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感覚を使った2種類のロースト技法の使い方。

コーヒー焙煎、すなわちローストにおける「感覚を使ったロースト技法」には2通りあると考えている。

1つは、ローストを視覚・聴覚・嗅覚を使い、香りの変化や音の変化、豆の色の変化を受け取りながら、あるポイントに到達した時に瞬時に焙煎機の設定を変更するやり方である。

このローストの技法は、豆によって微妙にポイントが異なるためにGP(ゴールドポイント)の位置やデベロップメントタイムの開始ポイントの位置など、ローストの設定ポイントを視覚・聴覚・嗅覚を使い感覚によって判断し、瞬時に切り替えるというために使う方法であるのだと思っている。

この技法は初めてローストをする新規豆のロットの初見の見極めであったり、初めて触る焙煎機での初見のローストにおいて、焙煎機とローストの設定の位置を探るためにも使えるスキルである。

もちろん通常業務でも使用している焙煎士もいることだろう。
個人的な見解になるが、その場合、使用している焙煎機の特性が大きく関係するスキルであると考えている。
それは蓄熱性の豊な焙煎機での使用が適しているからである。
当店のような蓄熱性がそれほど豊ではない焙煎機だとローストの設定がとてもシビアに反応してしまうため、ローストの変化を視覚・聴覚・嗅覚で確認してから設定を変更するまでのわずかなタイムラグが致命傷となってしまうためである。
なので当店の場合では次に解説をする感覚の使い方を採用している。

当店で採用している方法が、ローストしたコーヒーをカッピングし、そのカッピングしたフレーバーや質感や酸味の登場の仕方から、味づくりのバランスを見極め、そのバランスと脳内でローストの設定をたどることで結びつけ、次回のローストの設定を導き出すという感覚の使い方である。

それは、ローストされたコーヒーのカッピングでは、そのすべてが登場しているためである。
そのすべてとは、カッピングの中に、ローストの味づくりで与えられた「設定」のバランスが含まれているためである。
そのカッピングの内容の中からローストによってもたらされた要因を分析できる感覚を身につければ、カッピングからローストの設定のバランスを感じられるようになり、次回のローストの設定の変更箇所が見えるので、次回のローストの設計図を頭の中で構築することができるようになる。

ボクもいつの頃からカッピングからローストの設計図が導き出せるようになったのかと言われてもよく分かっていないのだが、日々の繰り返しの中で、ローストとそのカッピングと向き合ってきたことからそのスキルが身に付いたことは間違いない。
誰かも言っていたが、ひとつのことを四半世紀真剣に取り組むことで、見えなかった世界が見えるようになるのだと。
感覚を育てるということは、そういうことなんだと思っている。

それもこれも、自分の使っている焙煎機の特性が理由のひとつになっている。
蓄熱性の豊な焙煎機を最初から使っていたのなら、このスキルとこのローストの技法は身についていないことだとも思っている。

そして、それを踏まえたうえで述べるのだが、人間の脳とはとても凄いスペックが潜んでいる。
それを最初から使える人間は天才であり、自分のような凡人は努力で身につけるしか方法はないのだと思っている。
そういった能力を使えるようになるために考え、そして学ぶのだ。


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