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【短編小説#3】自殺願望

僕は「死にたい」と思っていた。

その感情を「特別なこと」のように、人は感じるようだけれど。僕にとって、「生きたい」とセットになっている感情だった。

「生きたいと思うこと」「死にたいと思うこと」は、片方では成り立たなない。
「光と影」、「喜びと悲しみ」のような、お互いに支え合っている関係だったんだ。

僕は、「生きたい」「死にたい」からできていた。

◇◇◇

僕が生きている世界には、6人しかいない。
6人だけの世界。
そんな世界の中で生きていて。

僕を含めた6人は、みんな違っていた。
違っていたから、6人だといえる。
もし、全く同じのがいたら、ハッキリと6人だって言えないだろう。

僕は、僕以外の5人を区別するために、名前を付けた。
名前がなければ、誰とどんな話をしたのか、覚えることが難しいから。
最初は、顔や体格、話し方で覚えていたけれど、それがなかなか難しくて。名前を付けることで、その問題は解決できた。

僕の存在は、僕以外の5人の存在があるから成り立っていて。
僕以外の誰かだって、自分以外の5人によって成り立つ世界。
そうやって出来た、僕を含めた6人の世界。
違いが6人の世界を作っていた。

そういう世界にいて。
僕は、「生きたい」とも思っていたし、
同時に「死にたい」とも思っていた。
「生きたい」と思っていたから、
「死にたい」と思っていたんだろう。

『僕以外の5人が、僕を非難したとき。』
「生きたい」とも、「死にたい」とも思った。
僕は、みんな死んでしまえと思ったし。
僕は、自分で死のうとも思った。

『僕だけが、一人でやりたいことをしていたとき。』
やはり、「生きたい」とも、「死にたい」とも思った。
僕は、みんな死んでしまってもいいやと思ったし。
僕は、このまま死んでもいいやと思った。

僕が、今、この世界からいなくなったら…
5人は何をするのだろう?
5人が生きていることを、誰が証明するのだろう?
5人がしたいと思ったことを、誰が知るのだろう?
僕の世界が無くなったら、それを知る術がない。

この世界から、僕以外の5人がいなくなってしまったら…
僕は、
朝起きて何をするだろう?
誰と話をするのだろう?
何がしたいと思うのだろう?

僕以外の5人がいなくなるということは、
僕の気持ちを表現する相手がいなくなるということ。
僕は生きているようで、死んでいる。

僕以外の5人がいなかったら、「生きている」と自信を持って言えそうもない。

僕が生きるという事は、
僕以外の誰かが生きるという事。


僕以外の誰かが生きるという事は、
僕が生きるという事。

そんな世界で生きていたんだ。

◇◇◇

目が覚めると、点けっぱなしになっていた、テレビの中で、気が狂ったような殺人鬼のニュースが流れている。
殺人鬼と呼ばれた、それは、生きていて、動いていて、何かを見ている。

「みんなを殺して、自分も死のうと思った」のだという。

テレビの中のコメンテーターが、理解できない感情を露わにしていた。
何度も、理解できないと…
何度も、何度も、殺人鬼とは別の生き物だと……

でも…
夢の中の僕は、殺人鬼のそれと同じことを考えていた。
僕以外の5人の名前が、どうしても思い出せなかったけれど…

目の前に広がる世界には
数えきれないほど、沢山の人がいて…
みんな違っていて…

僕は、今、「生きているんだ。」と思った。

※こちらの記事に続きます。


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