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超短編小説 「途中」

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140字くらいの小説が入っています。よろしくお願いします。
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#猫

猫はロックを飲まない(140字小説)

猫はロックを飲まない(140字小説)

毎晩家でひとり、お酒を飲む。私が飲んでいる間、隣ではいつも猫がすやすやと寝息をたてている。最近、私は猫にロックグラスを購入した。私が飲むとき、猫にもウィスキーのロックを用意する。猫はロックなんか飲まないと思うけれども、私はこんな酒で、あんな酒で、夜を乗り越えてきたんだ。なんてね。

後悔(140字小説)

後悔(140字小説)

ある朝、早足で駅へと向かっていると「どこへ行くの」と声がした。見ると近所の猫がほぼ小走りで僕に並走している。「急いでるんだ」そう言うと僕は駅へと走った。途中、赤信号で止まったとき振り返ると、猫は少し寂しそうな顔をして立ち止まっていた。たぶん僕はそんな風に言うべきではなかったのだ。

つきあいのよい猫(140字小説)

つきあいのよい猫(140字小説)

つきあいのよい猫がいて(もちろん僕が勝手に思ってるだけかもしれないが)僕が仕事帰りに近くの公園で缶ビールを飲んでいるときなどよく寄ってくる。今日、大事な仕事でミスをした僕が公園で落ち込んでると、「そんな日もあるさ」とその猫は言った。猫はビールを飲むと少し顔をしかめて、げっぷした。

妻との出会い(140字小説)

妻との出会い(140字小説)

ある朝、家を出ようと玄関を開けると、待ちかまえていたかのように猫が一匹飛び込んできた。そのままにしておくわけにはいかないので、家の中で猫と追いかけっこをするはめに。なんとか猫を追いやることができたけど、結局、一時間ほど遅れて会社へ向かうことに。そんな日に出会ったのが、今の妻です。

猫の恩返し(140字小説)

猫の恩返し(140字小説)

家を出ると猫が待っていた。最近見かける野良だ。昨夜は雨風が強かったので、もしかしたらと思い、ガレージを少し開けておいたのだ。僕が歩くと後ろを付いてくる。コンビニに寄り缶コーヒーを持ってレジに行くと、猫は読取機に肉球をかざし、「にゃー」と鳴いた。どうやら支払いが完了したようである。

猫の国

ある夜のこと、その日は仕事が長引きいつもより帰りが遅かった。駅へと向かう道は人気がなくもの寂しい。道の脇に猫がいる。近寄ると、猫はスルスルと歩き出し、前方の車の下に潜り込んだ。覗きこむ。猫はいない。「車の下には猫の国の入り口があるんだよ。」声がして振り返ると、そこには別の猫がいた。
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人間になった猫(140字小説*14)

人間になった猫(140字小説*14)

あるところに人間になりたい猫がいました。ある日、神様が現れて言いました。「君を人間にしてあげよう」すると、猫は人間になりました。人間になった猫は、毎日毎日働きました。やりたくない仕事をし、会いたくもない人に会い、それはそれは疲れて夜は涙を流して眠るのでした。「あー、猫になりたい」
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令和生まれ(140字小説*11)

令和生まれ(140字小説*11)

聞くところによると、令和生まれの人間はまだしゃべれないらしい。それどころか歩くこともままならないようじゃないか。人間が聞いてあきれる。その点、俺たち令和生まれの猫はひと味違う。もう自力で歩き回るし、弁も立つ。先週なんか原宿のタピオカ屋に5時間並んだよ。で、なにがうまいんだ、あれ?
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