堀 裕嗣

「研究集団ことのは」代表。公立中学校教員。 新著『道徳授業で「深い学び」を創る』(明治…

堀 裕嗣

「研究集団ことのは」代表。公立中学校教員。 新著『道徳授業で「深い学び」を創る』(明治図書)/『アクティブ・ラーニングの条件』(小学館)

記事一覧

シンプル・イズ・ベスト?

先達の言葉はいたってシンプルだ。 公開研究会の飛び込み授業なんかを参観すると、授業が始まるまではまるで年老いた鳩のように枯れて見える先達が、子どもたちの前に立っ…

堀 裕嗣
3時間前
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教師は「教え方」以上に「在り方」を問われる?

我々の欲望と我々の能力の不均衡にこそ、我々の不幸は存する。 こう言ったのはルソーである(「エミール」)。至極名言だなと思う。僕らは子どもたちにとって価値ある教師…

堀 裕嗣
1日前
44

ポジティヴな感情は「過剰」を生み出す?

この世にあるポジティヴな感情は須く「過剰」を生み出す。情熱や熱中が「過剰」を生み出す。過ぎたるは及ばざるがごとし。ときにやり過ぎが最初からやらかったときよりもマ…

堀 裕嗣
2日前
10

大切なもの

大切なものがずいぶん前に失われていたことに気づくことがあります。大切なものがずっと前にどこか別の場所に去ってしまったことに気づくこともあります。そんな失われてし…

堀 裕嗣
4日前
22

〈今後の予定〉

御依頼は下記日程以外でお願いします。 【定員30/残席7】 EDGE at 稚内/大野さんが立ち上げた新しい研究会です/2024年5月25日(土)/稚内ポートサービスセンター/参加…

堀 裕嗣
5日前
4

人は他人の誠実さに惹かれる?

誠実な人と淫らな人。あなたはどちらが好きだろうか。 一緒に仕事をするならとか一緒にいて安心するとか、よけいなことを考えてはいけない。単純にどちらが好きかという問…

堀 裕嗣
5日前
12

負のスパイラル

若い頃は、何か教職にマニュアルがあって、そのマニュアルに沿って動いていればなんとか生徒たちを動かせる、そんな気になるものです。授業でも学級経営でも確かにマニュア…

堀 裕嗣
6日前
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マイナスをなくせばプラスが生まれる?

いじめのない学校、不登校のいない学校、非行のない学校……。「○○のない学校」「○○のない学級」が目指される。いじめも不登校も非行もあるよりない方がいい。それは確…

堀 裕嗣
8日前
16

教師にふさわしいリーダーシップがある?

テレビ・新聞の報道もインターネット上の報道も複雑な事象や複合的な要因を一つの単純な物語に落とし込む。メディアとはそういうものだ。人々はシンプルでわかりやすい情報…

堀 裕嗣
9日前
33

若者は指導の対象?

僕はかなりの大規模校に勤めているので、三月になると毎年のように定年退職者をみんなで送り出している。いわゆる「団塊の世代」のほぼ全員が職員室から姿を消し、これから…

堀 裕嗣
10日前
25

打たれないほどの出過ぎた杭になる力

この力はすべての教師に必要とされるものではありません。人の上に立とうなどとは思わず、誠実に、小さくまとまりながら生きていく道というものも断固としてあります。そう…

堀 裕嗣
11日前
25

さぼる人ほど優しい?

人に優しく──だれもがそう思う。 他人を肯定的に見たい──だれもがそう思う。 しかし、なかなかできることではない。ついつい他人を批判してしまう。ダメだなあと思い…

堀 裕嗣
12日前
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子どもや保護者を批判する資格がある?

人は自分に都合の悪いことは見ようとしない。意図的・意識的に見ようとしないのではなく、無意識のうちに視界から排除する。その方が人間が生存するためには都合が良いのだ…

堀 裕嗣
2週間前
30

言葉は意味よりも比喩?

世の中には「木を見て森を見ず」の人が八割を占める。「森を見て木を見ず」の人が二割。この二割はとても生きづらい日常を送っている。 「森を見て木を見ず」の人たちの何…

堀 裕嗣
2週間前
33

チューニングを合わせる力

だれもがこれからの時代に必要とされるのは〈コミュニケーション能力〉だと主張します。しかし、〈コミュニケーション能力〉の内実はあまりにも複雑で、しかもその人の性格…

堀 裕嗣
2週間前
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先の見える方を選ぶ?見えない方を選ぶ?

