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(本)HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣/津川友介

最近まで、社会人ドクターとして3年間ほど研究活動に取り組んでいました。
会社員生活との二足のわらじはそれなりに厳しく、論文ピークなどには原因不明(ストレス?)の湿疹ぽいものが首周りに出てしまうというアクシデントにも見舞われたものの、なんとか学位の取得に至りました。
自分の力、というより周りに感謝なのですが・・・。

で、研究者というか研究に携わった人あるあるかもしれませんが、学位を取得して一番の変化は
”安易に物事を断言しないように(断言できなく)なった”
ことかもしれません。
いうまでもなく、研究という行為自体、それまで世の中で誰もわからなかったことを少しでも解明するという面を含んでいます。
それは、理系も文系も関係ない。
で、1つのことを断言するにはものすごい労力がかかります。

例えば、健康界隈で言うと、自分の小さい時は「卵は一日一つ以上食べるべからず」と言うことが言われていました。
黄身のコレステロール値が高いことから、たくさん食べると人体中でのコレステロール値も上昇する、だから健康に悪い、と言うのが大まかな主張だったと記憶しています。
それが、最近になって何個食べてもいいんじゃね?と言う風潮に変化してきています。と言っても、これ自体も確定されたものではなく、まだ一日1つがベストという話が復活する可能性も秘めています。

卵の摂取数が人体のコレステロール値に与える影響を調べるには、理想的には同じ人間をグループ分けし、片方には卵を毎日1個食べてもらい、もう片方には毎日それ以上食べてもらうようにします。それで、一定期間生活をしてもらい、結果を見るというのがすぐ思いつく方法です。
しかし、実際には人間には体質、年齢、性格、体型など大きなばらつきがありますし、卵以外の要因がコレステロール値にどれくらい影響しているのかを純粋に測定するのはものすごい困難なのは想像に難くないと思います。
時間経過による影響はどれくらいなのか、運動の習慣は、そのほかの食生活は?あげ出すとキリがありません。

結構X(twitter)界隈をみていると、どこかの受け売りか
・これを食べていれば大丈夫!
・この習慣は絶対にだめ!
と簡単に断言している方をよく目にしますが、ある程度の科学リテラシーを持つことなく盲信してしまうと、非常に危険だと思っています。
将来、体調を大きく崩してから”あのヤロー嘘つきやがって!”となっても、誰も責任を取ってはくれないですからね。
最終的には自分の身は自分で守れです。


前置きが長くなりましたが、本書は大学の先生が確からしいエビデンスに基づき、ここまでは言って良いだろうと言うラインをキチンと設定して書いてくれている(かつ、エビデンスも載っている)ので、現状では信頼に足るものと考えらえる良書でした。
自分は睡眠に多少の問題を抱えているので、ポイントをまとめてみます。

睡眠について

①睡眠不足は病気や肥満のリスクをあげる
②睡眠不足は脳のパフォーマンスに悪影響を与える
③7時間以上寝る

この三点は、現代の科学ではほぼ確からしいと言って良い情報です。

①睡眠不足は病気や肥満のリスクをあげる

睡眠時間が6時間未満の人は、それ以上の人と比べて心筋梗塞になるリスクが20%も高く、かつ動脈硬化も進んでいるのだそう。
また、複数の研究により睡眠不足は満腹中枢を刺激するホルモンの分泌を見出し、肥満リスクも有意に上昇させるそうです。

②睡眠不足は脳のパフォーマンスに悪影響を与える

徹夜経験者であれば、誰もが納得するところ。
ただ、怖いのが眠気の強さと睡眠不足かどうかは直接的には関係ないと言うこと。すなわち、眠いなと思ってなくても睡眠不足に陥り、生産性を大きく下げている可能性があるということです。
自覚ができないと直しようもないですから、ちゃんとした情報に基づいて睡眠をとる必要がありますね。

③7時間以上寝る

自分が今までに仕入れた情報によると、人はそれぞれに適切な睡眠時間が異なること、大半の人は6〜7時間かそれ以上が適切な睡眠時間であることが共通して述べられていることです。
本書では7時間とされています。
で、睡眠の議論では質を高めるためにどういった習慣づけを行いましょうということがよく触れられるところですが、まずは量を確保するというのが大前提とのこと。
自分も遅くに帰宅すると、どうしてもネットや本が見たくなり、翌朝起きるまでに7時間は確保できないタイミングで床に入ることがよくあります。
要反省だなと思ってます。

ちなみに、日本人の睡眠不足による生産性の減少は15兆円規模で、海外の一流企業は従業員の睡眠の質と量の確保に熱心に取り組んでいるよう。


補足ですが・・・
最近知った話だと、洗口液なるものも長期的に見ると健康によろしくない可能性があることが指摘されているそう。本来有益な菌まで殺してしまう、と言うのが仮説だそうで、今後の研究動向を注視したいところです。
にしても、Xであまり根拠のない健康情報をばら撒いている方、間違った情報発信は人の人生を狂わせうると言うことも念頭においておいて欲しいなと思うところです。
今回のスレッドは別にして、自分は複数のソースで正しいという蓋然性の高い情報しか載せないつもりですし、積極的に健康情報のみを発信しよう、とは考えてないので・・・
読者側のリテラシーが向上すること、安易な健康情報が流布しないことを祈りつつ、筆を置き(タイプやめたい)と思います。

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