ウチダカズヒロ

ウチダカズヒロです。1968年生まれ。男。本を読みます。本のいいところを書きます。オス…

ウチダカズヒロ

ウチダカズヒロです。1968年生まれ。男。本を読みます。本のいいところを書きます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

記事一覧

読書感想文「頭のいい人が話す前に考えていること」安達 裕哉 (著)

 「謙虚に聞こう」と考えているのだ。  この謙虚になる相手というのは、クライアントだったり、上司だったり、先輩や同僚、部下ということもあるだろうし、言葉や歴史、…

読書感想文「まいまいつぶろ」村木 嵐 (著)

 ダイバーシティ。インクルージョン。いや、エンパワーメントか。  障害を持った者への罵りを、時代小説という舞台を借りて日の当たる場所へ曝け出してみせた。実は、そ…

読書感想文「なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える」川原 繁人 (著)

 言語学最前線である。  言葉は変化するとはよく言われるし、実際、変化が起こるのは、発する言葉の伝達速度アップと効率化の欲求の表れであったといえそうだ。社会集団…

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読書感想文「化学の授業をはじめます。」ボニー・ガルマス (著), 鈴木 美朋 (翻訳)

 とびきりハードで不寛容で未成熟な若くリベラルなアメリカでのおとぎ話だ。  女はいつも戦っている。負け戦であってもだ。だから、ページをめくるのは重くつらい。従順…

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読書感想文「木挽町のあだ討ち」永井 紗耶子 (著)

 江戸の名手である。  とくに町人、悪所を書かせたとき、この人の右に出る者は何人いるだろうか。まるで、暖簾の向こうで見てきたようまちの風情を描く。たいした筆力だ…

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読書感想文「成瀬は信じた道をいく」宮島 未奈 (著)

 人格の形成とはいつ成されるのだろうか。  持って生まれた性格や才能、能力が揃い「その人」らしさが形づくられ、他からもそう認識されるのはいつなんだろうか。何を言…

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読書感想文「2020年代のまちづくり: 震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ」宇野常寛 (編集), 井上岳一 (…

 なぜ、サブカル批評、現代文化論の宇野は、政治や地域社会を論ずる本を作り続けるのか。  この本は、2011年の東日本大震災、2020年前後の新型コロナウィルス感染症の社…

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読書感想文「世界は経営でできている」岩尾 俊兵 (著)

 岩尾は言う「なぜお前は自分自身をマネジメントできないのか」。そればかりではない。「なぜお前たちは、いつまでも手段と目的をとっ散らかっているのか」と呆れているの…

1

読書感想文「事務に踊る人々」阿部 公彦 (著)

 事務とは、手続きであり、プロトコルであり、フォーマットであり、プロセスであり、契約であり、説明責任であり、会計であり、ブロックチェーンである。要は、「正しさ」…

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読書感想文「地雷グリコ」青崎 有吾 (著)

 痛快・天空人ゲームバトルである。  ゲームの要素とは、遊戯性と射幸性、そして全てのプレイヤーを制するルールである。なので勝負を分けるのは、ルールのハックである…

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読書感想文「この世にたやすい仕事はない」津村 記久子 (著)

 仕事と居場所と感情の話しだ。  働くことに伴って少なからず、感情のやり取りが発生する。それは達成感や感謝を向けられることといった正の面もあるし、ただただ疲弊し…

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読書感想文「チーム・オルタナティブの冒険」宇野 常寛 (著)

 子ども向けのテレビ特撮ヒーロー番組の放送時間は、なぜ30分なのか。  子どもの集中力の持続時間の長さでもあるように思うが、実は違うだろう。一話で子どもをテレビの…

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読書感想文「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」酒井 聡平 (著)

 気骨と使命感を帯びた記者の歩みだ。まるで講談ものに出てくる仇討ちの浪人のようではないか。  物事を「終わったことにしたい」「面倒なことは避けたい」という勢力は…

5

読書感想文「ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか」森下 香枝 (著)

 死とは忌もの、禁忌である。日常生活からは憚られる。なので、通常の日常原理とは違う物差しで物事が動く。「身内に不幸が」と言えば、「そりゃ、しゃーない」となる。 …

読書感想文「ユーザーファースト  穐田誉輝とくふうカンパニー  食べログ、クックパッドを育てた男」野地秩嘉 (著)

 ビジネスをどう作るか。  つまるところ、どんな価値を提供するかに尽きるのだが、穐田は自分の目で見て、自分の頭で考え、実行してみせる。当たり前のようだが、案外で…

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読書感想文「黒い海 船は突然、深海へ消えた」伊澤 理江 (著)

 オネスティーとは何か。  ただただ「気の毒」である。あきらかにオカシイと誰からも突っ込まれてしまうことを報告書にまとめ、そのことを聞かれても「わかんない」と答…

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読書感想文「頭のいい人が話す前に考えていること」安達 裕哉 (著)

読書感想文「頭のいい人が話す前に考えていること」安達 裕哉 (著)

