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絵とか写真とか小説とか

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【小説】日本の仔:第1話

【清水坂 孝】(量子科学技術研究開発機構) 「さあ、行こうか」  遂にこの時が来た。  数十年に亘る日本とEU諸国との国際研究と革新的な素材、機器開発により、実用核…

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2か月前
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【小説】日本の仔:第28話

「まず全員「日本の子」であること。そして父親が同じ人物であること。即ち、皆さんは兄弟ということになります」  なんと!  確かに「日本の子」の父親は精子を提供し…

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20時間前
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メガネ女子315

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21時間前

【小説】日本の仔:第27話

【藤堂 瑞希】(環境省 地球環境局)  環境省なんて初めて来たなぁ。  AICGlassesがあれば、わざわざ集まらなくても集まって話すのと何ら変わらないことができるのに、な…

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2日前

【小説】日本の仔:第26話

【坂本 茉莉】(徳永テンスチルドレン) 『真の修行とは 如何なる状況であっても 生きている 生かされている奇跡に感謝して 全力で取り組むこと』 「何ていい言葉なんでし…

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8日前
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【小説】日本の仔:第25話

【楢原 武蔵】(徳永トウェンティスチルドレン) 「相手は11歳の子どもだぞ!何とかならんのか!」  ここは陸上自衛隊朝霞駐屯地内に作られた、インドアの訓練施設。  …

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13日前

【小説】日本の仔:第24話

【品川 果歩】(徳永セカンドチルドレン) 「好きです。できれば俺と...」 「ごめんなさい!」  告白された瞬間に断るのは、もう何度目だろう。  私は自分の直観を心底…

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2週間前

【小説】日本の仔:第23話

 ある日、僕は仕事終わりにその上司に誘われて飲みに行った。  専門学校を卒業してすぐに就職した僕は少し前に20歳になったばかりで、お酒もあまり飲んだことがなかった…

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3週間前
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【小説】日本の仔:第22話

【藤堂 瑞希】(徳永フォースチルドレン)  僕は今までに3人、人を殺してしまったことがある。  1人目は小学生の時の先生、2人目は高校生の時の同級生、そして3人目は就…

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3週間前
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【小説】日本の仔:intermission(第21話)

【清水坂 孝】(環境省 地球温暖化対策室 室長)  宇宙エレベータの建設が終わった頃、徳永は常温核融合炉の日本国外での生産、利用を解禁した。  融合炉の設計図や特許…

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3週間前
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メガネ女子314

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3週間前

【小説】日本の仔:第20話

 結局、二人とも政府へ精子を提供することになったが、徳永の精液の採取にはかなり手間が掛かったらしい。それもそのはず、実は徳永はマスターベーションをしたことがない…

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4週間前
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【小説】日本の仔:第19話

【清水坂 孝】(量子科学技術研究開発機構)  その後、種子島への中国軍の核兵器を含む攻撃について、日本国政府は国連内に特別調停委員会を設立して解決するよう要請した…

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1か月前
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【小説】日本の仔:第18話

【三ケ島 成人】(宇宙エレベータ軌道打ち上げ責任者)  ついに宇宙エレベータ軌道ケーブルを静止軌道に乗せる最終フェーズまでたどり着いた。 「展開機のブースターを点…

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1か月前
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【小説】日本の仔:第17話

 ロケットはそのまま雲を突き抜けて蒼空へと上がって行った。 「固体燃料ブースター燃焼終了、切り離し正常に終了。一号機と四号機の衛星フェアリングの分離を確認。第一…

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1か月前
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夜の江の島

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1か月前
【小説】日本の仔:第1話

【小説】日本の仔:第1話

【清水坂 孝】(量子科学技術研究開発機構)
「さあ、行こうか」

 遂にこの時が来た。
 数十年に亘る日本とEU諸国との国際研究と革新的な素材、機器開発により、実用核融合炉「JT-100」が試験運転の日を迎えたのだ。
 この核融合炉が稼働すれば、従来のウランやプルトニウムによる核分裂炉発電所と同レベルの電力が、核燃料や核廃棄物の問題をほぼ起こさずに得られることになる。
 燃料となるのは海水から取り

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【小説】日本の仔:第28話

【小説】日本の仔:第28話

「まず全員「日本の子」であること。そして父親が同じ人物であること。即ち、皆さんは兄弟ということになります」

 なんと!

 確かに「日本の子」の父親は精子を提供しているだけだから複数の子の父親になり得るけど、実際に自分に兄弟がいると言われてもピンと来ないな。
 見た感じ、全然違う人間に見えるし。

「そして、皆さんの父親は徳永秀康という人物です」
 えー!
 徳永秀康って、あの常温核融合やAIコ

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【小説】日本の仔:第27話

【小説】日本の仔:第27話

【藤堂 瑞希】(環境省 地球環境局)
 環境省なんて初めて来たなぁ。
 AICGlassesがあれば、わざわざ集まらなくても集まって話すのと何ら変わらないことができるのに、なんで出張させられたんだろう。
 そもそも出張なんて初めてだ。

 自動運転のタクシーを家まで呼び出し、直接環境省の入っている庁舎まで来た。
 料金は会社に直接請求されるけど、数十円しか掛からないから、自分で払っても痛くも痒くも

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【小説】日本の仔:第26話

【小説】日本の仔:第26話

【坂本 茉莉】(徳永テンスチルドレン)
『真の修行とは 如何なる状況であっても 生きている 生かされている奇跡に感謝して 全力で取り組むこと』
「何ていい言葉なんでしょう。この言葉がある限り、毎日の苦行も大したことないと思えるわ。全ては修行の一環、魂を鍛え上げるのです」

