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【年越し企画】熊大新聞記者が勝手に選ぶ・おもしろかった作品2023!!

 色々あった2023年ももう終わり、あなたがこの記事を読んでいる頃には年を越してしまっているかもしれません。そこで、熊本大学新聞社は「2023年に面白かったもの」を記者8人から募集し、勝手におすすめすることにしました。気になったら時間がある年末年始にぜひお手に取ってみてください。復刊1周年の熊本大学新聞を今後もよろしくお願いいたします!
なお、下記の作品紹介にはいかなる個人・団体に対する批判的意図は含まれないことをご承知おきください。
(デジタル版編集部)


・小室直樹『痛快!憲法学』(集英社インターナショナル、2001)
近代以降の西洋を決定づけるメンタリティを理解でき、そしてそれは現代の日本の問題を読み解く物差しとなるだろう。23年6月『日本人のための憲法原論 新装版』として同社から復刊。
[https://www.shueisha-int.co.jp/publish/痛快!憲法学](https://www.shueisha-int.co.jp/publish/%E7%97%9B%E5%BF%AB%EF%BC%81%E6%86%B2%E6%B3%95%E5%AD%A6(23/12/30確認)

・宮腰忠『高校数学+α: 基礎と論理の物語』(共立出版、2004)
受験数学ではいまいちわからなかった数学のパラダイムが理解できる。分量がこれ多く私は途中でつまづいたが、得るものも大きい。ネットでも読める(https://tad311.xsrv.jp/hsmath/downroad.html 23/12/30確認)のでうまく利用してほしい。
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10010328.html(23/12/30確認)

・埋田昌明 『時間と人生について―歳月の空費と生の充実』(日本図書刊行会、1998)
大学生になり十分な時間で充実した生活を送れると思いきや意外にそうにもいかなかった私が抱えていたモヤモヤしたものを言語化してくれた一冊。
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/BO24330(23/12/30確認)
(P.N.ラガード)

・『実写版 リトル・マーメイド』(Disney、2023)
1989年に公開されたアニメ版リトル・マーメイドを実写化した作品。主人公であるアリエルのキャストに黒人女性を起用したことに対してポリティカル・コレクトネスだと批判もあった。一方で、アニメ版より深みのあるストーリーや色鮮やかな海の世界、なにより歌唱力の高さには圧倒される。

・越水利江子『とりかえばや物語』(岩崎書店、2016)
時は平安。容姿がそっくりな凛々しい姫君と内気な若君は、それぞれ男装・女装し互いの立場を入れ替えて生きていこうとする──。小中学生向け「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズの一冊。挿絵付き、現代語訳で読みやすく手に取りやすい。原作は平安時代後期に作られたと言われる。平安ならではのわりとなんでもありの恋愛小説で、ジャンルとしては今で言う「ライトノベル」に属するような作品。性別を偽り生き続けることへの難しさや葛藤も描かれており、「自分らしく生きるためには」を考えさせられる作品でもある。

・桑原亮子・嶋田うれ葉・佃良太など出演『連続テレビ小説 舞い上がれ!』(NHK、2022)
ものづくりの町・東大阪で生まれた主人公「舞」が空に憧れ、挫折や失敗を繰り返しながら自分の生きる道を決めていく。夢はひとつじゃなくていい。諦めたっていい。間違えたっていい。支えてくれる人がいる。これまでで1番「令和らしい」朝ドラ。
(P.N.あっちょんぶりけ)

・『ファミリー☆ウォーズ』(阪元裕吾監督、2018)
 認知症を発症した祖父が子供を車で轢いてから円満だった家庭にヒビが入っていく。痴呆が進む家族をどこまで愛し、どこまで責任を追うべきなのかを考えさせられる社会派作品。

・『ミスミソウ』(内藤瑛亮監督、2016)
グロい!!!!!!百合!!!!!