 「謙虚に聞こう」と考えているのだ。
 この謙虚になる相手というのは、クライアントだったり、上司だったり、先輩や同僚、部下ということもあるだろうし、言葉や歴史、シチュエーションそのものだったりもする。謙虚な態度や振る舞いのもとで発する言葉が効き目があるということだ。
 そうした、半ば感情労働や場を読む力が発揮されることによって表現される「頭のいい人」というのは、「立派な人」「ちゃんとした大人」とい

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読書感想文「まいまいつぶろ」村木 嵐 (著)

読書感想文「まいまいつぶろ」村木 嵐 (著)

 ダイバーシティ。インクルージョン。いや、エンパワーメントか。
 障害を持った者への罵りを、時代小説という舞台を借りて日の当たる場所へ曝け出してみせた。実は、そうした者の誰もが好き好んで腐そうとしているわけでは無い。自分の身の振り方を案じて「使い物にならぬ」、「役に立たぬ」と攻撃するのだ。それほどまでに、人は弱い。
 己を消して身を尽くした結果、かえって気持ち悪がられて疎まれて受けてしまう攻撃とは

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読書感想文「なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える」川原 繁人 (著)

読書感想文「なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える」川原 繁人 (著)

 言語学最前線である。
 言葉は変化するとはよく言われるし、実際、変化が起こるのは、発する言葉の伝達速度アップと効率化の欲求の表れであったといえそうだ。社会集団が安定化し、閉じた関係性の中で意思や意味を伝えるようになると、省略と省エネが起きる。「最悪(でも)、言わんでもわかるやろ」となる。何でそうなるか。面倒だからである。言語化は頭を使うし、意図が伝わったかを確認するには「やってみせ、言って聞かせ

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読書感想文「化学の授業をはじめます。」ボニー・ガルマス (著), 鈴木 美朋 (翻訳)

読書感想文「化学の授業をはじめます。」ボニー・ガルマス (著), 鈴木 美朋 (翻訳)

 とびきりハードで不寛容で未成熟な若くリベラルなアメリカでのおとぎ話だ。
 女はいつも戦っている。負け戦であってもだ。だから、ページをめくるのは重くつらい。従順で健気で素直な「女の子」であることを当然に「定形」として求め・求められるという社会規範にボロボロになりながらも立ち向かうリケジョが主人公だからだ。規範からはみ出てしまうと、お転婆、じゃじゃ馬、さらには阿婆擦れと呼ばれてしまう。定形以外の個性

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読書感想文「木挽町のあだ討ち」永井 紗耶子 (著)

読書感想文「木挽町のあだ討ち」永井 紗耶子 (著)

 江戸の名手である。
 とくに町人、悪所を書かせたとき、この人の右に出る者は何人いるだろうか。まるで、暖簾の向こうで見てきたようまちの風情を描く。たいした筆力だ。ただただ恐れ入る。
 大団円を迎えるまで、地味なシーンに時間を掛ける。それには理由があるし、そこがいい。何かが起こった後の話しなので、基本、何も起こらない。こうだったああだったということになる。でも、前に進むことだけが今を生きるということ

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読書感想文「成瀬は信じた道をいく」宮島 未奈 (著)

読書感想文「成瀬は信じた道をいく」宮島 未奈 (著)

 人格の形成とはいつ成されるのだろうか。
 持って生まれた性格や才能、能力が揃い「その人」らしさが形づくられ、他からもそう認識されるのはいつなんだろうか。何を言いたいのかと言えば、続刊であるこの本にもおいても、成瀬あかりはあいも変わらず天然・自然由来の成瀬あかりであった。
 成長し大学生になったが、大人びたり世間擦れしたりせず、無欲で無垢の聖性を帯びたまま、かえって行動半径が広がった成瀬あかりが際

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読書感想文「2020年代のまちづくり: 震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ」宇野常寛 (編集), 井上岳一 (著), 加藤優一 (著), & 18 その他

読書感想文「2020年代のまちづくり: 震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ」宇野常寛 (編集), 井上岳一 (著), 加藤優一 (著), & 18 その他

 なぜ、サブカル批評、現代文化論の宇野は、政治や地域社会を論ずる本を作り続けるのか。
 この本は、2011年の東日本大震災、2020年前後の新型コロナウィルス感染症の社会経済情勢の受け、東京や地方の「まちづくり」を考えたものだ。もっとも、下敷きとして1995年の阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件があり、さらに言えば、1985年に豊田商事会長刺殺事件、日本航空123便墜落事故、G5のプラザ合意があった

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読書感想文「世界は経営でできている」岩尾 俊兵 (著)

読書感想文「世界は経営でできている」岩尾 俊兵 (著)

 岩尾は言う「なぜお前は自分自身をマネジメントできないのか」。そればかりではない。「なぜお前たちは、いつまでも手段と目的をとっ散らかっているのか」と呆れているのだ。
 しかしだ。あなたがいま求めているものは、目的ではなく手段ではないのか?と問われ、「そうかも、手段かも」と思ってみたところで、では本来の目的って?深掘りした目的は見つかるの?との疑問が沸いてくるのではないか。んー、酒が飲みたいのは、酔

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読書感想文「事務に踊る人々」阿部 公彦 (著)

読書感想文「事務に踊る人々」阿部 公彦 (著)

