日本の民話

シンカ論:⑰姥捨て山――民話と高齢者

※注:本稿は過去に別のところで執筆したものに加筆修正したものです。

 題名はほとんどの人が聞いたことがあると思うが『姥捨て山』という民話がある。
 しかしメジャーな絵本になるほど有名な話でもないため、内容はよく知らないと言う人も多いだろう。伝わっている地方によって細部は異なるのだが、特に「難題型」と呼ばれているものの典型説話を紹介しよう。

 ある国では、60歳以上の老人は山へ捨てろというお触れ

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ありがとうございました!
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男と蛇

"法華経普門品(ふもんぼん)第25に「弘誓深如レ海(ぐぜいしんにょかい)、歴劫不思議(りゃっこうふしぎ)」とある。 観世音菩薩が、仏の道によって、生きているものすべてを迷いの中から救済し、悟りを得させることを、自らの使命として誓う、その誓願の深さは海のようである。人智の及ぶところではない。"

昔あるところに、若い頃から鷹の飼育と調教を職業とする40歳前後の男がいた。常に数匹の鷹を飼っていて、鷹の

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紅の袴(はかま)

越前の国(福井県)敦賀(つるが)に裕福な家があった。その家は、夫婦と一人娘の3人暮らしであったが、多くの使用人が働いていて、いつも賑わいがあった。両親は娘を大層可愛がっていた。それだけに、両親は、娘を一人残して世を去ることが、とても心苦しく心配だった。自分たちが生きている間に、娘を立派な男と娶わせて、安定した家庭を築いてもらいたいと考えた。両親は、いい男がいると聞いては、娘と結婚させたが、相手は長

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女と蛇

もう一昔前になりましょうか。
紫野にある雲林院(うりんいん)で、毎年、3月21日に行われる菩提講に詣でる道すがら、大宮から西院(現在の西大路四条周辺)にさしかかるあたりのことでした。私の前を一人の女性が歩いていました。年のころは20代半ばといったところでしょうか。ゆったりとした着流しに腰帯を締めて、草履を履いた足指がかろうじて見える程度に裾をあげたスタイルは、なかなかにキュートでした。

その女性

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【山写真】戦場ヶ原。戦いのドラムが鳴り響く

こんには、今日は体調がよくないです。寒気があり体がしんどい…。不健康になると体調管理の重要性に気づきますね。

このシリーズはお気に入りの山写真を並べるコーナーです。

今回は「戦場ヶ原」

赤城山と男体山に挟まれた場所にあり、民話によると山の神様が争った場所=戦場ヶ原と伝えられています。

その争いは「日本むかしばなし」にも登場しますので興味ある方は観てください。

このときは前泊したおかげで、

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今日一日、良い日でありますように!
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魂と肉体

平城京、左京の五条六坊に、奈良の岩島と呼ばれた人がいた。岩島は、寺から集めた資金を運用して利潤を得て、それを寺に還元していた。このたび岩島は、越前(福井県)の敦賀(つるが)に商売の目的で出かけた。数か月間で大きな利益を得て、奈良に帰る途中、余呉湖(よごこ)のあたりで、彼は熱発して、全身倦怠感がひどくなったので、荷物を家の者に任せて奈良の自宅に運ばせ、彼自身は、北近江の長浜でしばらく逗留した。数日間

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文字を求めて

大和(奈良県御所市近郊、金剛山の近く)に、法華経をひたすらに読誦して精神修養していた男がいた。丹治比氏(たじひうじ)の出であった。
その男は才気煥発で、8歳までに法華経をほとんど暗唱していた。ところが、何度繰り返しても、一か所の一文字だけがどうしても覚えられなかった。20歳を過ぎても、読誦していると、いつもその文字のところにきて一旦停止してしまうのだった。前世からの罪によるものだと思い、観音菩薩に

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猿の生贄(いけにえ)

美作(みまさか:岡山県)の中山神社には猿が祀られていた。猿は、農産物を荒らし、女子供を襲ったりする。そんな猿を祀ることについては、それなりの理由があったのだろう。当時の農民には、猿を撃退するだけの備えがなかった。鉄砲もなければ、ビリビリとくる電流を流す針金を張り巡らすこともない時代だった。だから、人間は猿の機嫌をとるしかなかった。

さて、村人は中山神社に、年に1度、生贄(人身御供)を捧げた。生贄

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若君の失踪

陸奥(むつ)の国に、申し分のない家柄で、仲の良い兄弟がいた。兄は国の府官で大夫介(たいふのすけ)と呼ばれていた。結婚後、子宝に恵まれなかったが、妻が40歳を超えて懐妊し、高齢出産で男子を出産した。一粒種の男子だった。妻は産後の肥立ちが思わしくなく、幼子を残して死んだ。大夫介の弟(=叔父)に子供はなかった。叔父夫婦は母を失った甥(=若君)を預かって養育した。叔父夫婦は若君をとても可愛がっていた。若君

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犬の糸

今は昔、三河の国にある郡司がいた。彼には2人の妻があった。本妻と最近知り合った女だった。本妻の家では、白い犬をペットとして飼っていた。犬の名前を「つむぎ」といった。彼らは蚕を飼って、糸を作っていた。それを売って、そこそこの暮らしをたてていた。ところが、ある年、なぜか飼っていた蚕が全部死んでしまった。稼ぎがなくなり、先行きが見えなくなった。すると夫はこの妻に寄り付かなくなった。新しい妻の家に入り浸り

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