・『ヴィーガンズハム』(ファブリス・エブエ監督、2021)
 ヴィーガンを食べてみたら絶品だった!?肉屋を営む夫婦がヴィーガンの肉を捌く。ヴィーガンはもちろん、いろんな界隈を皮肉する痛快コメディ映画。イラン豚を食べに行こう!
(P.N.今年見た映画の一番は「君は永遠にそいつらより若い」)


・タルコット・パーソンズ、佐藤勉訳『社会体系論』(青木書店、1974)(Parsons, T, 1951, The Social System, New York, Free Press.)
社会を行為のシステムとして描写しようとした社会学者パーソンズの研究のう
ちの一つ。社会について(比較的)きれいに分類された理論を読みたい人にはお勧め。医療についての社会学的な分析のバイブルでもあるので、ひとの行いとしての医療に興味がある人は読んでみてもいいかも。
余談だが、パーソンズはこの本で人間の行為を規定する枠組みを語るうえで、個人の動機の存在を前提にしている……と思う。記者は2×才にしてようやく「なるほどあらゆる人には動機となる欲があるのが当たり前なのだな」と蒙を啓かれた思いだった(もちろんこういう読み方は想定されていない)。常識を身に着けてから読み直したい一冊。

・マックス・ウェーバー、尾高邦雄訳『職業としての学問』(岩波文庫、1977)(Weber, Max, 1917, Wissenschaft als Beruf, Munchen and Leipzig, Duncker and Humblot.)
社会学者ウェーバーの1917年の講演。師の勧めにより。オチだけ言ってしまうと、学問に直接的な「生の意味」の答や超常的な解決能力、指導者としての学問者の姿を求めることは無理なハナシ、というもの。……大変耳が痛い話である。学問をすることで手に入るのは、「主体」として考える知識と力であり、人生すべての答ではないのだそうだ。私は大学で学ぶことで、主体として生きることの耐え難い苦痛に堪えうる人間に、はたしてなれただろうか?

・池内紀『悪魔の話』(講談社、1991)
ヨーロッパにおける悪魔についての概説書。そもそも悪魔とはいったい何なのか。ドイツ文学者で翻訳家の池内紀が、悪魔の力や弱点とされたもの、芸術の中の悪魔など、幅広い角度から悪魔について広く浅く語る。特別詳しく書いてあるわけではないが、読み物としては面白い。ふわっと「悪魔ってそんなもんか~」程度に知りたい人におすすめ。
(P.N.遁走ジジイ)


・「日本で一番悪い奴ら」(ジャンゴフィルム、2016)
刑事としての点数稼ぎのために、裏社会の人間と手を組む現役警察官の話。実話である「稲葉事件」をもとに制作されたノンフィクション映画。
 最高に明るい雰囲気の映画なので、明るい気持ちになりたいときにオススメ。

・「死刑にいたる病」(RIKIプロジェクト、2022)
平凡な大学生の主人公は、獄中の連続殺人犯からある一通の手紙を受け取る。最後まで目が離せない、サイコ・サスペンス映画。最初のグロいシーンを乗り越えさえすれば、最高に明るい雰囲気の映画なので、明るい気持ちになりたいときにオススメ。
(P.N.こたつむり)


・ゴジラ−1.0(東宝、2023)
待望のゴジラ新作。迫力満点だった。CGとは思えないほどリアリティがあってまるでその場にいるかのようなドキドキ感があった。ヒューマンドラマもあり、ゴジラファンはもちろん、そうではない人にもおすすめ。

・ウロボロス -警察ヲ裁クハ我ニアリ-(漫画/神崎裕也/新潮社/2009〜2017)
警察漫画。大切な人を殺されたが警察に証拠隠蔽されてしまった2人が復讐をするために、片方は警察官になり、片方はヤクザになり事件の真相を追っていく物語。アクション多め。超現実的なシーンもあって楽しい。

・Get love!! フィールドの王子さま(漫画/池山田剛/小学館/2003〜2004)
個人的に王道の少女漫画。イチャラブ全開。ギャグ要素もあるので、サクサク読めるのでおすすめ。
(P.N.惣菜売りの少女C)

・ジョージ・オーウェル『一九八四年(新訳版)』(早川書房、2009)
ヨーロッパ最後の人間()をどのように描くか、社会主義やイギリス労働党(私はその支持者です)を攻撃することを意図したのでは決してありません。しかし共産主義やファシズムですでに部分的に実現した(…)倒錯を暴露することを意図したものです(…)。小説の舞台はイギリスに置かれていますが、これは英語を話す民族が生来的に他より優れているわけではないこと、全体主義はもし戦わなければどこにおいても勝利しうることを強調するためです。とのこと。

・ダニエル・キイス、小野芙佐訳『アルジャーノンに花束を』 (早川書房、2015)「知能」が人間に与えられた最高の資質の一つであるにもかかわらず、その知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことが多い点に気づき、「愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこす」こと、「自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ」を作品のモチーフに据えた。「ぼくの教養は、ぼくとぼくの愛するひとたち――ぼくの両親――のあいだに楔を打ちこむ」。
生物としての人間•社会的存在とは何かを考えさせられる全米が泣いた、大コメディ•サスペンス大号泣作品。