 事務とは、手続きであり、プロトコルであり、フォーマットであり、プロセスであり、契約であり、説明責任であり、会計であり、ブロックチェーンである。要は、「正しさ」を求める一連の行為である。
 この一連の行為において我々は「正常」でなければならず、まどろんだり、モヤがかかっていたりしてはいけない。パッキリキッカリ明晰でなければならない。こうした事務的であること=官僚的であることとは、正しさがもたらす恩

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読書感想文「地雷グリコ」青崎 有吾 (著)

読書感想文「地雷グリコ」青崎 有吾 (著)

 痛快・天空人ゲームバトルである。
 ゲームの要素とは、遊戯性と射幸性、そして全てのプレイヤーを制するルールである。なので勝負を分けるのは、ルールのハックである。とは言えである。できるのか?易々と勝ち負けを分ける勘所を読み切り、対戦相手の手と判断を見定め、その緊張の場において向かい合うのだ。計算であり思考力である。神々のレベルかよ。少なくとも知恵のレベルは天空人だ。
 登場するもともとのゲームは、

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読書感想文「この世にたやすい仕事はない」津村 記久子 (著)

読書感想文「この世にたやすい仕事はない」津村 記久子 (著)

 仕事と居場所と感情の話しだ。
 働くことに伴って少なからず、感情のやり取りが発生する。それは達成感や感謝を向けられることといった正の面もあるし、ただただ疲弊したり夢中になってしまうあまり前後が見えなくなる負の面もある。
 もっとも、煩わしいだけの人間関係もあるし、事業所として軌道に乗らず廃業してしまうことでその職場が無くなることだってある。
 主人公の得た5つの職場で過ごした時間は、社会復帰のた

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読書感想文「チーム・オルタナティブの冒険」宇野 常寛 (著)

読書感想文「チーム・オルタナティブの冒険」宇野 常寛 (著)

 子ども向けのテレビ特撮ヒーロー番組の放送時間は、なぜ30分なのか。
 子どもの集中力の持続時間の長さでもあるように思うが、実は違うだろう。一話で子どもをテレビの前に釘付けさせ続ける制作者側の力量の問題でもあるし、実は、視聴者である子どもは保護者たちの都合で案外と忙しく、画面の前に釘付けにさせてもらえる定常的な時間は30分程度なのだ。
 この一話30分間の世界で捨象されてしまった話しの前提や日常の

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読書感想文「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」酒井 聡平 (著)

読書感想文「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」酒井 聡平 (著)

 気骨と使命感を帯びた記者の歩みだ。まるで講談ものに出てくる仇討ちの浪人のようではないか。
 物事を「終わったことにしたい」「面倒なことは避けたい」という勢力は確実に存在する。そのことを指摘したり、迂闊に本質を追求すると逆上したり逆襲を受けたりするので注意が必要だ。人生どこで逆恨みされるかわからず、また、どこに落とし穴を掘られているかわからない。くわばらくわばらである。
 戦死者の遺骨収集・帰還が

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読書感想文「ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか」森下 香枝 (著)

読書感想文「ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか」森下 香枝 (著)

 死とは忌もの、禁忌である。日常生活からは憚られる。なので、通常の日常原理とは違う物差しで物事が動く。「身内に不幸が」と言えば、「そりゃ、しゃーない」となる。
 身内すなわちプライベートな冠婚葬祭として、これまで家族単位で死が扱われてきたものが、パーソナルなものになって、いよいよ旧来の扱い方、捉え方では、死に伴う遺骨や墓、財産の取り扱いが行き詰まってきた。人は皆んな必ず死ぬ。看取られて死ぬこともあ

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読書感想文「ユーザーファースト  穐田誉輝とくふうカンパニー  食べログ、クックパッドを育てた男」野地秩嘉 (著)

読書感想文「ユーザーファースト  穐田誉輝とくふうカンパニー  食べログ、クックパッドを育てた男」野地秩嘉 (著)

 ビジネスをどう作るか。
 つまるところ、どんな価値を提供するかに尽きるのだが、穐田は自分の目で見て、自分の頭で考え、実行してみせる。当たり前のようだが、案外できていないものだ。なぜか。人の風説や評判、友人・知人の話しを信用してコロっと落ちる。面倒くさくなって自分で確かめるず、曖昧にしてしまう。そして、創意工夫や作り出すモノやサービスがどんな問題解決となるか、どれほど便利になるか、どれほど安くなる

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読書感想文「黒い海 船は突然、深海へ消えた」伊澤 理江 (著)

読書感想文「黒い海 船は突然、深海へ消えた」伊澤 理江 (著)

 オネスティーとは何か。
 ただただ「気の毒」である。あきらかにオカシイと誰からも突っ込まれてしまうことを報告書にまとめ、そのことを聞かれても「わかんない」と答えるのだ。なぜ、そんな木偶の坊が出来上がってしまうのか。安きに流れてしまっているのだ。法的根拠を持ち、事実をもとに公正さを実現しようとする職業倫理に照らし、デタラメを排除し、公明正大であろうとすることだ。仮に、いま、全てをつまびらかに語るに

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