役小角

役行者と吉野

役行者という人物をご存知だろうか。読み方は「えんのぎょうじゃ」または「えんのおづぬ(おづの)」。グランドツアーの取材で様々な土地に行ったが、どの土地の歴史を調べても出てくるのがこの人。そしてたいていが「山の断崖絶壁にお堂をたてた」だとか「霊山として開山した」とかそういう云わればかりだ。ここ吉野に来た時も、役行者がいた。しかも吉野が桜で有名になったのは役行者あってこそだった、むしろ役行者なくして今日

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【聖杯戦争候補作】Reboot,Raven

手の中にあるのは、血塗れの短刀。

自分の血だ。襲ってきた奴は即座に殺したが、不覚を取った。物盗りではなく、オレの命そのものを狙った、刺客だ。……そりゃあ、狙われもしようなァ。裏はあいつらで、あろうなァ。疑り深いことだ。ま、オレがいない方が、クニは治まるか……。

トリカブト、か……。これはたすからぬか……な。傍らに駆け寄ってきた猟犬たちに命じる。
「鳥はもういい、人を呼びにいけ!」

ふ……そう

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【今日のnote】「現代の行者」精神も経済も独立せよ。

こんにちは、狭井悠です。

 毎日更新のコラムも23日目となりました。最近、一日が経つのが、なんだかすごくゆっくりのような気がしています。

 前までは、もっとあっという間に過ぎてしまっているように感じていました。早朝に起きることなどはあまりなく、わりと遅めの時間に起きて、執筆や編集の仕事に追われ、合間に食事をとり、納品をすると気づけばもう夜で、また黙々と仕事をして、眠りにつく——基本、これの繰り

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小角コーポレーション 最終話

最終話
 人生も生活もまったく変化もパターンも変わることの方が稀である。
 信じていた人が裏切る、信じていたことが信じられなくなる、裏切るつもりはなかったが弱い心から裏切ることになってしまった。そういうことの言い訳ばかり達者になって、状況のぬるま湯を期待ばかりするのなら、明日を信じて二度と大事な人やものを裏切ることをせぬと毎朝悔いて祈って死に物狂いで毎日を懊悩に食い殺されないように生きていくしか道

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小角コーポレーション 35

35
 エリザベートが電車に乗っていると、20代くらいの男二人が大きな声で話していた。
「40過ぎたらばばあやろ」
 男二人の立っている前の席に座っていた40前の女の人の肩がぴくんと震えていた。
 女の人の横に座っていたエリザベートは言った。
「電車で大声でばばあやろとか本当にお子様。バレンタインデーにそんなこと言っていると女の子近付いて来ないわねえ」
 男は呆気にとられてエリザベートを見た。

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小角コーポレーション 34

34
 廣足専務と克哉がなんばを歩いていると、五十歳ぐらいのおばちゃんがベンチに座って宙を見つめていた。
「わたしが生きてるのんが悪いんやろ!そう言いや!わたしが生きてるのんが悪いんやろ!」
 おばちゃんは誰に向かってか、世の中の全ての人に向かってか、泣きながらそう叫んでいた。
 克哉は泣き叫ぶおばちゃんをみて、ここまで追い詰められていない自分をラッキーと思う自分を見つけて少し淀んだ気持ちになった

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小角コーポレーション 33

33
 克哉が熊本市電に乗っていると、コロッケのアナウンスが耳に入ってきて、そういやあ、コロッケって熊本であったなあと思い出した。
 熊本城の最寄りの市役所前で路面電車を下りて、熊本城へと向かうと、城内へは立ち入り禁止であった。熊本震災で甚大な被害の出た熊本城は地道に修繕中で、城の近くに勧進の自販機があった。ジュースを買うと修繕費用を寄付できる仕組みで、克哉はその自販機で一本ジュースを買って道々飲

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小角コーポレーション 32

32
 みちるが克哉と飲みに出たスペインバルの隣の席に、ラテンムーンを唄いそうなお姉さんが友達とサングリアを飲みながら、最近結婚式が続いていると言って少し艶やかに笑っていた。
 みちるは聞くとはなしに聞いて内容はスルーしていた。
 小一時間お姉さんたちは、女子会を催し、結局こども出来たら男は用済みよと言いながら去って行った。
 かわいい佇まいを持っておれば、どんなに憎たらしいことや悪魔なことを言っ

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小角コーポレーション 31

31
「生きていくっつうのは樹海を歩くようなものや」
「樹海ですか。迷子ですやん」
「どこをどう行っていいのか、どこを歩いているのか、そういうことがさっぱりわからんうちにある日突然野原に出ると思うやろ。ちゃうねんで」
「歩いても歩いても視界から森の様子が見事に消えぬ。見通しなんぞないねんで、人生つうのは」
 小角社長がそう言う顔には悩みにまみれすぎて泥まみれで爪に泥が入ってどう掃除しても取れない人

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小角コーポレーション 30

30
峰不二子に似ているエリザベートは、カフェでまったりとコーヒーを飲んでいた。
隣り合わせの席で、大声で話をする女子高生が、しきりにスマホでスクショして、シャッター音を響かせていた。
「まじこいつ痛いやつやわ」
そう言いながら、チワワが潰れたような顔をして女子高生が笑い、スマホを触っている。
エリザベートは内心、痛々しいお嬢ちゃんやなあと思いながらコーヒーを口にした。
秋空が高くなり、カフェもど

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