笠原 英二(単行本が文庫本に見える手を持つ男)

物書く大工。自分の魂を小説として残す事が出来たらいいよね。 大学中退→放浪の旅→山と渓…

笠原 英二(単行本が文庫本に見える手を持つ男)

物書く大工。自分の魂を小説として残す事が出来たらいいよね。 大学中退→放浪の旅→山と渓谷社でライター→大工修行→独立。 2020年、49歳で執筆活動を再開。 小説好きの方と繋がりたいので、お気軽にコメントください。

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最近の記事

「ドン・キホーテ」備忘録

2024年4月11日から読み始める。 著者 ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ(1547~1616) 前篇1 (4月11~19日) 長ったらしい序章。 ドン・キホーテの旅立ち。 宿屋にて大暴れの末、騎士叙任。 商人たちに戦いを挑み、ボコボコに。 村に戻って彼の親族や村人から介抱。 眠っている間に村人たちが彼の書斎から騎士道物語の類の本を焚書。 サンチョを伴い、再出発。 風車に戦いを挑み、返り討ち。 ビスカヤ人との決闘。中断。二部へと続いて、作者口上から始まり、ビスカ

    • 「ふたりの証拠」読書感想文

      著者 アゴタ・クリストフ(1935~2011) 4月7日読み始め、4月10日読了。 あらすじ  悪童日記の続編。双子のうち、国境を越えたクラウスと、祖母の家に残ったリュカ。これは後者リュカの物語。 印象に残った人物 マティアス。まだ若い女性ヤスミーヌとその父親との間にできた子供。ヤスミーヌが妊娠中、それがバレないようコルセットをきつく締め続けたせいで、やや奇形気味。しかし頭脳は明晰。そして最後に……。 感想  たとえばの話でこの小説の空気感を伝えたいと思う。  

      • 「三四郎」読書感想文

        著者 夏目漱石(1867~1916) 4月1日読み始め、4月7日読了。 あらすじ  東京の大学に通うため、熊本から上京した三四郎の、恋愛モヤモヤ物語。 印象に残った人物 里見 美穪子。この物語のヒロイン。冒頭に出てくる謎の淫乱女もインパクト大だが、やはり美禰子に軍配を上げる。彼女の存在が、この物語に大きな色艶を与えている。 感想  読んでいて思ったのは、「映像的だな」ということ。描写している情景がパッと目に浮かんでくる。印象に残った描写を引用する。美禰子がぬかる

        • 「悪童日記」感想文

          著者 アゴタ・クリストフ(1935~2011) 3月30日読み始め3月31日読了。 訳者 堀 茂樹 あらすじ  第二次世界大戦、ドイツ占領下のハンガリーの国境の田舎町が舞台。ただし、作品中に具体的な地名は出て来ず、〈大きな町〉や〈小さな町〉と、抽象的に表現されている。  意地クソ悪い祖母の家に預けられた双子の物語。双子の“悪童”は、戦時下という狂った世界の中で、狂った大人たちに翻弄されつつも、それを受け入れ、そして乗り越え、たくましく(というかしぶとく)生きていく。

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        • 読書感想文とか
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          「砂の女」読書感想文

          著者 安部公房(1924~1993) 3月27日読み始め、3月30日読了。 あらすじ  昆虫採集のためにとある砂丘に訪れた男。目当てのハンミョウを探しているうちに、男は砂の中に埋もれたような集落に迷い込む。 「泊っていきなさい」という村人の好意に甘えて、とある民家に上がると、そこには妙齢の女がいて……。 感想  男は女というエサを与えられる代わりに、砂堀りの労務を強いられる。砂堀りは、集落を水没ならぬ砂没から防ぐために大事な作業で、男が幽閉された民家は、その最前基地

          「カフカ短編集」読書感想文

          著者 フランツ・カフカ(1883~1924) 2023年末頃からかじり読み。3月25日くらいに読了。 訳者 丘沢 静也 感想  正直に告白すると、私はカフカの面白さをほとんど理解できない。「変身」は面白かった。ある日突然訪れる不条理。物事は解決に向かわず、悲劇に終わる。人間の闇の部分を淡々とした描写で表していく。いつまでも心に深く刻まれる話だった。  その後、城、審判を経て今回の短編集を読んだんだけど、「変身」を越えるものはなかった。私が読んだカフカ作品はどれも「不

          「月と六ペンス」読書感想文

          著者 サマセット・モーム(1874~1965) 3月17日読み始め3月24日読了。 訳者 金原 瑞人 あらすじ  人生の半ばを過ぎて、突如家庭や仕事を捨て、絵を描くことのみに邁進し始めた男、ストリックランド。そして、腐れ縁のような形で彼にかかわっていく“わたし”。人間としては下劣極まりないストリックランドに何度も辟易する“わたし”だが、同時に彼の人間としての魅力にもはまっていく。 印象に残った人物 ブランチ。お人好しのオランダ人画家ストルーヴェの妻。男としての魅

          ガリバー旅行記

          著者 ジョナサン・スウィフト(1667~1745) 3月6日読み始め3月17日読了。 訳者 柴田 元幸 あらすじ  家族持ちのくせに旅をせずにはいられない男ガリバーの旅行記。だが、乗る船は座礁したり、船員が反乱を起こしたりして、ガリバーは“見知らぬ島”に辿り着く。それも、凝りもせずに4回も。小人の国、巨人の国、飛ぶ島の国、馬の国と旅をして、ガリバーが辿り着いた境地は……。 印象に残った人物 グラムダルクリッチ。巨人の国で拾われた農場主の娘(当然巨人)。ガリバーの

