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🔨 職人工房訪問記

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民藝品をつくる職人さんの工房を訪問して、目に見えない部分を文章にしたためます。 意外にどこを基準に選べば良いのかわからないのが、民藝品や暮らしの道具です。素材やつくり手について… もっと読む
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職人をたずねて|2023年振り返り

職人をたずねて|2023年振り返り


今年はつくり手に会えて
みなさんの姿に心が洗われた

人と人との間だけではなく
人と天然との間に教えられ、学び
答えを得ながら
確実に一歩一歩進む姿が
心に残っている

仕事はとても堅実で
才能やセンス、感覚という
アーティスティックなものとは
かけ離れた
素材との着実な会話の蓄積だった

素材から何かを受け取って
決して力づくではなく
必要な時間を知りながら
それに従い仕上げていく

まわりに

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雑記|人間と動物の間

雑記|人間と動物の間

北海道でのひとときは、
人の世界と動物の世界、過ごした時間が半分半分だった。

厳密に言えば、もちろん人の世界にいた時間の方が長いのだけれど、頭や心の半分は確実に自然や動物が占めていた。

そうすると人間世界のあれやこれやはどうでも良くなって、ふたつの世界それぞれのバランスへと心がかよう。

完璧なんてものはないし、うんちもごろごろ落ちていて、この山にはわたしの知識では到底太刀打ちできない、想像を

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 #3 岩間 幹雄 | 木彫り 

#3 岩間 幹雄 | 木彫り 

空港を出ると牛のにおいがした。

あぁ、そうか。
北海道に来たのだなとにおいが知らせてくれた。

広い大地を持つ北海道には数々の特産品があるが、代表する民藝品に木彫りの熊がある。

大正12年。
一説には、当時徳川家当主の徳川義親が八雲村(現二海郡八雲町)で農民や付近のアイヌ民族の人たちに冬の間の収入源として熊の木彫りの生産を勧めたのが北海道の木彫り文化のはじまり、とある。

その後、昭和に入り旭

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雑記|つくり手と素材の間

雑記|つくり手と素材の間

この春、つくり手の工房をぽつりぽつりと訪問した。

出会いはいつもモノが先で、そのモノと向かい合ったとき、これをつくった人に会いたいという気持ちが沸々と沸いてくる。
どうしたら会えるだろうかと考えはじめ、予定を立て連絡をとり、製作の合間を縫ってお時間をいただく。

取材を終えた帰り道はいつも、あの人柄とあの環境だからこれが生まれるんだよなと、点と点が線でつながり、心がすとんと腑に落ちる、不思議な感

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#2  安土草多 | 硝子

#2 安土草多 | 硝子

くもりのないつるんとした表情を目にすることが多い硝子のグラスや皿の数々。

あの透明な世界の中に、くもり、ゆらぎ、気泡がのこる独特の技法で唯一無二の世界観をつくりだす硝子作家がいる。

岐阜県は飛驒高山。
心地よい風が吹き抜ける盆地の丘の工房で、それらは生み出されている。

時間をかけない

半径1メートルほどだろうか。
作業に必要な一通りの機材を円状に配置。工程ごとに行ったり来たりして、ひとつの

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#1  下本 一歩 | 竹・炭焼

#1 下本 一歩 | 竹・炭焼

規則正しい雨音が心地よい立夏。
高知市内から30分ほど車を走らせた。

目指す工房は、四国を象徴するような小高い山を、果て無くぐるぐると登った先にある。
のちに身体が後傾するほどの急斜面を登ると、使い慣らされた炭窯と木造りの工房がみえてきた。

ここで、炭焼の技術を活かしながら竹の道具をつくるのは、下本一歩さん。

この場所は、一歩さんの祖父母の暮らしていた村。今は合併して高知市の一部となったが、

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