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【毒親】『親という傷 幼少期の心の傷をとりのぞけばあなたの人生は好転する』◇まとめ その9【トラウマ】

 本書のまとめの9本目。今回からPart.3に入っていきます! 
 Part.3は長めなので,2回に分けたいと思います。

全部の目次は,こちらの記事に記載しています。


Part.3 人との関わり方を変える

Chapter8 衝突(前編)


衝突」は,事故などのときによく使われる言葉ですが,ここでいう「衝突」は,人間関係の問題で使われるものです。
 だとしても,他者との関係の中で「衝突」ってあまり起こしたくないし,できれば無縁でいたいものですね。

 では,なぜ私たちは,相手との関係で「衝突」が起こるのでしょうか。
 著者が言うには,人間関係の「衝突」は,「つながりへの試み(p.249)」であるとのことです。

 誰かとの関係で「衝突」は生じますが,どちらも「関係をもっと悪い方へ導こう」と意図して衝突するのではありません。衝突に求めるものは,「相手があなたの話を聞き,伝えようとしていることをやっと理解し,あなたの痛みに気づき,必要に応じて変わってくれること(p.249)」と著者は考えています。

 その上で大切なことは「前向きな衝突(p.249)」をすることだと言います。これは相手と衝突が起こったとき,「自分のことを見てもらい,聞いてもらい,理解してもらおうという目標を意識して相手に求め,自分も同様に相手に与えること(p.249)」であり,なおかつ「自分の本当の感情的欲求に寄り添い,相手が望む目的をはっきり知ること(p.250)」です。

 しかし,このように説明したうえで,著者自身も「意識して衝突する」ことは,たやすくできるものではないと認めています。でも,決して不可能ではないとも言っています。コツは,「衝突のたびに,もう少しだけ気づくように」なろうと心がけることであると,著者は言います。


見てもらい,聞いてもらい,理解してもらいたい

 著者が考える人間の前提として,人間は皆「見てもらい,聞いてもらい,理解してもらいたい」と思っています。この前提と,上述のことを意識しつつ,カーリー(仮名)の事例を見てみましょう。

 カーリーには姉がいますが姉たちは外交的な性格です。カーリーの両親は,カーリーも姉たちと同じように外交的な性格だとずっと考えていて,カーリー自身がそれを否定しても,またはっきりと「自分は内向的な性格だ」と言っても,両親は理解してくれなかったそうです。

理解する」ということを,著者は「深く知られているという感覚(p.250)」と言っています。この経験がないまま育つと,「理解されなかったとき」のことをいつも考えてしまい,とくにつらかったときのことが頭から離れなくなってしまうのだそうです。
 つまり,これまで見てきたように「私たちの衝突の仕方は心の傷と大きく関係している(p.252)」のです。


衝突はどのようにしてはじまるか

 それでは,衝突はどのようにして始まるのでしょうか。著者は先人の心理療法家の理論や実践から,代表的な5つの状況を挙げています。それぞれ事例を通してみてみましょう。

  • 1,非難しないでほしい(再びベロニカ(仮名)の事例)

 新しいパートナーに対してベロニカはいらだちを見せていました。理由を聞くと,彼に仕事帰りに2件の買い物を頼んだが断られて,大喧嘩をしてしまったという。
 喧嘩の中で,ベロニカもパートナーも互いを非難しあって4時間ほど言い合ったとのこと。
 著者はベロニカが「彼女はパートナーに頼みを聞いてもらうことが,自分の存在意義になっているのではないか」と分析した。自尊感情の傷をもっている彼女には,パートナーは「仕事で疲れているから,その帰りに2件も買い物に行くのは嫌だ」という言葉がこのように聞こえてしまった。「(頼みを聞くのは)嫌だ。きみは僕にとってそれだけのことをする価値がないからね。(p.257)」

非難によって欲しいものに近づくことはできない。遠ざかるだけだ(p.257)」

  • 2,防衛的にならないでほしい(再びアリー(仮名)の事例)

 安心の傷をもつアリーは,母親に「私の夫を誘惑しないで!」と言われたこと,それ以降も罵られ続けたことでどれほど傷ついたかを,精神病が落ち着いたように見えた母親に伝えるために,実家に戻った。
 しかし,母親はそれを認めもせず,謝りもせず,「あなたは幸せだったはずだ」と言われ,理解も示してもらえなかった。
 アリーは懸命に母親に理解をしてもらうため説得を続けたが,結局伝わらずアリー自身も疲弊してしまい,早々に実家を出てしまった。
 著者は,母親が娘の言葉で,過去の性的虐待で負った傷が活性化し,理解ではなく自己防衛をしてしまったと分析した。

自己防衛は,当事者意識や,責任,説明の義務を避ける行為だ。(中略)同情的に見れば,自己防衛は避難から身を守ろうとすることだ。(p.259)」

  • 3,支配しないでほしい(再びイザベルとジョー(ジョセフィーナ:いずれも仮名)の事例)

 恋人同士になれたイザベルとジョーが,喧嘩をして著者のカウンセリングにやってきた。衝突のきっかけは,イザベルがジョーに「1日中携帯電話ばかり見ているじゃない,そろそろ一休みしたら?」という一言だった。
 実はジョーも幼少期の頃に傷を負っていたことがここで判明する。父親が非常に厳しく,言いつけを守れなければ,父親から様々な罰が飛んできた。携帯電話やパソコンを取り上げたり,何か月も外出禁止にしたり。ジョーが「自分は同性愛者だ」と打ち明けた時には,父親は納得も理解もできず,無理やり違う方を選ばせようとしたこともあったそうだ。そのせいで,ジョーは家族からのけもの扱いされているように感じ,「帰属意識の傷」が生まれた。
 このことから著者は,イザベルが「携帯電話ばかり見ていないで,私を優先してほしい」という「優先の傷」の活性化によるジョーとの衝突を起こした際,ジョーの「イザベルと心地の良い関係性でいたいけど,自分の行動を縛らないでほしい」という「帰属意識の傷」が疼き出したのではないかと分析した。

さて,Part.3の前半はここまでです。

次回に後半を書きますね。


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