トラッキーのきまぐれ

元小学校及び中学校校長 今は自由人。学校の先生がほんのちょっと元気になる言葉を探してい…

トラッキーのきまぐれ

元小学校及び中学校校長 今は自由人。学校の先生がほんのちょっと元気になる言葉を探しています。老害にならない程度に、発信しようと思っています。阪神タイガース大好き。ときどきタイガースネタあり。書くこと大好き老人。

マガジン

  • リンゴがリンゴであるために 子どもの今に寄り添う

    年々厳しくなる学校現場の先生方に贈る、ほっこりしたメッセージが中心です。ちょっと視点を変えてみたい人にぜひ読んでもらいたいと思っています。

  • 評論風フィクション「学校教育史-近未来編-」

    現代の学校教育にはさまざまな課題が、長い間解決されないままになっています。今すぐにでも本気で改革を進めなければ、この作品にあるような学校が現実に現れるかもしれません。最悪のシナリオを避けるために、敢えて最悪のシナリオを書いてみました。

記事一覧

ある調査

昔、ある行事の効果を分析した結果を県の指導主事が教員に発表した研究会がありました。 いろんな角度から分析がされていましたが、その中で男女別の効果の差を示すグラフ…

心理学は人を救えるか

高校生くらいの頃、心理学に興味を持ちました。 その頃は、まったく知識もなかった(今もないですが)ので、心理学を学べば、人の気持ちが読めるようになるんじゃないかと…

酸素マスクを最初に着ける人

飛行機が飛行中に緊急事態が発生したとき、真先に酸素マスクを装着するのは機長なんだそうです。 乗客の命を守るためには、機長の命をまず確保しなければならないからだそ…

学校は必要か?

これまで、学校の制度疲労については何度か書いてきましたが、前回書いたようにこれだけ「学びの多様化学校」を増やそうという動きをみるにつけ、もっと本質的な問いが必要…

学校に危機感はあるか?

不登校が急増していることは、学校関係者じゃなくてもよく知られていることです。 全国の小中学生の不登校は、約30万人となりました。 発生率は小中合わせて3%を大きく越…

なぜ伝わらないのか

 学校現場で、子どもたちや保護者に接しているとどうもこちらの言うことが伝わらないと感じることがあります。 教員にとって至極当たり前のことがなかなか通じない。 例え…

これからの学校はどうあるべきか-制度疲労への挑戦-

今、学校が抱えているさまざまな問題は学校というシステムが制度疲労を起こしているところにあると思います。 中でも公立学校における学級制度は明らかです。 学校の基本単…

「伝える」と「伝わる」

指導主事をしていたとき、数多くの講師を招いて研修を計画・実施しました。 講師はそれぞれに個性があり、話し方や伝え方も千差万別でしたが、心に響く講義をしてくださる…

私がやった道徳の授業-「赤ん坊」で揺さぶる-

中学生が、道徳の授業を面白くないと感じるのは「最初から答えが決まっえている」というのが、その大きな理由だと思います。 それを打破するためには生徒の心を揺さぶる発…

職員の不祥事に対する管理職のクライシスマネジメント その1

職員の不祥事はあってはならないことです。 しかし、管理職がどんなに注意していてもすべて防げるとはかぎりません。明らかな犯罪行為で学校が言い訳のできない場合は、地…

絵画教室で感じたこと

昨年、生まれて初めて小学生対象の絵画教室を参観しました。 テーマは風景画かポスターのいずれかを子どもが選ぶというものでした。 参加児童は高学年を中心に20名弱という…

調査書改革から考えるこれからの学校

2023年度から広島県は「調査書(内申書)は簡素化して学習記録(内申点)だけの記載に改め、ボランティアやスポーツ、生徒会活動などの記録欄を廃止する」という方針を打ち…

見えない「心」をどう育てるのか

心は見えない。 その見えないものを簡単に「育てよ」という人がいる。 例えば、いじめの問題は子どもたちの心が育っていないからだと言う。 簡単に言ってくれるが、そんな…

管理職不足の原と対策について -その4 健康管理の難しさ-

これまで、3回に渡って管理職手不足の原因を挙げてきたが、最も厳しいのが管理職の健康管理の難しさである。 これまで、何人も教頭や校長が体調を崩して長期療養に入るの…

管理職不足の原因と対策について -その3 責任の範囲-

管理職の責任の範囲は年々広くなっている。 コロナ禍では特にひどかった。 学校の行事をするかしないか、するにしてもどこまで縮小するか、職員も経験がないことだからすべ…