人生の岐路に立つことがある。そのとき、先を見通せる方を選ぶのが成功のコツで、先を見通せない方を選ぶのが成長のコツだ。僕の経験から言って間違いない。 例えば数ヶ月…

堀 裕嗣
2週間前
21
シンプル・イズ・ベスト?

シンプル・イズ・ベスト?

先達の言葉はいたってシンプルだ。

公開研究会の飛び込み授業なんかを参観すると、授業が始まるまではまるで年老いた鳩のように枯れて見える先達が、子どもたちの前に立った途端にえさをもらう飼い犬のように生き生きとした表情を見せる。その躍動感は自らのシンプルな到達点への確信が支えているように見える。

若いときには、その姿が「ああ、この人はほんとうに子どもが好きなのだなあ」というふうに見えてしまう。しかし

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教師は「教え方」以上に「在り方」を問われる?

教師は「教え方」以上に「在り方」を問われる?

我々の欲望と我々の能力の不均衡にこそ、我々の不幸は存する。

こう言ったのはルソーである(「エミール」)。至極名言だなと思う。僕らは子どもたちにとって価値ある教師でありたいと欲望する。でもその能力に限界を感じる。ときにそれをとことん自覚せねばならないこともある。そんなとき、僕らは不幸せを感じ、自分自身に絶望的にならざるを得ない。そんなことを繰り返しながら、教師もまた、少しずつ強くなっていく。

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ポジティヴな感情は「過剰」を生み出す?

ポジティヴな感情は「過剰」を生み出す?

この世にあるポジティヴな感情は須く「過剰」を生み出す。情熱や熱中が「過剰」を生み出す。過ぎたるは及ばざるがごとし。ときにやり過ぎが最初からやらかったときよりもマイナスを生じさせることがある。情熱や熱中を価値として生きる教師はこれを意識した方がいい。

僕は新卒の年、自分の学級を愛し過ぎてその後にもった学級を愛せなかったという苦い想い出をもっている。このことは拙著『エピソードで語る教師力の極意』に書

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大切なもの

大切なもの

大切なものがずいぶん前に失われていたことに気づくことがあります。大切なものがずっと前にどこか別の場所に去ってしまったことに気づくこともあります。そんな失われてしまったり去ってしまったりしていることが既に自分の一部になってしまっていることに気づき、茫然と立ちすくむことがあります。

そんなとき、自分の胸に手をあててよく考えてみると、そのきっかけが自分のエゴであることに気づきます。これでいいや、これ以

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〈今後の予定〉

〈今後の予定〉

御依頼は下記日程以外でお願いします。

【定員30/残席7】
EDGE at 稚内/大野さんが立ち上げた新しい研究会です/2024年5月25日(土)/稚内ポートサービスセンター/参加費3,000円/大野睦仁・宇野弘恵・太田充紀・堀裕嗣
https://www.kokuchpro.com/event/ae9f6ded150988bd91e0b95882ed3533/

【定員16/残席5】
THE

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人は他人の誠実さに惹かれる?

人は他人の誠実さに惹かれる?

誠実な人と淫らな人。あなたはどちらが好きだろうか。

一緒に仕事をするならとか一緒にいて安心するとか、よけいなことを考えてはいけない。単純にどちらが好きかという問題だ。どちらに惹かれるかと言い換えてもよい。多くの人が淫らな人であるはずだ。無能な淫らさはみんな嫌いだが、有能な淫らさはだれもが好む。

人は有能な人間の「淫らさ」に惹かれる。

誠実な人、一緒にいて安心する人、確かに大切かもしれない。し

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負のスパイラル

負のスパイラル

若い頃は、何か教職にマニュアルがあって、そのマニュアルに沿って動いていればなんとか生徒たちを動かせる、そんな気になるものです。授業でも学級経営でも確かにマニュアルに沿っていれば、大失敗をすることは避けられますし、責任をとらなければならないような大きなクレームに晒されることもないような気もします。若い教師の学年主任や管理職への相談は、そのマニュアル主義がもたらすものです。こんなときどうすればいいのか

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マイナスをなくせばプラスが生まれる?

マイナスをなくせばプラスが生まれる?

いじめのない学校、不登校のいない学校、非行のない学校……。「○○のない学校」「○○のない学級」が目指される。いじめも不登校も非行もあるよりない方がいい。それは確かだ。でも、「○○がない」ことはマイナスをゼロにすることであって、決して子どもたちの精神状態がそれによってプラスに転化するわけではない。満足度が上がるわけではない。

マイナスがなくなれることとプラスになることとの間には大きな距離がある。教

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教師にふさわしいリーダーシップがある?

