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短編集

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ショートショート的なものや、季節もの短編とかを入れ込む箱。
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【短編小説】 春のあしおと

【短編小説】 春のあしおと

 立春がくるといつも思う。

「こんなに寒いのに春だなんて」

 私はそう呟きながらマフラーを口元に引き上げた。立春も立秋も、一番寒いときと一番暑いときにやってくる。そのたびに私は悪態をつきたい気分になる。期待させておいて、裏切られるのが本当に嫌い。
 吹く風はとても冷たく、顔に吹き付けてくる。時折、雪がちらついていっそう顔を冷やした。
 玄関の鍵を開け、ドアを乱暴に開けると、ドアベルがちりんちり

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原石と虹

原石と虹

4月アンケート、少女二人 2016年版です。

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「ねえ、これからどうするの?」
 疲れた顔で晶が聞いてきた。
「……帰りたいなら帰れば」
 私はつい、そんな悪態をついてしまう。
「穂花が帰るまで帰んないけどさ」
 そう言う晶を振り返って、私は小さくため息をついた。
 晶はそばにあった塀にもたれていた。朝まで降っていた雨は上がって、気温はすで

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天体観測

天体観測

4月アンケート 少女と男のスペースファンタジー篇
大変お待たせいたしました…。

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 その銀色の大きな筒は、いつもと同じように床の暗い空に向かって伸びていた。ひと抱え以上もある太い筒は、鉄の鈍い輝きを放っている。

 カナメはその筒にそっと手のひらを当てた。黙ったまま冷たい筒を撫でる。

「……すまないけど、今日はそれに触れないでくれる

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金魚

金魚

 暑い夜だった。
 じっとりと首筋に汗がまとわりつき、ちくちくした刺激を放っている。俺は誰にもぶつけられないイライラを飲み込み、昨晩壊れたエアコンを恨めしげに眺めながら、うちわで必死に生ぬるい風をかき混ぜようとしていた。
 窓を開けていても外の空気は微動だにせず、かえって湿度の高いムッとした夏のにおいが押し寄せてくる。

 ああもうどうしてこんなに日本の夏は蒸し暑いんだ。

 やけに腹が立

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一期一会

一期一会

 一人で飲みたくて店を探していた。
 適当な居酒屋に入り、適当なつまみと生ビールを頼んだ。それは普段男に混じって当然のように仕事をしている私にとって、あまり珍しくもない行為だったのだけれど、案内されたカウンターの席の、たまたま隣に座っていたあなたは違ったようだ。

「この店に一人、女性なんて珍しいね。どこから?」
 と、あなたは気楽に私に問いかけた。
 枝豆とビールが届いて数分が経っていた私は、乾

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沈丁花

沈丁花

 あれは。

 香田は買い物客でごった返す祝日の大型ショッピングモールに来ていた。姉がバレンタインガールズパーティをやるとかで、その材料を買い込むのに荷物持ち要員として召喚されたのだ。どうせなんのおすそ分けも感謝もしないくせに、つくづく姉というのは弟を小間使いか何かだと思っているらしい。
 赤や金のハートが踊り、製菓材料やキットがところ狭しと並べられたコーナーは、女性客で埋め尽くされていた。姉

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雪の降る街

雪の降る街

「今日はまた一段と冷え込むな」
 スコップを持った初老の男が、雪かきの手を止めて呟いた。犬を連れて散歩していた親子が男性の顔を見ながら頷く。
 空を見上げると、青い空に鈍く歪む太陽が光っていた。
「ちったあ、あったかくなって溶けてくれりゃいいんだが」
「この街の雪が溶けたことなんて、これまで一度もないですからねえ」
 そう女性が呟いたあと、一陣の風が吹いた。折から積もっていた雪が高く空まで舞い上が

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