管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

今回は、校長の待遇について考える。できるだけ現実的な問題として指摘していきたい。 なぜ校長になりたくないかという理由を考えるときに、これまであまり語られていなか…

ある調査

ある調査

昔、ある行事の効果を分析した結果を県の指導主事が教員に発表した研究会がありました。
いろんな角度から分析がされていましたが、その中で男女別の効果の差を示すグラフもありました。

発表が終わって、質疑応答の時間になったとき中堅の女性教諭が質問しました。
「どうして、この行事の効果を男女別に分析したのか? それは、どういう意味があるのか」

その教諭は、男女に分けて効果を示すことが女性蔑視を含んでいる

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心理学は人を救えるか

心理学は人を救えるか

高校生くらいの頃、心理学に興味を持ちました。
その頃は、まったく知識もなかった(今もないですが)ので、心理学を学べば、人の気持ちが読めるようになるんじゃないかと思っていました。

大学生になっていろいろ心理学の本を読みましたが、どうもしっくりこなくなりました。
自分の心の中にある「無意識」によって、今の自分が規定されているとか、今の苦しみは過去のトラウマによるものだとか、そういうことがわかったとし

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酸素マスクを最初に着ける人

酸素マスクを最初に着ける人

飛行機が飛行中に緊急事態が発生したとき、真先に酸素マスクを装着するのは機長なんだそうです。

乗客の命を守るためには、機長の命をまず確保しなければならないからだそうです。

学校の子どもの命を守り、育てるという意味ではまず先生の健康が確保されなければいけません。

先生が精神的・肉体的に疲れ切っていたら、子どもの命を守ることはできません。

けれども、学校にはあまりに多くの「やるべきこと」がのしか

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学校は必要か?

学校は必要か?

これまで、学校の制度疲労については何度か書いてきましたが、前回書いたようにこれだけ「学びの多様化学校」を増やそうという動きをみるにつけ、もっと本質的な問いが必要なのではないかと思うようになりました。

それが「学校は必要なのか」という問いです。
私は学校をなくせと思っているわけではありませんが、その意味を考えるために、一度思い切り疑ってみることは無駄ではないと思うのです。

学校は、勉強するところ

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学校に危機感はあるか?

学校に危機感はあるか?

不登校が急増していることは、学校関係者じゃなくてもよく知られていることです。
全国の小中学生の不登校は、約30万人となりました。
発生率は小中合わせて3%を大きく越え、中学校に限れば5.98%です。
40人学級なら2~3人に相当します。
2020年度から2022年度にかけて、約10万人増えました。

それでも、学校には意外なほど危機感がないように思えて仕方がないのです。

今、文科省は「学びの多様

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なぜ伝わらないのか

なぜ伝わらないのか

 学校現場で、子どもたちや保護者に接しているとどうもこちらの言うことが伝わらないと感じることがあります。
教員にとって至極当たり前のことがなかなか通じない。
例えば、私たち教員は、目標を持つことやそれに向かって努力することの素晴らしさは、疑いようのない真実であると思ってきました。
その「当たり前」が通用しなくなっています。

生徒の心に響いた瞬間というのは目に見えませんが、その場の空気で感じ取るこ

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これからの学校はどうあるべきか-制度疲労への挑戦-

これからの学校はどうあるべきか-制度疲労への挑戦-

今、学校が抱えているさまざまな問題は学校というシステムが制度疲労を起こしているところにあると思います。
中でも公立学校における学級制度は明らかです。
学校の基本単位として「あって当たり前」のものとして学校の中核に位置する学級ですが、多くの矛盾を抱え、深刻な問題を発生させているのに改革の手が入らず、
そのことにとってさらに矛盾が大きくなっています。こうした学級は公的にはその存在を疑われることもなく、

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「伝える」と「伝わる」

「伝える」と「伝わる」

指導主事をしていたとき、数多くの講師を招いて研修を計画・実施しました。
講師はそれぞれに個性があり、話し方や伝え方も千差万別でしたが、心に響く講義をしてくださる講師にはいくつかの共通点がありました。

