とーます模話

自分の人生はすべてがわざとらしく作り上げたものだった。60歳を過ぎて、いまさら本当の自…

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自分の人生はすべてがわざとらしく作り上げたものだった。60歳を過ぎて、いまさら本当の自分をなんとか取り戻そうとしている。なんてひどい人生を送ってきたものだろうか。60年の嘘の人生を取り出して、いま確かめる作業に入った。無駄にしないためには、取り出して書く以外、方法はない。

マガジン

  • とーます模話少年小説

    少年期の思い出をもとに、書きました。

  • とーます模話 小説作品集

    自分の中の煙を吐き出し、取り出してみてみる。そして、それがどんなものであるかを確かめたい。いつの日か、何もかもありのままで自分を受け入れる時がくると信じたい。

  • 【少年・青年小説 食シリーズ】

    思春期、青年期の食への飽くなき探求の日々…なんちゃって

  • 還暦ロックにしゅうかつロックシリーズ

    還暦だってロック。しゅうかつだろうがロック。失われていくロック世代のだんまつま。なこたないさ。ボクにも言わせて、死ぬ前にみんなで語らいましょう。六十代だってうぇいすとらんどさ~。

  • ボクにも言わせて…「スポーツを語ろう」

    〇〇前に記憶にあるスポーツのすばらしさを語ろう

最近の記事

【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた④~ロックビデオを見に行こう後編~」

店を出たユキオはアートシアター新宿を探した。 靖国通りは初めてだった。 途中に楽器店もあり、たのしくなってきた。 しかし、アートシアター新宿が見つからなかった。 放映時間にはまだ一時間近くあったので焦りはないが、何しろ新宿の駅前以外は初めてきた場所だったので早いとこ見つけておきたかった。 番地を控えてきたので住所の表示を見ながら行くと思ったより早く見つけられた。 しかし…こんな小さな劇場だったとは。 アングラの聖地という感じはしなかった。 入り口に待ってる客のよ

    • 【少年・青年小説 食シリーズ】「東京に食べるためにやってきた②~常連客、行きつけの定食屋に憧れていた頃の話:餃子の王将編1~」

      4月に上京したユキオは、少しずつ整っていく部屋に興奮していた。 予備校生ということもあり、最低限の家具しかそろえていない。両親からお金をもらって、オーブントースターや冷蔵庫にカラーボックスなどを買った。 しかし、それでも何もないところから自分で物を買ってそろえることに興奮していた。 茶碗や汁椀などの小さいものは買わず、皿や丼だけを最低限だけ買う。 下着やタオルなどは実家の物を送ってもらったが、 基本的には自分で買った。 思ってもいなかった必需品があり、お金がかかること

      • シリーズ・ボクにも言わせて…「動画を語ろう1」〈こざこざ編①〉~「2003年のワールドシリーズの動画みたらさ、やっぱりかっこいいわけよ。ペドロマルチネスからホームランって…じんときた。しかもワールドシリーズMVPなのにトレード」~

        模話1「久々の対談だな」 模話2「今回のテーマは何さ?」 模話1「忙しかったんだけど、予定がかわったせいで、一日だけ動画見たりした日があってさ、それでみたいやつをいくつか見たんでその話をしようかと」 模話2「テーマはこざこざね」 模話1「うん。最初はスポーツね。まずさ、大谷が松井のメジャーリーグ日本人本塁打記録抜いたじゃん?」〈氏名は原則敬称略で失礼します〉 模話2「すごい話だよね。松井もよく打ったもんだよね」 模話1「2003年のワールドシリーズの動画みたらさ、やっぱりかっ

        • 【少年小説】「ぼうくうごうから」⑧~最終回~

          東京から実家に帰ってからしばらくして、ゆきおには〈おまえは死ね〉という声が聞こえるようになっていた。 はっきり聞こえるわけではない。ただそう言われているという自覚が続いた。 それは夕方くらいから強くなり、心拍数が上がり、視界がくらく狭くなる感じがした。 近頃よく聴いている音楽があったが、うとうとしながら聴いていると、うなされることが多かった。 いったいどういうことかわからなかったが、この音楽に、何か原因があるのかもしれないと思い始めていた。 ある夜、髪飾りをした痩せた

        【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた④~ロックビデオを見に行こう後編~」

        • 【少年・青年小説 食シリーズ】「東京に食べるためにやってきた②~常連客、行きつけの定食屋に憧れていた頃の話:餃子の王将編1~」

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        • とーます模話少年小説
          31本
        • とーます模話 小説作品集
          16本
        • 【少年・青年小説 食シリーズ】
          2本
        • 還暦ロックにしゅうかつロックシリーズ
          78本
        • ボクにも言わせて…「スポーツを語ろう」
          8本
        • しゅうかつ新シリーズ~「日本の食文化の裏表を語ろう対談」
          3本

