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『記憶と感情のエスノグラフィー』を読んでは独り言・其の二

娘は絵を描くのが好きなようだ

日に日に上手くなっていると思う

日に日に変化していると言っても
いいのかもしれない

上手さは
ある意味で
価値判断でもあると
思っているからだ

見る人が変われば
上手さの評価は変わる

日々娘の絵の変化を見ている親からすれば
その変化は『上手くなっている』過程として認識され

初めて娘の絵を見た人が
上手いと思うかどうかは別の話だ

見ている世界が違う
そうも言えるのかもしれない

・・・・・・

先日

そんな娘が
空に浮かぶ雲を描いた

確かに

パッと見た際に
雲と認識できるものではなかったが
雲の複雑な模様を
何とか表現しようという工夫が
親バカな私に感動をもたらした

同じ絵を

LINEのビデオ通話で
実家の母に見せると
「何かの動物かしら?」
と問いかけられた

それを聞いた娘が
何を思ったかはわからない

そもそも聞いていなかったかもしれない

このような体験を通じて
見えるものの違いを感じ取っていくのかもなぁ

そんなことが頭に浮かんだ

娘が表現した雲を
どう見るのかは
見る人の解釈次第である

その解釈に対して
どんな相互作用が起きるのか
そして関係性がどう構築され
世界が広がっていくのか

生きていくことについて
思いを巡らせてみる

日々の出来事は
全て何らかの学びなのだと
再認識するのであった

・・・・・・

今日もまた

読んだんだか読んでいないんだか
積んだんだか積んでいないんだか
といった本達の中から一冊紹介し
心の琴線に触れた一節を取り上げ
ゆるりと書き記していきたい

今回はこちらの本を読んでは独り言

J-STAGEから
書評を添付させていただいた

『記憶と感情のエスノグラフィー』は
出版社のホームページはあるものの
本書のページが独立してあるわけではなく

Amazonのサイトを
うまく貼れなくなってから
出版社のURLを貼ってきた私としては
困ってしまったのだが

読み終えた後で書評も読んでみたいと思い
こちらに添付させていただいた

3分の1ほど読み進め
他の本に目移りした結果
長い間漬けていた本書

改めて最初から読み直している

何度読んでも
発見に溢れる本書

最後まで読み通そうと
心に誓うのであった

さてさて

そんな本書から

いつものように
引用する必要があるんだかないんだか
本来の引用の定義を考えては
自己ツッコミを入れつつ
noteの引用機能を用いて
引用させていただきたい

私たちは記憶のある世界を所与のものとして、私たちの「記憶」を記憶のない世界に生きている彼に与えようとする。その「記憶」は記憶のある世界で相互行為を継続していくには必須の資源だ。しかしその「記憶」は彼を混乱させる。時が止まった世界にいる彼にしてみれば自分はまだ若いのになぜ老人だらけの場所に送り込まれ、老人と一緒に活動に参加するように指示されるのかわからない。私たちの相互行為は記憶のない彼を記憶のあるこちらの世界に無理やり引きずり込もうとするのにも等しかったのだ。その抵抗が、度重なる質問と、「やりません」「関心ありません」といったこちらからの働きかけへの拒絶の態度となって表れる。
このように「記憶のない世界」からみると、先に記したスタッフと吉永さんとの軋轢は、「記憶のある世界」が吉永さんに一方的に「記憶のある世界」で相互行為を行うのに必要な記憶を(それも一片の紙に書いて与えるという乱暴さで)押しつけていた、そのことの暴力性に対する吉永さんの抵抗を示す象徴的な出来事だったのではないかと解釈できる。あるいはこうとも解釈できる。吉永さんは不安と苛立ちのなかで私たちとの接触を求めていたのであり、それを私たちが拒絶してしまった。そのことに吉永さんが怒った。

佐川佳南枝. 記憶と感情のエスノグラフィー ー認知症とコルサコフ症候群のフィールドワークからー. ハーベスト社, 2017, 18p

逆行性健忘と前向性健忘という
想起と記銘の障害である
コルサコフ症候群の吉永さんのお話が
語られる中での一節を取り上げた

私たちは見ている世界が異なる

学んできた知識や経験
それに伴って構築された
価値観や解釈も異なる

そんな他者同士が交わる中で
生きているのだと思うと

今回引用させていただいた
記憶のある世界とない世界の話は
日常の中での暴力的な行為を
自覚させられる契機となる気がする

そう思いつつ

暴力とは何か
改めて問いかけられている気もする

様々な概念を考えるきっかけとして
今後も読書を続けていきたい

そう思うのだった

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