一つは、事前の情報収集です。この講義がどういう目的で実施されるのか、受講者が何人くらいなのか、参加者のおおよその教員経験年数や主な受講理由などを確認されます。

なかでも、この講義(講演)が自分で希

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私がやった道徳の授業-「赤ん坊」で揺さぶる-

私がやった道徳の授業-「赤ん坊」で揺さぶる-

中学生が、道徳の授業を面白くないと感じるのは「最初から答えが決まっえている」というのが、その大きな理由だと思います。
それを打破するためには生徒の心を揺さぶる発問が必要です。

私は過去に何度か「赤ん坊」という言葉を使って揺さぶりました。以下にいくつか例を挙げてみます。
(ここに挙げる例は、今から20年~30年前に実践したものです。また、授業の内容については、具体的な資料が残っていないものも多く、

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職員の不祥事に対する管理職のクライシスマネジメント その1

職員の不祥事に対する管理職のクライシスマネジメント その1

職員の不祥事はあってはならないことです。
しかし、管理職がどんなに注意していてもすべて防げるとはかぎりません。明らかな犯罪行為で学校が言い訳のできない場合は、地域住民やマスコミも攻撃しやすくなります。
子どもが命を落とすような事件に比べれば、まだましとはいうものの、学校の信頼は一気に崩れてしまいます。
この手の話に関しては、リスクマネジメント(事前にリスクを減らす)は、しばしば紹介されていますが、

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絵画教室で感じたこと

絵画教室で感じたこと

昨年、生まれて初めて小学生対象の絵画教室を参観しました。
テーマは風景画かポスターのいずれかを子どもが選ぶというものでした。
参加児童は高学年を中心に20名弱というところでしょうか。
子どもたちは夏休みの絵の宿題に助言を求めて集まっていたのです。

テーマが複数ある上に子どもたちはそれぞれに違う絵を描いているわけですから、助言する方も大変です。
しかし、70代の元小学校教師の講師は一人ひとりに的確

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調査書改革から考えるこれからの学校

調査書改革から考えるこれからの学校

2023年度から広島県は「調査書(内申書)は簡素化して学習記録(内申点)だけの記載に改め、ボランティアやスポーツ、生徒会活動などの記録欄を廃止する」という方針を打ち出しました。
具体的には「教員が定期テストの点数などを基に評価した9教科の「学習の記録」と、名前などの基本情報に絞る。
欠席日数の記入欄も入試に必要ないとしてなくす」方針を固め、「全ての受験生に面接のような形で自身をアピールする「自己表

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見えない「心」をどう育てるのか

見えない「心」をどう育てるのか

心は見えない。
その見えないものを簡単に「育てよ」という人がいる。
例えば、いじめの問題は子どもたちの心が育っていないからだと言う。
簡単に言ってくれるが、そんなことなかなかできるのではない。
そもそも、そういうことを言う人が、自分の子の心をしっかりと育てた上でそういうことを言っているとは限らない。
むしろそういう人ほど、心ってなんですかと聞いてもはっきりと答えられない気がする。

だから、何もの

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管理職不足の原と対策について -その4 健康管理の難しさ-

管理職不足の原と対策について -その4 健康管理の難しさ-

これまで、3回に渡って管理職手不足の原因を挙げてきたが、最も厳しいのが管理職の健康管理の難しさである。
これまで、何人も教頭や校長が体調を崩して長期療養に入るのを見てきた。それは、管理職は教諭と違って長期療養に入っても、代替の管理職が用意されないことに大きな原因があると思う。
「辞めない、休まない」ことを前提にしている今の制度では、「代わりがいない」というプレッシャーで、かなりの無理をしてしまう。

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管理職不足の原因と対策について -その3 責任の範囲-

管理職不足の原因と対策について -その3 責任の範囲-

管理職の責任の範囲は年々広くなっている。
コロナ禍では特にひどかった。
学校の行事をするかしないか、するにしてもどこまで縮小するか、職員も経験がないことだからすべて校長に判断を迫ってくる。
校長が決めればそれに従いますという単純なものならいいが、そうはいかない。
コロナの状況が最悪の時期にあっても「教育的意義」を掲げて何があっても例年通りの実行を迫る者がいるかと思えば、少しでもリスクを避けたくて中

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管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

今回は、校長の待遇について考える。できるだけ現実的な問題として指摘していきたい。
なぜ校長になりたくないかという理由を考えるときに、これまであまり語られていなかったのは、辞めた後の待遇である。
これも、前回書いたように地域や都道府県によっても違うだろうが、私の勤務していた地域では退職した後は県費の職がほとんどない。
再任用校長制度も昨年度から廃止された。

県費での仕事がないということは、市町費で

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