        記事

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた③~ロックビデオを見に行こう前編~」

          ユキオは東京の5月をたいへん気に入っていた。 都会の割に緑地は多いし、公園はきれいだった。 隣室のi君とその友人に、四谷の公共施設でやるロックフィルムコンサートに誘われた。予備校の勉強もそこそこに、土曜日に四谷に一緒に見に行った。 当時、東京ではロックの映画だとか、フィルムコンサートのたぐいはそれなりに気軽に行われていたようだ。 無料だったかそれに近い廉価なイベントだったと思う。 細かいことは覚えていない。 内容はヘビメタからポップス、ニューウェーブ、パンクと、 誰

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた③~ロックビデオを見に行こう前編~」

          【少年・青年小説 食シリーズ】「東京に食べるためにやってきた①~鍋で食べるマルちゃんのタヌキうどんの話~」

          ユキオは今日、上京した。 四畳半、キッチン付き、共同トイレ、共同玄関の2階だ。 窓は、南側で明るかった。 家具は自分で東京で買うことにして、親からお金だけもらっていた。 とはいえ、なべや日用品などは段ボールであらかじめ送ってもらっていた。 大家さんにあいさつしたあと、部屋に入った。 夕方近くだったことに気づいたとき…電灯を買ってなかったことにやっと気づいた。 あらかじめ、部屋には100ワット電球がついていたので、真っ暗な夜になることはなかったが、夜に近づくにつれて暗く

          【少年・青年小説 食シリーズ】「東京に食べるためにやってきた①~鍋で食べるマルちゃんのタヌキうどんの話~」

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた」②~隣室のヘビメタギタリストi君とのおもいで~

          ユキオの隣室にはi君というギターのうまい大学生が住んでいた。 i君は東北の地方都市出身。 得意なのはライトハンド奏法だった。 元々が坊ちゃん育ちなのか、木造共同アパートにもかかわらず、 かなり大きなアンプでヘッドフォンもせず、大音量で白い国産メーカーのSGを弾いていた。 ユキオもエレキギターを持っていたが、彼の腕前を見て、 リードギターは自分には無理だろうという諦めが強くなった。 高校2年までユキオが毎日のように中毒していた音楽ジャンルを得意にしていたi君は、かつて自

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた」②~隣室のヘビメタギタリストi君とのおもいで~

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた」①

          東京の5月は最高だった。 予備校生のユキオは勉強も適当に、自転車で自分の中野区のアパートの周辺を走り回ったりして過ごしていた。 東京という街は、いわゆる大都市の中心地以外は「例えば浜松が何個かくっついたようなもの」というだけで、慣れてしまえばなんてことはなかった。 大学生の友人が、時々遊びにきた。 荻窪から自転車で来たと聞いてはじめは驚いたが、 翌週に荻窪に自転車で行ってみると、いなかで二つ向こうの市まで自転車で試合に行くより分かりやすくてたやすく行けることに気づいた。

          【ロック少年・青年小説集】「東京にやってきた」①

          【ロック少年・青年小説集】「リフラフセラピー」①

          実家が手広く肉屋を展開していたハルオキの勉強部屋に、 ユキオは駅前のレコードレンタルで借りたばかりのアルバムを持って上がり込んだ。 ハルオキの勉強部屋は6畳以上はある離れの個室であった。 小さな庭もあって、ブロック塀もある。 柴犬なのか雑種なのか、犬を飼っていて…犬小屋もちゃんとついていた。 借家で狭い自宅にすぐ帰るのがいやで、週に一、二度ハルオキがいるときにお邪魔していた。 高校三年になって、部活動も引退して、練習で3時間以上の部活の拘束時間が自由時間となったわけだ。

          【ロック少年・青年小説集】「リフラフセラピー」①

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑦

          〈ぼうくうごうへ行こう〉そう思って茶畑に向かって歩き始めた。 どうしても、そこに行かなければならない…そう感じていた。 理由はわからなかったが…。 自堕落な生活ですっかり太ってしまい、なまっていた体が重かった。 〈チャバラって呼んでたんだよな、茶畑のことは〉 茶畑のことは茶原と呼んでいたことをそのとき思い出した。 〈チャバラへ行こう〉 歩いているうちに、ずっと歩いていなかったチャバラへの道を少しずつ思い出してきた。 足が足の裏が記憶していて、滑らない歩き方を思い出

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑦

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑥

          ゆきおは26歳になっていた。 わけあって実家にいた。 しばらく死んだ祖父のいた屋根裏部屋を借りて寝ていた。 そこで数ヵ月音楽と本に囲まれて自堕落に寝て過ごした。 それは…家族の崩壊の始まりでもあった。 ゆきおは時々思い付いたようにカウンセリングを受けに精神科のある市街地の病院に通った。 父親も母親も兄も祖母も、ゆきおが精神を病むという事実を正面から受け止めることはなかった。 受け流して何もないことになっていたと言ってよい。 その後に父親が死ぬまでにも、ゆきおの苦し