          中古文庫を買ったら高額だった話(ブロードウェイの天使)

           月に一回、高知の蔦屋書店に行くのが習慣となってんだけど、そこで変な本を発見しました。  その本は本棚の下の方にあって、表紙を正面に向けてはいるものの、色あせている上にボロボロのビニールに包まれていて、そこはかとなく「放置された感」を漂わせていました。  手に取って裏表紙を見ると、右隅に「定価280円」。バーコードなし。そしてビニールの表面には「中古915円」のシール。  中古? TSUTAYAならいざしらず、高級感が売りの蔦屋書店に、中古品なんてあったっけ? もしかしたら、

          中古文庫を買ったら高額だった話(ブロードウェイの天使)

          「われら」読書感想文

          著者 エフゲーニー・イワーノヴィチ・ザミャーチン(1884~1937) 2月27日読み始め3月5日読了。 訳者 松下 隆志 あらすじ  地球を〈単一国〉が統治するようになって1000年。そこでは、「数学的に誤りのない幸福」が強制され、多くの国民は喜んでそれを受け入れていた。物語は宇宙船インテグラルの建造技師Д(デー)ー503の記録という形で綴られている。  Дは模範的な〈単一国〉の国民だが、国家転覆を目論む反乱組織メフィの一員である女性Iに心を奪われ、彼女と運命を共

          「白鯨」読書感想文

          著者 ハーマン・メルヴィル(1819~1891) 2月4日読み始め2月26日読了。 印象に残った人物 クィークェグ。南海の孤島生まれ、武者修行的な感覚で、捕鯨船に乗り込む。銛打ちの名人で、ルパン三世でいえば五右衛門のようなクールさがある。 あらすじ  白鯨モービィ・ディックに片足をもぎ取られた捕鯨船の船長エイハブが、復讐の鬼となってモービィ・ディックを追う。それを捕鯨船でたった一人生き残ったイシュメールが語っていくという構成、ではあるものの、その内実は……。 感想

          ゴリオ爺さん読書感想文

          著者 オノレ・ド・バルザック(1799~1850) 1月23日読み始め2月4日読了。 印象に残った人物 ヴォ―トラン。ギラギラした感じがたまらない!長ゼリフがめちゃくちゃかっこいい!! あらすじ  ヴォケール館という長期滞在者向けの安宿を舞台に、人間味が強すぎる人たちがぶつかり合う物語。  タイトル通りに「ゴリオ爺さん」が主役というわけではなく、同じヴォケール館に住む貧乏学生ラスティニャックが物語の中心人物。勉学の道に見切りをつけ、貴族である遠い親戚を頼りに社交界にデ

          若きウェルテルの悩み(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)読書感想文

           題名からイメージしていた内容は、おそらく青年であられるウェルテルくんが、愛だの恋だの自己実現だのに苦悩する、まあ、爽やかな青春小説のようなものだと思っていた。  ところがどっこい!  ドロッドロ。  ウェルテルが恋したロッテにはアルベルトという許嫁がいるんだけど、そんなことにはお構いなしに足繁くロッテのもとに通うウェルテル。自分のロッテに対する想いは兄妹愛のようなものだと思いこませ、ロッテが結婚したあとも頻繁に彼女のもとに通う。ロッテもロッテで、結婚してんだから少しは自重す

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          蟹工船(小林多喜二)読書感想文

           ロシアに勝つために!  国を豊かにするために!  兵隊さんはもっと大変な思いをしているんだぞ!  そう、権力側の人間は、常に人の良心を利用する。400人もの工員が働く蟹工船。そこで船長以上の権力を振りかざして暴虐の限りを尽くす“監督”の浅川。同じ会社の船が救助を求めてきても無視。工員が病気になろうが、怪我をしようが、そして死んでしまおうが、全く意にも介さない。  当初は大人しく従っていた工員たちだが、「このままでは死んでしまう」と反旗を翻す。しかし、それを事前に察知してい

          「『ボヴァリー夫人』をごく私的に読む」(芳川泰久)を読む

           紆余曲折を経て読了に漕ぎつけたフローベールの「ボヴァリー夫人」。 ※詳細は下の記事をご参照ください。  この「ボヴァリー夫人」という壁を乗り越えるべく、訳者の芳川泰久さんの解説本を読んでみました。ひとことで言うと、とても面白い! 自由間接話法という独特な文体を、できる限り原文に忠実に訳そうとした芳川さんの意図、そして苦労がこの本で知ることができました(まあ、「ボヴァリー夫人」のあとがきと重複する部分も多々あるけど…)。  自由間接話法以外にも、フローベールの文章に対する異

          「『ボヴァリー夫人』をごく私的に読む」(芳川泰久)を読む

          高慢と偏見(ジェイン・オースティン)読書感想文

           ちょっと身分の低い少女が、身分の高い地主の青年と結ばれるまでを描いた作品。シンプル過ぎるストーリーだけど、語り口が軽妙なので、そのテンポの良さでどんどん読み進められる。  加えて、登場人物たちもとても魅力的。冷静だけど皮肉屋なベネット氏。噂好きで癇癪持ちのベネット夫人。美人で優等生タイプの長女ジェイン。賢くて、言いたいことをズバズバ言う次女のエリザベス(主役ね)。読書好きで無愛想な三女のメアリー。自分がなく、何色にでも染まる危うい性格の四女キャサリン。頭が空っぽで年がら年中

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