教師にふさわしいリーダーシップがある?

テレビ・新聞の報道もインターネット上の報道も複雑な事象や複合的な要因を一つの単純な物語に落とし込む。メディアとはそういうものだ。人々はシンプルでわかりやすい情報を求める。消費とはそういうものだ。だからメディァは顧客満足を優先して、わかりにくく複合的な情報の複雑さを切り落とし、できるだけシンプルなパッケージにして商品化する。そして、そういう商品化された情報だけを日常的に浴びている子どもたちや保護者は

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若者は指導の対象?

若者は指導の対象?

僕はかなりの大規模校に勤めているので、三月になると毎年のように定年退職者をみんなで送り出している。いわゆる「団塊の世代」のほぼ全員が職員室から姿を消し、これからかつて「新人類」と呼ばれた世代を見送ろうとしている。さまざまな軋轢もあったけれど、いざ彼らを見送るとなるとあまりに寂しい。いまから十年ほど経つと、次は僕らの世代になる。そんなに遠い話ではない。

ある世代が社会から退場していく。それをすぐ下

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打たれないほどの出過ぎた杭になる力

打たれないほどの出過ぎた杭になる力

この力はすべての教師に必要とされるものではありません。人の上に立とうなどとは思わず、誠実に、小さくまとまりながら生きていく道というものも断固としてあります。そういう生き方が向いている人たちが一定数いるものです。私もそのことを否定しません。しかし、あなたはまだ若いはずです。「健全な野心」をもつことは正しいことです。

野心には「健全な野心」と「不健全な野心」とがあります。後者が〈位置エネルギー〉を志

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さぼる人ほど優しい?

さぼる人ほど優しい?

人に優しく──だれもがそう思う。

他人を肯定的に見たい──だれもがそう思う。

しかし、なかなかできることではない。ついつい他人を批判してしまう。ダメだなあと思いながら反省する。ときには軋轢に落ち込む。僕らはいつもそんなことを繰り返している。

他人を批判する悪癖はどこから生まれるか。それはおそらく、自分のやっていることは正しい、自分たちのやっていることは確かに正しい、間違っているはずがない、そ

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子どもや保護者を批判する資格がある?

子どもや保護者を批判する資格がある?

人は自分に都合の悪いことは見ようとしない。意図的・意識的に見ようとしないのではなく、無意識のうちに視界から排除する。その方が人間が生存するためには都合が良いのだから仕方ない。これは人間の本質とかいうよりも、むしろ生物学的な問題ではないかとさえ思う。例えば、教師は自分がそれほどの教師でないことを絶対に見ようとしない。それどころかたいして自慢できることもない、ありふれた人間であることさえ認めようとしな

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言葉は意味よりも比喩?

言葉は意味よりも比喩?

世の中には「木を見て森を見ず」の人が八割を占める。「森を見て木を見ず」の人が二割。この二割はとても生きづらい日常を送っている。

「森を見て木を見ず」の人たちの何割かは「森を見て木も見る」人たちになっていく。経験を重ねることでさまざまな木が自らの森に結びつき、それを意識しながら生きることで成熟を示す。この人たちは他人に優しくなり、さまざまな業界で一流に昇っていく。こうして少数の〈森先行型の一流〉が

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チューニングを合わせる力

チューニングを合わせる力

だれもがこれからの時代に必要とされるのは〈コミュニケーション能力〉だと主張します。しかし、〈コミュニケーション能力〉の内実はあまりにも複雑で、しかもその人の性格や人間性と切り離して考えられないものです。「はい、そうですか」と簡単に身につけられるものではありません。

ただし、すべての教師が身につけなければならない〈コミュニケーション能力〉があります。これが身についていないと仕事にならない、これが身

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先の見える方を選ぶ?見えない方を選ぶ?

先の見える方を選ぶ?見えない方を選ぶ?

人生の岐路に立つことがある。そのとき、先を見通せる方を選ぶのが成功のコツで、先を見通せない方を選ぶのが成長のコツだ。僕の経験から言って間違いない。

例えば数ヶ月後に芝居を上演するとしよう。過去にやった演目を上演すればそれなりの成功を収めることができる。完成度が高くなるから評判を呼び、観客も動員できるかもしれない。しかし、演技する者はもちろん、演出する者にも裏方を担う者にも大きな成長は見込めない。

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