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学習・教育

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①決断の前に何度か考えよ、②指摘を素直に受け取れないのは危険信号、③”いま”ご褒美がもらえる仕組みをつくれ -- 「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」の読書ノート

①決断の前に何度か考えよ、②指摘を素直に受け取れないのは危険信号、③”いま”ご褒美がもらえる仕組みをつくれ -- 「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」の読書ノート

この記事は、ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか -- 説得力と影響力の科学 -- 』の読書ノートである。私が受け取ったことは必ずしもSharotが言おうとしていたことと一致していないので、気になった方はぜひ原著をお読みください。

①決断の前に何度か考えよ私は、大事な決断をするとき、那須高原に行って、何日間かこもって考えることにしている。第一に、心理学徒として、大切な決断を

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ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ソ連の天才的心理学者ヴィゴツキーが提唱した「発達の最近接領域(Zone of proximal development)」理論は、現在の教育改革を支える大切な概念の一つです。学習科学の基礎概念の一つである「足場かけ」の元ネタでもありますし、個人的には「主体的・対話的で深い学び」が「這い回る経験主義」に堕落しないための鍵概念でもあると思っています。教育学の講義では必ず触れられ、様々な教育の議論で引用

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謙虚と卑屈、謙虚と傲慢の差異 - 小学生・高校生との対話を経て至った仮説 -

謙虚と卑屈、謙虚と傲慢の差異 - 小学生・高校生との対話を経て至った仮説 -

1. 問い日本人を喋らせるのは、インド人を黙らせるのよりも難しいとジョークでよく言われる通り、「日本人は主張が弱い」としばしば考えられている。確かにあまりにもステレオタイプかもしれないが、この命題は一定は正しい。それゆえに、これからの国際社会で生きていくためには、日本人は自信を持って自分の考えを発信できるようにならなければならないと言われる。

一方で、日本人の謙虚さは美徳とされる。欧米でもソクラ

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PISA2018(OECD)の結果を読んで、キャリア教育と読解力の重要性に思いを馳せる

OECD/PISA2018の結果が出てました。あまりに面白すぎて仕事の帰り道ずっと読んでしまった。

まだ詳しいデータは公表されていないので、レポート読んで面白かったところのメモをシェアします。リテラシーのスコアだけではなくて、後半の質問紙分析のところも面白いのでぜひ。

大学院時代、キャリア教育や読解力をテーマに活動していたんだけど、その重要性を改めて感じる結果でした。

ちなみにここから新聞で

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松尾芭蕉の俳諧論を補助線に、学びの在り方を考える(勝負・遊び・求道・探究)

松尾芭蕉の俳諧論を補助線に、学びの在り方を考える(勝負・遊び・求道・探究)

教育が変わりつつある。いまや、教育という概念が座っていた玉座には、アクティブ・ラーニング、探究学習、問題解決型学習、プロジェクト学習、プレイフル・ラーニング等、新しい概念が同床異夢の状態で在る。

新しく玉座に座ろうとする概念に共通するキーワードがある。それは「楽しさ」である。いままで、学校で展開される教育が苦痛なほど楽しくなかったため、新しい教育はそれを否定して楽しさを自身の売りとする。

例え

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一気に変えようとせずに、徐々に先生が変わっていけば、学校教育は変わる

一気に変えようとせずに、徐々に先生が変わっていけば、学校教育は変わる

今日は、学校教育の変え方について考察してみたい。今日、多くの人が「教育を変える」ことを議論しているが、そのときの焦点はWhyあるいはWhatである。Howを論じたものは少ない。

かつて私は教育政策と認知科学を専攻していた。私のビジョンは、日本の学校教育を学習者起点の精神に基づいて変革することである。確かに時間はかかるが、多くのことを学び、仲間を集めながら一つひとつ進めている。私にとって学校教育の

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