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑥

          しゅうかつ新シリーズ~「日本の食文化の裏表を語ろう対談」3〈【食品添加物③】~「小麦は小麦だし、アメリカの有機栽培のスペルト小麦をアマゾンで買ってパンを作って食べてます…特にいまのは全粒粉だからね。ただ栄養価高くお通じはすごく効果あり」「節制何年でどうなったわけ?」「5年くらい前から十数キロ体重が落ちて、コロステロールだとかは全部正常。体重が大学時代に戻ったよ」~〉

          模話1「日本の食の裏表を語ろう」 模話2「そもそも、もわくんが食品添加物に注目したのはいつ?」 模話1「かつて正社員時代に、健診をうけてたじゃん?」 模話2「毎年やるやつね」 模話1「それで、コロステロールだとか必ずひっかかるわけ」 模話2「日本の数値は厳しめだしね」 模話1「めんどくさいから、減量して食生活を変えることにしたわけよ」 模話2「おおざっぱにいうと?」 模話1「肉を少なくして、魚に大豆に野菜を多くして小麦を減らす作戦」 模話2「小麦はなんで?」 模話1「グルテン

          しゅうかつ新シリーズ~「日本の食文化の裏表を語ろう対談」3〈【食品添加物③】~「小麦は小麦だし、アメリカの有機栽培のスペルト小麦をアマゾンで買ってパンを作って食べてます…特にいまのは全粒粉だからね。ただ栄養価高くお通じはすごく効果あり」「節制何年でどうなったわけ?」「5年くらい前から十数キロ体重が落ちて、コロステロールだとかは全部正常。体重が大学時代に戻ったよ」~〉

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑤

          「おんぶしてくりょ」 父親は微笑んでゆきおを背負ってくれた。 「めえるか?」 そのとき、海面のきらめきがはっきりとわかった。 大きく見えてるわけではなかったが、海だということがわかった。 ゆきおは興奮した。 父親の背から下りたあともしばらく海のほうを見ていた。 「もっとはっきりみえんかな?」 「おまえがもう少し大きくなったら、山登りにつれてくで…そのときはいまよりはよく見えるだで、たのしみにしてりゃあええわ」 父親はそういうと、崩れかかってるぼうくうごうへおりてい

          【少年小説】「ぼうくうごうから」⑤

          【少年小説】「ぼうくうごうから」④

          険しい斜面を上ってしばらくすると山道に出た。 父親はそこを右に曲がってなだらかな上り坂をゆっくりと歩いていく。 途中、山ツツジを見つけると、父親はゆきおのためにひとつとって「吸ってごらん、甘いで」と差し出した。 ゆきおはラッパを吹くような格好をして、すっと吸い込んでみた。近所のツツジに比べて味が濃くて美味しかった。 「うまいか?」 父親は素早く3つくらいを立て続けに吸っていた。 ゆきおも自分からもうひとつもいで吸おうとしたが、気づいたらべとべとした樹液のようなものが

          【少年小説】「ぼうくうごうから」④

          しゅうかつ新シリーズ~「日本の食文化の裏表を語ろう対談」2〈【食品添加物②】~「化学調味料をやめてみると…とりすぎると舌がしびれたり、気持ち悪くなったりすることがわかるからね」「それでもインスタント食品世代だからソース焼きそばとか食べたくなるよな(笑)」「それもペヤン○とかストロングなやつね(笑)」~〉

          模話1「日本の食文化を語ろう」 模話2「バックパッカーの人たちには日本のコンビニの食べ物は評判がいいね」 模話1「モモカジャパン関連記事でさ、ベルギーからきた人がさ、日本のジャンクフードが美味しいと驚いていたのさ。日本はもっと健康的な食文化だと思ってたらしい」 模話2「添加物の話を他でしたから、いまさらだけど、コンビニは惣菜や弁当にはリン酸塩はほぼ全部に入ってるし、表示みるだけでもうんざりして買う気は失せるけどね」 模話1「それを見てもなんにも感じないってくらい消費者

          しゅうかつ新シリーズ~「日本の食文化の裏表を語ろう対談」2〈【食品添加物②】~「化学調味料をやめてみると…とりすぎると舌がしびれたり、気持ち悪くなったりすることがわかるからね」「それでもインスタント食品世代だからソース焼きそばとか食べたくなるよな(笑)」「それもペヤン○とかストロングなやつね(笑)」~〉

          【少年小説】「ぼうくうごうから」③

          家の向かいに住む人が二人、兄の友達が一人、祖母の知り合いが一人来ていた。 それにゆきおと兄に父母に祖父母の6人。 父母とゆきお兄弟に兄の友達を除いて食事が始まっていた。 むしろにはまだ余裕があったが、さすがに10人は狭苦しかった。 祖父は小屋の外に椅子を出してそこで弁当を食べだした。 陽気でお節介なおばさんたちがゆきおたちを誘い入れてくれた。 おかげで、兄の友達も一緒に小屋の中で座ることができた。 母親から弁当箱が渡された。 小さなタッパウェアにゆきおのための弁当

          【少年小説】「ぼうくうごうから」③