、その性格が気に入らないのだ。 今も思っている。 (あれでよく営業が務まるもんだわ。お客を脅して仕事取ってるに違いない) しかし自分の都合しか考えない杉尾にユリコの気持ちは分からない。 (また小泉か)と杉尾

               「わらび餅」              -- Short Story 2-2 --

          「愛なき世界の」 - Short Story -

           場面は近未来。 ミサは48歳、内科の女医で総合病院の勤務医だ。 勤め先は何度か変わったが、今の病院ではすでに5年になる。 病院に停年は無く、元気ならいつまででも、百を超えてでも働ければ構わない、というのが病院の姿勢だ。 現在の勤務医の最高齢は115歳、内臓もほとんど入れ替えておらず脳にチップも入ってはおらず、仕事も確かで早い。 ミサにとってもあれこれと相談できる貴重な115歳だ。 ミサも働ける限りここで働きたい、ここが終の棲家ならぬ職場と思っている。 「もっともこの先70

          「愛なき世界の」 - Short Story -

               「わらび餅」              -- Short Story 2-1 --

           朝の8時、「リフォーム立建」社長の泉を前にして営業の小西と杉尾の三人が事務所で話し合っている。 泉が尋ねる。 「であの小池さんの件、手がかりにするシロアリ駆除と床下換気扇はいけそうですか」 杉尾が答える。 「今日床下に入ってみる予定です」 「あなたが入るの」 「いいえシロアリ屋の江田と電気屋の玄葉を入らせます」 「江田さんて、あの理屈っぽい人かァ。あの人、前職は公務員ですよね。シロアリ駆除の経験はあるの、大丈夫?」 「はい、見た目はシロアリ屋とは思えませんが、屋根のような

               「わらび餅」              -- Short Story 2-1 --

          「せむし(背虫)」 - Short Story -

          「信長は延暦寺を丸焼きにして僧から赤子女人までも皆殺しにしたそうじゃ」 「寺の仏は何してた。女子どもを残して逃げたか」 「いや最初からおらんかった」 「そうじゃな」 苦笑いしながら談笑している数人の男のそばを背中を丸く曲げた男が通り過ぎていく。 一人が言った。 「なんや『せむし(以下背虫)』か、背中がよう曲がっておるの。それでは自分の足しか見えず、この夜中によう歩けるものじゃ」(注) 背虫は答えた。 「はいはい、足元しか見えませぬゆえ、かえって便利にございます」 「ハハそうか

          「せむし(背虫)」 - Short Story -

                「逢魔が時」

              ( 全約8千8百字 中ほどからは「有料」です )            ーーーーーーーーーー  「黄昏が夜に変わるころ、辺りは暗くなり、人やモノは見えるけれども見えにくい、そういう一瞬が『逢魔が時』である。 つまりは魔物という事象に逢う時間帯。 この魔物には決まった姿は無く、その時々に応じて千変万化する。 獣にもなれば石にも水にもなり時には人にも化けて人を誘い込む。 社会が進化し複雑化した現代では本来の魔物であった事象は減り、逆に人間そのものが魔物になった。 人に化

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          「 バックミラー 」 - Short Story -

          海べりにある巨大モール。 日曜の午前9時、里子は車に乗ってやってきた。 いつものように地下一階の駐車場に車を停めようとしたがすでに空きがない地下二階のサインが点灯している。 まだ空きがあるようだ。 地下二階の駐車場に入った。 駐車したところからモール入り口までは遠くはない。 歩いていると後ろに人の気配がした。 振り向くと誰もいない。 なんとなく、なんとなく不思議な感覚に襲われた。 なんだろ、と思いながら入り口に近づいた。 入り口の周りは透明ガラスだ。 里子の姿が映っているが、

          「 バックミラー 」 - Short Story -

          「AI(エーアイ)下剋上」-書き直し-     ------ Short Story 約1万5千字 -----     ・・・  一部有料あり  ・・・

          ・いまは21世紀末、2097年の春。 桜は散ったが、人類もやがて散ろうとしている。  日本の政治家は「政治屋」に堕落し、そのレベルは恐ろしいまでに劣化している。 原因はわかっている。 政治屋の総てが世襲であり、それも何代にもわたる有様で完全に家業化・利権化している。 種が腐っているのだから新芽も腐って出てくる。 代替わりのたびに劣化し、彼らは国家と社会の未来なんぞ興味もなく、国会は暗愚と凡庸の集まりになっている。 だが世襲議員たちは恥じることもなく、ロボットによる代理出席

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          「AI(エーアイ)下剋上」-書き直し-     ------…

          「都屋書林 」 - Short Story -

          「材木屋の養子である伝兵衛は女房に隠れて妾を囲うておったが、それがバレていまや離縁の瀬戸際じゃ。女房に離縁されそうじゃというのだから情けない。女房の肩腰を毎日もんでおったそうじゃが、その後どうなったか、これに書いてある、一枚六文じゃ、買わねば読めぬぞ、テケテントントン。 みちのくの某藩は主の奇行が表ざたになって家中は大騒ぎじゃ。数日前には何の落ち度もない腰元を斬り捨てたという。若いが優れた主という噂はウソであったそうな。ご公儀は静観しておるが、国許では主を替えねばお家がもたぬ

          「都屋書林 」 - Short Story -

          石炭御殿 - Short story -

          ・石炭御殿  城跡の取材を終えたサラは次に予定していた石炭御殿跡に向かっている。 サラは遺跡ジャーナリスト、この御殿跡を知ったのは城跡探訪の依頼が入ったときだった。 城跡に関係した資料を下調べしていると、近くにあるこの石炭御殿跡という文字が何度か出てきた。 ついでに調べてみると人身売買や汚職、不審死までからんでいる。 火事になって建物はすでに無いが、まずは現場にいかなきゃ始まらない。 必需品のスマホとメモ帳をバッグに入れ、いずれ機会があれば御殿について何か書くつもりでいる。

          石炭御殿 - Short story -

          「窓辺の花」 - Short story -

          外は寒そう、雪がふわふわ。 「冬来たりなば春遠からじ」 その冬も折り返しは過ぎ、日暮れは遅く夜明けは早くなってきた。 一歩一歩春に近づいている、と窓辺にいるとよくわかる。 こういうときは日本からはるかに遠いわたしの故郷を連想してしまう。 豪雪と熱波、乾燥と湿潤が混在するという厳しいところ、らしい。 加えて多種多様な民族の集まりで隣人が翌日には敵になるのは日常茶飯事という、らしい。 なにしろ行ったことがないので聞いた話しばかりだけど。 自然も人間も厳しく、血と泥にまみれた歴史の

          「窓辺の花」 - Short story -

          「寄り道」 - Short story -

          昔にタイムスリップしたような家並みが広がる下町。 真夜中過ぎのこと、バス停の標識のそばに突然フラッシュのような光とともに男の姿が現れた。 頭の皮が一部はがれ、鼻には横に切られた大きな傷があり、蝋人形のような顔をしている。 男は慣れた足取りで裏通りに入った。 しばらく歩き、大きな提灯が下がっている家の玄関前で足を止めた。 提灯には「下田興業事務所」と書き込まれ、玄関の表札には「下田仁助」とある。 下田仁助は昔気質(むかしかたぎ)のヤクザの親分だったが、不良外国人や売春、覚せ

          「寄り道」 - Short story -