スクリーンショット_2019-06-05_11

No.12 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」

ノンフィクション小説「ブロークンライフ」No.11はこちら

2016年6月初旬

「田中さん!もうすぐ着きますよ!」

「ん…。あ、本当?分かった〜。準備しま〜す。」

寝ぼけ眼で返事をし、夜行バスから降りる準備をした。

さっき僕を起こしたのは、

SOCIAL VIETNAMの人材研修チームで一緒に働く、

チャンさんだ。僕は、チャンさんと一緒に、

同じ人材研修チームで働く、

アンさんの結婚式に招待され、

ホーチミンの北東に位置するファンティエトに向かっていた。

「田中さん!着きました!ニャンニャン!!」

「はいはい。分かってますよ〜」

「『はい』は一回!!」

「はい!(チャンさん、深夜なのに、凄いテンションだ…)」

『流石は、人材研修チームのトレーナーだ』

と変な所に関心しながら、

急かされるままに夜行バスから降りた。

ちなみに、『ニャンニャン』は、

『早く早く』という意味である。

チャンさんは日本語が堪能で、

歳は僕よりも2歳下だ。

時刻は、深夜2時だ。当然辺りは真っ暗。

「チャンさん、目的地は、どちら?」

「こっちです!さあ、行きましょう!」

チャンさんが、先をズンズン歩いていく。

僕はその後ろを、足を引きずるように付いていった。

4月下旬に木崎支店長からの引き継ぎを終えてから、

本格的な営業活動が始まった。

と共に、僕が関係する3部門からのメールや、

依頼事項が山の様に降って来て、

昼は営業活動、夜事務所に戻ってからは事務処理と、

毎晩遅くまで作業が続いていた。

ついでに時折お客様との飲みに加えて、

土日のどちらかは、黒川社長とのミーティングである。

ファンティエトに移動している今日は、

金曜日であり、当然一週間の疲れもピークだ。

(チャンさん…頼むからもう少しゆっくり歩いてくれ…)

と内心思いながらも、何とかついていく。

15分程歩いて、チャンさんが立ち止まった。

僕の50メートル程先を歩いているため、

暗くてよく見えないが、

どうやら建物を指差しているので、

目的地に着いたようだ。

(良かった…やっと寝られる…)

近付いてみて、驚いたが、そこは教会だった。

何と、ホテルに泊まるのではなく、

今日の寝床はここらしい。

ただ、もう突っ込む気力もなく、

チャンさんに促されるままに教会に入り、

男子部屋に押し込まれた。

暗い部屋に目が慣れて来ると、

数人の男性が床にゴザを敷いて寝ているのが見えた。

まだ起きていた男性が、

僕用のゴザを敷いてくれ、

指を指しながらベトナム語で何か言っている。

『ここで寝ろ』という意味らしい。

「シンカモン…」

とやっと言うと、その日は泥のように眠った。

翌朝起きると、まだ朝の6:00にも関わらず、

皆んなが起きて準備をしていた。

(皆んな、朝が早いな〜)

この頃には、日本とベトナムの時差の影響もなくなり、

僕は元の早起きが苦手な26歳に戻っている。

辺りを見回すと、チャンさんの姿を見つけた。

彼女も僕を見つけると、

「田中さん!お早うございます!」

「あ、お早うございます。」

「よく眠れましたか?」

「はい。チャンさんは…

きっと良く眠れたんでしょうね?」

「ええ!分かりますか?(ニコッ)」

「はい。(良い笑顔だな…)」

一週間の疲れを隠せない僕をよそに、

朝からフルパワーのチャンさんは

僕を朝ごはんに誘って来る。

僕らの他にも、昨日教会に泊まった結婚式の参加者が

朝ごはんに加わった。

屋台で、麺料理ブンボーを食べる。

一緒に卓を囲んでいるのが僕を含めて6人いたのだが、

端に座る僕の対角線に座る女の子が、

西洋人っぽい顔つきをしていて、一際目に付く。

(ベトナム人らしくない顔立ちだな〜。そして美人。)

「チャンさん、あの子はベトナムの方?」

「はい!ベトナムの中部、ダナン出身みたいですよ!」

「へ〜。(地域によって顔つきが違うんだな)」

その時は、その程度に考えていた。

朝食を食べ終わり、

どうやら結婚式まではまだ時間があるらしい。

チャンさんが海に行くとの事だったので、

僕も便乗する事にした。

先ほどのダナン出身の女の子も、

友達と後ろから付いてくる。

「お〜!!海だ〜!!」

一週間の仕事の疲れが残った僕も、

初めて見るベトナムの海にテンションが上がり、

ズボンの裾をまくり、靴を脱いで海に入って行く。

チャンさんに水をかけると、

パワフルなチャンさんは、

水をかけるだけでは済まさない。

僕が気を抜いた頃を見計らって、

「天誅!!」

と容赦無く、海に向かって突き飛ばして来た。

(どこで覚えたの!?その日本語!?)

と思いながら、完全に不意を突かれた僕は、

海水にダイブした。

「おいーーーーー!!

これ、結婚式で着るやつだからーーーー!!」

全身びしょ濡れになりながら、

チャンさんに向かって叫ぶと、

チャンさんはケタケタ笑いながら、何かに気付いた。

「あれ?田中さんメガネは?」

「え!?あれ?ない!

ちょっと!笑ってないで探して!!」

その後、一緒に海に来た全員で、

僕のメガネの大捜索が始まった。

「Hey! I found it!!」

見つけたのは、ダナン出身の彼女だった。

彼女が、笑いながら僕にメガネを手渡す。僕は、

「Thank you so much!! Oh can you speak English?」

「You are welcome. Yes I can.」

「Ah, thank you..ahh my name is Koichi」

「I'm Yen」

それが、イェンとの初めての会話だった。


ノンフィクション小説「ブロークンライフ」No.13はこちら

※SNSアカウント

【Twitter】

【Facebook】

【Instagram】


#海外 #海外生活 #東南アジア #ベトナム #ホーチミン #アジア #日本 #横浜 #横須賀 #オセアニア #オーストラリア #ブリスベン #ゴールドコースト #会社 #東証一部上場 #営業 #休職 #退職 #ワーキングホリデー #ワーホリ #起業 #個人事業主 #語学学習 #英語 #英語学習 #ベトナム語 #小説 #ビジネス小説 #ビジネス #ノンフィクション #出版 #自費出版 #自費出版するかも

#ファンティエト #結婚式 #海 #砂浜 #メガネ #恋人 #運命の出会い


 

サポートして頂いた金額は、全額、走っている時に飲むアルコールに使わせて頂きます🍺