・チャック・パラニューク『ファイト•クラブ』(早川書房、2015)
特に映画版。映画版は鬼才フィンチャーの監督作品。小説版との違いは多い。小説の膨大なセリフ(特に主人公の独白)は、映画版では発言の主がタイラーほか数人の登場人物に変更されている。また小説版では主人公とタイラーとの出会いの場がヌーディストビーチである点、小説版では主人公は騒乱計画に積極的に関わっており、疎外されている描写はないなどの違いがある。ロジャー・イーバートはこの映画を「マッチョ・ポルノ」と評している。
(P.N.暇な大学生は早く見ろボケクソボケ)


・櫻井義秀『統一教会 性・カネ・恨から実像に迫る』(中公新書、2023)
統一協会の歴史から搾取システム・財閥と化した教団運営、それを正当化する教義や、信者による学生運動、政治運動などに関して網羅的に学べる概説書的存在。

・坂上暁仁『神田ごくら町職人ばなし 〈一〉』(リイド社、2023)
江戸時代の職人生活、庶民生活を素晴らしい画力で描き切っている。歴史好きはぜひ読んでほしい。

・小野寺拓也、田野大輔 『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット、2023)
ロシアによる「どっちもどっち」論や批判への相対化、「全て悪かったわけではない」論を、歴史学的に考察した本。特に大学で歴史学を学ぶ人、歴史に興味がある人は読んでみてほしい。分量も読みやすいのでぜひ。
(P.N.追放系赤ヘルノンセクト公爵令嬢)

・小川哲『地図と拳』(集英社、2022)
日露戦争前夜から第二次世界大戦までの半世紀、満州の架空の都市を巡る殺戮と知略。都市計画や建築学の要素を取り込んだこの作品は私にとって新鮮な書であった。ボリューム満点の歴史×空想小説。

・ダニエル・キイス、小野芙佐訳『アルジャーノンに花束を』 (早川書房、2015)
知的障害のある主人公チャーリー・ゴードンは手術により天才となり、同じ手術を受けたマウスのアルジャーノンと知能を競い合う。いつしかアルジャーノンの知能を優に超えたチャーリーはある真実に気づきその結末を回避するため奔走するが…。チャーリーにとって知を得ることとは幸福であったのか、それとも苦痛であったのか。ラストの一文が非常に秀逸な長編SF作品。

・【漫画】小梅けいと【原作】スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ【監修】速水螺旋人『戦争は女の顔をしていない』(KADOKAWA,2020)既刊4巻
ノーベル文学賞を受賞した女性作家アレクシェーヴィチの名著をコミライズ化した作品。第二次世界大戦の独ソ戦に従軍さた女性兵士に直接取材したもので、生々しい体験が描かれている。人類史上未曾有の犠牲者を出した独ソ戦のリアルな戦況が描写されており非常に勉強になった。
(P.N.モード系女子)

おまけ 今年の柴田理恵 3選

・『どうする家康』(NHK 2023)、団子売
端役でありストーリー本編には絡まなかったが、個性ある団子売の老婆を数回にわたり演じた。家康が食い逃げをした伝説に基づく配役だが、柴田理恵のおばちゃん力により、生々しい戦国時代の団子売が見事に顕現している。75柴田理恵ポイント。

・『大コメ騒動』(エース・プロダクション、2021)、きよ
1918年の米騒動の発端、越中女房一揆をコミカルな作風で描く映画。柴田理恵は、米商店のゴウツクババアの妹役として出演。大阪新報の記事を読みながら「はがやしいっちゃ」と連呼するきよは、ありがちな配役であることは否めないが、本人のキャラクター性を存分に活かした演技が見られる。67柴田理恵ポイント。

・『来る』(東宝映画、2018)、 霊媒師・逢坂セツ子
ホラー・ミステリー映画「来る」で、柴田理恵が演じた霊媒師・逢坂セツ子は、そのキャラクター的な魅力もさることながら、女優・柴田理恵の真髄を見ることができる。ぜひ皆さんにも見ていただきたいので詳細は伏すが、クライマックスでは柴田理恵に圧倒されること間違いなし。100柴田理恵ポイント。
(P.N.柴田理恵にガチ恋うさぎ)

※柴田理恵氏に関するおすすめは柴田氏のファンの部員の超個人的意見であることをご承知おきください(デジタル版編集部)


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