 いつものお母さんの朝のお話が始まった...
 ここは、東京都檜原村にある、とあるお寺。
 私はこのお寺の一人娘として生まれた

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【小説】日本の仔:第25話

【小説】日本の仔:第25話

【楢原 武蔵】(徳永トウェンティスチルドレン)
「相手は11歳の子どもだぞ!何とかならんのか!」

 ここは陸上自衛隊朝霞駐屯地内に作られた、インドアの訓練施設。
 主にCQB(近接戦闘)の訓練に使用される。

「既に12名が倒されました。残り6名」
 3階建てのショッピングモールを模して作られた訓練施設内でSATの対テロ模擬戦闘訓練が行われていた。
 通常の訓練と異なるのは、テロの犯人役が11歳

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【小説】日本の仔:第24話

【小説】日本の仔:第24話

【品川 果歩】(徳永セカンドチルドレン)
「好きです。できれば俺と...」
「ごめんなさい!」

 告白された瞬間に断るのは、もう何度目だろう。
 私は自分の直観を心底信じている。というか、目を見ればその人が何を考えているのか何となく解るよね。
 はっきりと解る訳じゃないけど、いいイメージなのか悪いイメージなのか、実は怒っているのか、悲しんでいるのか、顔は笑っていても、心は泣いている人をごまんと見

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【小説】日本の仔:第23話

【小説】日本の仔:第23話

 ある日、僕は仕事終わりにその上司に誘われて飲みに行った。
 専門学校を卒業してすぐに就職した僕は少し前に20歳になったばかりで、お酒もあまり飲んだことがなかった。

 その上司は仕事の面では部下のことをよく気に掛け、しっかりとコミュニケーションを取れる人だった。
 とは言え、実際にはAIコンシェルジュが間に入ったコミュニケーションだから、本当の気持ちなんか分からず、模範的な対応が行われていたに過

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【小説】日本の仔:第22話

【小説】日本の仔:第22話

【藤堂 瑞希】(徳永フォースチルドレン)
 僕は今までに3人、人を殺してしまったことがある。

 1人目は小学生の時の先生、2人目は高校生の時の同級生、そして3人目は就職した会社の上司だった。
 でも、警察に捕まるようなことはなかった。
 なぜなら、何も証拠が見つからなかったから。
 自分でも殺そうと思ったわけではなく、ただ反射的に「死ね」と強く思っただけなのだ。

 最初はもちろん偶然だと思った

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【小説】日本の仔:intermission(第21話)

【小説】日本の仔:intermission(第21話)

【清水坂 孝】(環境省 地球温暖化対策室 室長)
 宇宙エレベータの建設が終わった頃、徳永は常温核融合炉の日本国外での生産、利用を解禁した。
 融合炉の設計図や特許も全て海外のデベロッパーに公開し、自由に使えるようにしたのだ。

 ただし、常温核融合炉の中核を成す原子核融合部分と発電部分は、徳永が開発した装置でしか製造できなかったため、日本国内で製造され海外へ輸出された。
 この部品の価格を吊り上

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【小説】日本の仔:第20話

【小説】日本の仔:第20話

 結局、二人とも政府へ精子を提供することになったが、徳永の精液の採取にはかなり手間が掛かったらしい。それもそのはず、実は徳永はマスターベーションをしたことがないというのだ。二十歳にもなって、そういうことに興味がなかったとは変人にも程があると思ったものの、実際に今そういう子どもが増えているらしい。これでは既婚率が下がる訳だ…

 全国から集められた優秀な遺伝子を持つとされる精子は冷凍保存され、「日本

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【小説】日本の仔:第19話

【小説】日本の仔:第19話

【清水坂 孝】(量子科学技術研究開発機構)
 その後、種子島への中国軍の核兵器を含む攻撃について、日本国政府は国連内に特別調停委員会を設立して解決するよう要請したが、中国を含む全ての常任理事国が調停委員会の設立を認めなかった。
 第二次世界大戦後初の他国への核攻撃という地球全体に関わる問題が発生したにも関わらず、核爆発が起きた事実はなく、中国も核兵器による攻撃を否定した。
 残念ながら、種子島宇宙

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【小説】日本の仔:第18話

【小説】日本の仔:第18話

【三ケ島 成人】(宇宙エレベータ軌道打ち上げ責任者)
 ついに宇宙エレベータ軌道ケーブルを静止軌道に乗せる最終フェーズまでたどり着いた。
「展開機のブースターを点火。22秒で燃焼終了…静止軌道速度確認。無事に静止軌道に乗りました。成功です!」
 管制室中で拍手が沸き起こる。
 よかった。無事に到達できて本当によかった。これで安心して家に帰れる。

 と思ったら大間違い。実際にはこれからが本当の試練

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【小説】日本の仔:第17話

【小説】日本の仔:第17話

 ロケットはそのまま雲を突き抜けて蒼空へと上がって行った。

「固体燃料ブースター燃焼終了、切り離し正常に終了。一号機と四号機の衛星フェアリングの分離を確認。第一段主エンジン、6基同時に点火を確認。間もなく高度100kmに達します」
 管制室の大きなモニターに2×6の12機の固体燃料ブースターが切り離され地球に向かって落ちていく映像が映る。
 よし、山は越えた。
 そのまま高度200kmの静止トラ

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