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大事を済すには必ず人を以て本となす(三国志)

大事を済す(なす)には必ず人を以て本(もと)となす
今、人、吾に帰するに、吾何ぞ棄て去るに忍びんや(三国志)


大きな仕事を成し遂げるには、何よりも人が大切である。
今これだけの人々が自分を慕ってついてきてくれたのだ。
それをむざむざ見捨てて行けるか。

三国志に登場する劉備の言葉です。
三国志好きであればよくご存じの場面かと思います。

208年、曹操が荊州牧の劉表を討ち荊州の地を手に入れようと15万もの大軍を差し向けました。劉表は突然の病に倒れ、劉琮が家督を継承するも曹操に降伏してしまいます。

劉表の客将であった劉備は諸葛亮から劉琮を攻撃すれば荊州を支配できると進言されますが、劉表から生前に受けた恩義からこの提案を却下し、劉琮に降伏を翻意するよう面会を望むも叶わず、やむなく曹操軍から逃げる選択をします。

その逃亡に際して、曹操の支配を嫌った荊州の老若男女の領民10万人もの人々が劉備に帰順して付き従ったので、一向に進むことができなくなります。

曹操軍の追跡が目前に迫る状況で、家臣から劉備に「このままでは逃げ切れないので、領民を見捨てて自分たちだけで早く逃げましょう」と訴え出てきました。

それに対する回答が冒頭の劉備の言葉です。

結論からいうと、多少の犠牲はありつつもどうにか領民も劉備も生きて逃げることが出来ましたが、その過程で、張飛が一騎当千で大奮闘する長坂の戦いが三国志における数ある名場面のひとつです。

曹操を討ち取り、漢王朝を復興させるという大志を抱いているにも関わらず、自分の命惜しさに信じてついてきてくれた民を見捨ててしまうようなら何のための大志なのかと劉備は思ったのです。

無謀だと思う方も多いかもしれないですが、ここで民を見捨てて生きながらえて大志もクソもないという劉備の信念の強さを感じます。そして諸葛亮も趙雲も覚悟を決めて劉備の考えに賛同しますが、劉備に対してさらに信頼を深めた瞬間でもあったと思われます。

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劉備の言葉や曹操軍からの逃走劇を思い出す際に、松下幸之助さんの言葉も同時に頭に浮かびます。

「きみ、社員は大事にせんとあかんよ。わしが、店を始めたころや。そのころは、店自体も小さいながら、それでも、次第に発展しておったから、人を採らんといかんわな。それで募集すると。けど、誰も来ぃへんわけや、早い話。ところが、時折、応募して来てくれる者がいる。こっちはな、とにかく人が欲しいから、まあ、誰でもいいというわけやないけど、そこそこであれば、決めるんや。明日から、来なさいと言う。ところが、そう言って本当に明日から来てくれるかどうか、心配になる。翌朝、その子が来てくれるか、表の道に出て、角のところで、そっと覗いていて、遠くから歩いてくる彼の姿を見つけると、嬉しかったな。よう来てくれた。すぐに店に戻って、待つんや。そんな状態やったな。だから、その子を育てんといかん、立派な人に育てんといかん、と心のなかで誓っておったもんや」

「経営を進めていくと、いいときもあるし、悪いときもある。いいときには、それは、問題はありませんがね。悪いときには、会社を縮小せんといかんという場合も出て来ますわね。だから、縮小することは、決して悪いことではありません。縮小しなければ、その会社は潰れますからな。ただ、縮小するから、人が余るに決まってます。しかし、それを、簡単に余った人の首を切るということでは、経営者としては失格ですわ。その余った人を、どう活用するか。どう使うかということを、経営者は考えんといけない。これは、当然のことです。
そう、その余った人たちを使って、新しい事業を考え出す。常に、経営者は、いざというときの新しい事業展開の考えを持っておるということが大事ですね。
余ったら、首を切る。赤字になったら、社員の首を切る。そういう経営者は経営者たる資格はありませんわ。そういうことをしていると、会社は大きくなりませんね。大事な社員を、経営者が工夫もせず、新しい仕事の分野、事業も考え出すこともしないんですからね、失格と言われても仕方ないと思いますな。私は、そういう考え方で仕事をやってきましたね。社員は宝です、私にとっては。そんな宝を、捨てることは、ようしませんでしたよ」

人を大切にするという考えは誰もが反対できないことかもしれませんが、その深さや行動力においては、器を問われそうです。さすが血の小便が出るほど真剣に生きていた方の言葉には重みを感じます。

余談ですが、一方で、松下幸之助さんの考え方はもう時代遅れなんて声も一部にあることに軽いショックを受けました。

『トップマネジメント意識調査 2023』 <調査結果詳細>
https://jma-news.com/wp-content/uploads/2024/01/20240112_top_management_release.pdf

経営戦略への影響が想定される項目関心度第1位は「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」という結果のようですが、松下幸之助さんや稲盛和夫さん、渋沢栄一さんらの考え方はいかにも論語的な考え方で、ジョブズもどっぷり禅の信奉者ですから、経営者として求められる資質として掲げられいる「本質を見抜く力」の源は人への深い理解や考え方ですから、「古すぎ」と思われる人は温故知新を軽く思わず、古典を学んだ方がいいのではないのかと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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